遠征記録:福島県浜通り①~いわき市~
今回から調査旅行に出た時は別項で残すことにしました。
調査の大要
今回の遠征の目的は福島県浜通りのヤチ地名とサク地名。
電車で旅行先から帰宅する際帰路で実家に立ち寄れる場所、ということで候補になった。
問題は旅行当日にちょうど台風が直撃したこと。
2026/08/11 勿来~泉
荒谷、谷地、後谷、北作、四沢谷地、天ケ作、根小屋、作田、石井作、住生作、後谷、酒井作、北作、大久保、湯ノ作、根小屋、成作、田ノ作、大谷、新谷、東作、細谷、川窪、根小屋、堂ノ作、細谷、柳作、金谷、兼谷沢、堰作、大平作、二ノ作、宮ノ作、西ノ作、東ノ作、小野作、西細野地(にしほそやじ)、東細野地(ひがしほそやじ)、中野地(なかやじ)、長鹿作、寺ノ入、榎作、深ノ入、宮ノ作、程ノ作、仏ノ作、西ノ作、田ノ作、下田ノ作
本日の予定、1日目
朝9時に勿来駅に到着。
到着時点で既に雨。
その後降ったり止んだりを繰り返しながら午前中は晴れ間も見える程度に回復。
ただ雲の動きを確認すると午後から雨も風も激しくなると出ており、好天のうちになるべく回っておくべく足早に調査する。
調査の概要①~福島のサク地名、その特徴~
さて今回の目的地であるサク地名だが、これが福島県には大量にある。
それもほぼ浜通り、つまり太平洋沿岸部に集中している。
『サク』に用いられる文字については何種類か確認されているが、いわき市の場合ほとんどが『作』である。
地形を見る限りそのほぼほぼすべてが谷戸型。
つまり耕作地・開拓地としての音読みのサクではなく、古語としての、訓読みのサクである。
ただその構造については関東のものとは些か趣を異にしている。

大きな開析谷

だいぶ小ぶり
御覧の通り、福島のサク地名はやや小ぶりである。
航空写真などで確認すれば画像の奥の木々の向こうまで開析谷が伸びていることがわかるのだが、それを加味してもやや小さい。
関東のサクはほぼヤト(ヤツ)と同義であり、宅地化した場合結構な規模の街谷戸になるものが多いが、福島のサクの場合集落化してもそこに入る家屋はだいたい家が1~3軒程度がせいぜい、という事が多いのだ。
大きめの旧家などの場合家1軒でサクを1つまるまる占拠している事も珍しくない。
福島のサクの特徴として押さえておきたい特徴である。
このあたりはいずれ別項でまとめる予定。
調査の概要②~野地(やじ)地名~

初日で気になった地名としてはこちらの野地(やじ)地名がある。
そのすべてが宅地化されており原風景は確認できなかったが、大きな地形特性は見受けられず、いずれも川そばの低地に見えた。いわゆる谷地型である。
とすると野地≒谷地の同音異字の可能性があるのではないか。
調査の終わり、1日目
昼食を取るとその間に雨が降り始めて調査時間が減る懸念があったため調査を優先し昼食を放り捨てることに。
一応携行食なども常備していたが絶対真似しないように。
その後夕刻になると風が一気に強くなってきた。
特に遮蔽物のない陸橋の上や峠越えの最中に突風が吹くと自転車を停止させその上にしがみついて風が通り過ぎるのを待たないと身動きすらできない状況。
時刻も夕暮れが近く、このまま調査予定の山間部に突入するのは危険と判断し今日の予定を大幅断念、その後12カ所ほど平野部の調査を終えてホテルに引きこもった。
なんでこんな日に1日自転車で走り回ってるのだろうか?
何故だろう。
走行距離:122km
2