1年で上場廃止の理由!マイファーム西辻一真の次なる挑戦
2023年11月に農業ソーシャルベンチャーとして日本初の東証上場を果たし、2024年12月に上場廃止したマイファーム。わずか1年足らずで上場を廃止した理由と今後の成長戦略について、代表の西辻一真に社員がインタビューしました。
上場時のプレスリリース
上場時の様子
1年で上場廃止を決断した理由
――今回の上場廃止を決断した理由を教えてください。

マイファーム代表取締役 西辻一真(以下、西辻):
上場廃止を決断した本質的な理由は、株式市場において「農業」の評価が著しく低く、評価されることが少なかったことがあります。むしろ、農業事業をやっていることがリスクだと言われることが多かったんです。
上場するまでは「農業って大事な産業だよね」とか「応援するよ!」という短期ではなく、中長期でみて言葉をかけていただくことが多かったのが、上場して一般市場に出て投資家と向き合うと、やはり短期的なリターンが求められ、「そのリスクに対する対策はどうしているのですか?」とか「もしこういう被害が起きたらどうしますか?」 という論点が多くなりました。
「リスクはできるだけ少なく、利益はできるだけ大きく」という市場や投資家の当たり前の論理の中では、農業事業をやっているということがなかなか理解されにくいな、と思ったのが本質的なところです。
――そうなると、上場を廃止する方が今はメリットが大きいというお考えでしょうか?
西辻:
ペースレイヤリング(Pace Layering)っていうモデルがあるんですが、農業は自然資本を活かす産業なので一番ゆっくりな速度で変化します。加えて、私たちが目指したい社会は文化的な部分も大きい。
そうなると、上場していても中長期的な視点で物事を考える必要があるんです。

上場しているときには「リスクヘッジ」や「短期的利益の追求」をするよう言われていましたが、上場を廃止して非上場企業にしたことによって、従来のような、農業に合った中長期的な視野に基づいた利益計画を作ることができるようになりました。リスクヘッジに割いていた人員やリソースを、また中に割けるようになった。これが大きなメリットですね。
上場で得られた「安心感」の良し悪し
――上場して良かった点も悪かった点もあると思うのですが、実際いかがでしたか?
西辻:
上場して良かった点としては、当社のサービスを利用する方、たとえば体験農園利用者さんや農業学校の生徒さんたちからは「上場企業だから安心して申し込みができる」と言われました。金融機関からも資金調達に関する与信が良くなったと言われました。
やはりそうした会社やサービスへの「安心感」という部分は、上場して得られた良かった点です。
一方で、あまり外からは見えない悪かった点の1つが、採用の部分。
上場する前までは証券会社から「人材採用が非常に有利になりますよ」と言われていたので、これから人材採用が有利になるんだろうな、たくさん応募が来るんだろうな、と思っていたのですが、上場した後は非常に保守的な人からの応募が増えました。
「上場している企業だから応募しました」とか、「上場していることで安心感があり応募しました」というようなケースが増えて、マイファームのベンチャー経営的な資質に合わない人たちが多くなってしまった。今でも採用面接では、必ず僕が一人一人と面接しているので、ちょっと時間の無駄になっちゃってるなと。こればかりは難しかったですね。
「ワクワク感」が消えた…上場で失った“マイファームらしさ”
――他に、実際に上場してみて難しいなと思ったことはありますか?
西辻:
これは事前にわかってたことだし、社会的には必要なことだとわかってて話すんですが。上場すると常に情報の開示が求められて、その情報の開示するタイミングをみんな同じにしないといけないんです。社内の人も一般の投資家も同じ。
そうすると、社内のメンバーはある日突然会社の決定を知る、みたいなことになってしまう。これが僕個人としては一番苦しいものでした。
上場する前は、「社内メンバーには少しだけ先に伝えておくよ」とか「サプライズで取っておこうよ」みたいなことができたけど、そういったことが全くできなくなって、ワクワク感が減ってしまった。
みんなで一緒に何かを作ってするワクワクする、みたいな感覚が減ったな…と。そこが僕の本音としてはあります。
もしかしたら、上手いやりようもあったかも知れないんですが、1年目ではそれも分からないし、僕自身の大切にしたいものとのギャップが出て苦しかったです。
――「ワクワク感」はマイファームにとっては大事な部分ですよね。
西辻:
僕のポリシーは「早く行きたいなら一人で行きなさい、遠くへ行きたいならみんなで行きなさい」。遠くへ行きたいからみんなで行く、そういう姿勢をすごく大事にしています。
でも、上場していると株主の意向をずっと聞きながら経営する形になり、「遠くに行きたいなら株主の意向を聞け」になってしまうんです。これは僕のポリシーとはちょっと違うなと思っていて。
もちろん一般社会の通年上は、株主の意向を聞くというのは正しいと思います。上場している企業はみんなそうしていると思う。でも、僕の経営スタイルとはちょっと合っていない。
それにおそらくマイファームで働くメンバーは「遠くへみんなで行こう!」と思っているから、ベンチャー感覚でずっと新しいものに挑戦し続けるのが一番いい。
例えば、マレーシアのドリアン事業とか、過去に独自の仮想通貨も手掛けたことあるけど、そういったベンチャーらしさのある新しい挑戦が上場していると絶対できなくなっちゃうんですよ。実際に、上場してからは「他社が取り組んでいることをやろう」とか「他社との競合比較の中で優位性を持たせよう」という方向になりがちでした。
上場したことによって、僕の経営ポリシーがずれて、ワクワク感がなくなってしまったことによって、おそらく社内のみんなはちょっと窮屈に感じていたと思います。マイファームにワクワク感が減ってきたな、と思っている人もいたと思いますし、それを僕も感じられたから、すごく辛かった。そんな感じです。

次の一手は「地球・研究開発・教育」—未来を拓く3つのキーワード
――上場廃止して、今後成長戦略として重要視するポイントはどこでしょうか?
西辻:
今後の重点分野としてはいくつかあるんだけど、3つくらいにしておこうかなと思います。
1つ目のキーワードは「地球」。
これはメンバーのみんなも、僕も信じていることだけど、マイファームの活動が広がっていくことは、地球にとっていいことだと思っています。だからもっとこの活動を促進する必要があるんだけど、その地球っていう考え方をするのであれば、グローバルに出ていく必要がある。
つまり、マイファームの活動が日本だけじゃなくて世界各地で行われるような戦略を取る必要があるので、「地球を大事にしよう」というキーワードを置いています。
その「地球を大事にしよう」から枝分かれしたところとしては、「環境を維持しよう」や「ネガティブなことをやめていこう」があります。
例えば「環境を維持しよう」だと、体験農園にビオトープを作って生物多様性を守るような取り組みがあるし、「ネガティブなことをやめていこう」だと、例えば農業学校の実習農場では、草刈りを自分たちでするんじゃなくて太陽光発電して自動ロボットにやってもらえたらいいんじゃないかと僕は思っているんです。
そういうふうに、「地球」とそこに紐づく「環境」というキーワードは大事にしたいというのが1つ目です。

――1つ目が「地球」ですね。2つ目は何でしょうか?
西辻:
2つ目の重点分野は、「研究開発」です。今後も農業というものが僕たち人類にとって必要不可欠なものであるということは間違いないので、食料バランスが崩れないようするとか、生産性を上げるとか、そういった農業における研究開発をすべきだと思っています。
だから本当はマイファームで種の研究開発だとか、農業機械の研究開発とかっていうのをやりたい。面白そうですよね。

――興味ある社内メンバーも多いと思います。最後3つ目の重点分野は何でしょうか?
西辻:
3つ目は、「学校」の機能だと思っています。僕はずっと、体験農園事業と農業学校事業は一体化すべきだと思っていて。体験農園は野菜づくりを楽しむ場だって世の中では思われてるだけど、楽しむ中には「学び」が絶対あるはずなんですよ。
だから、例えば、楽しむことを軸に置いたマイファームの体験農園モデルをやめてしまう。その代わり、農業学校のライト版を今の体験農園事業の中でやって、中級版が今のアグリノベーション大学校で、本格版が札幌静修高校のような学校法人として、「学びのグラデーション」を強化するみたいな。
これ、絶対上場中だったら怒られて猛反対にあうアイデアなんですけどね。
というのも、僕は農業には教育的観点が抜けていると思っています。
抜けているのはなぜかというと、これまでの農業の歴史を見ると、過酷な食料生産労働を強いられる人々と、一部の権力を持つ者たちみたいな、そんなところが農業の最初からスタートしていて。
今でも日本の農業には、農協さんが個人農家さんを取りまとめて、 国の意向に従って農産物を作ってもらってそれを買う、という仕組みがあります。農協さんと上手にお付き合いした経営戦略を立てていたり、活用している農家さんがいいんです。
でも、その仕組みの中では、教育的観点ではなく、労働者という観点になってしまうケースもあります。なぜ教育をしないのかというと、労働者でいてほしいから、という歴史的背景もあるわけです。
でも、もうそういう時代じゃないと思うんですよ。だから、労働者階級みたいな農家の存在をなくしてしまって、もっと教育レベルを上げて、農家”みんな”が自分の足で歩けるようになるべきだと思っています。やれる人は法人化してやっていいと思う。そういう形で、農業に教育っていう観点をもっと入れるべきだと思っています。
社会構造を変えるのも大切ですが、それ以上に個々人のパワーアップをしていくことが重要です。
また、生活者側にも農業の教育的観点は必要です。もっと農業や自分たちが食べているものへの理解度を上げていくと、最近のニュースやSNSで話題になるような農業・食を取り巻く問題が建設的に議論されると思います。別に農家にならなくてもいいから、実体験を伴う教育的な視点での農業経験をしてもらいたいなと。

「農業ベンチャーの未来を止めない」—もう一度上場を目指す理由
――この1年の経験を経て、今後はもう上場はしないですか?それとも…?
西辻:
答えから言っちゃいますね。上場、もう一度目指します。
ただ、次に上場するにあたっては、僕の中では「収益事業と非収益事業を分けよう」と思っていて。収益事業というのは、利益が出やすい事業。非収益事業というのは、利益は出にくいけど社会的意義があり会社としても大切にしている事業。会社の事業をそれら収益事業と非収益事業に分けて展開をして、再上場しようと思っています。
――また上場を目指す理由を教えてください。
西辻:
今回の上場でマイファームが直面した壁は、農業界全体としての課題だと考えています。だから僕たちがこの壁を乗り越えて実績を示さないと、後に続く農業ベンチャーが現れにくくなってしまう。
実際に、今上場を目指しているほかの農業ベンチャーは、間違いなく僕たちの財務状況を見て「めちゃめちゃ貸倒引当金が計上されてるな」とネガティブな印象を持ってしまうと思う。だから、そう思わせないように、僕たちがしっかりと結果を出さなければならない、という社会的使命を感じています。
また、今後世界に出てグローバル展開をする上では上場が必要、というのも理由としてあります。上場することで会社の信頼性が上がって、海外企業との取引もしやすくなるし、グローバル展開に必要な資金調達がしやすくなるというメリットがあるので。
「上場の呪縛から解き放て!」—ワクワク感のある強い組織へ
――また上場を目指すにあたり、社内のメンバーに伝えたいことはありますか?
西辻:
上場するにあたっては、社内のワクワク感を損なわないような仕組みを作るのが、経営者としての僕の大事な役割だと思っています。
今いるメンバーの中には、逆に上場慣れしてる人もいると思うので、そういう人たちにはワクワク感を持ってもっと自由にやってほしいなっていうふうに思う。社内のメンバーにはワクワクする気持ちや主体的に考えることを諦めないでほしい、というメッセージを伝えたいですね。
ワクワク感をなくしている人とか、自分の仕事が会社にどう貢献してるかを意識しないまま働いてる人もいるかもしれないから、そういう人がいたら、ちょっと立ち止まって考えてみてほしい、って思います。今の社会ってワクワクが少ない気がするので、マイファームからワクワクを伝えていってほしいですね。

難しいことにチャレンジするには原動力になる仲間が必要
――最後に、ステークホルダーへのメッセージを聞かせていただけますか?
西辻:
冒頭の話にも関わるのですが、上場してから、農業って利益が出ないとか、難しいとか、そういう声がすごく増えました。一方で、たくさんの「農業は大事だ」っていう声もいただいたんです。
ステークホルダーの皆様に伝えたいのは、 僕たちは本当に難しいことにチャレンジしてるんです、ということです。
短期的には評価されないけど、応援をする人がたくさんいる。NPOみたいだなと思います。子ども食堂と同じで、もっと広がってほしいとは思っていて応援はするけれども、お金を出す人はなかなかいない。
これこそが社会的企業、ソーシャルベンチャーの宿命ですが、困難に立ち向かって、誰もやらない社会課題に取り組んでいる会社なんです。応援の声は本当に嬉しいけど、応援されるだけだとプレッシャーも感じるし、 時には孤独を感じることもあります。

だから、このマイファームという船を一緒に動かす原動力になっていただきたいと思っています。
メディアの方には、このような現状を取り上げて発信していただききたいし、株主になってくださる方には、ぜひ投資で応援していただきたい。一緒に事業をやってくれる人は、仲間に加わって欲しい。そうしたたくさんの協力が、僕たちの活動には非常に大事です。
僕個人の気持ちも入っていますが、そういうふうに思っています。
――ありがとうございました。
農業の未来を一緒に作りたいあなたへ
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株式会社マイファームは、「自産自消」=「自分でつくって自分で食べる」ことができる社会の実現を目指し、体験農園や農業学校の運営、農産物の生産・流通販売、自治体・法人向けのコンサルティングなど、農に関わる多面的な事業を展開しています。マイファームに興味のある方はぜひお問い合わせください。
※新聞、テレビ、WEBメディア等のインタビュー取材も受付も行っているので、下記のリンクからお気軽にお問い合わせください!
(2025年12月追記)
第19期の最新業績情報
当社の最新業績(第19期)についてお知らせいたします。
■ 業績概要
・売上高:32億2,323万円
・純利益:4,445万6,000円
・総資産:21億0,008万7,000円
※第19期(2024年 9月 1日~2025年 8月31日)
https://myfarm.co.jp/news/19th-financial-results-2025/
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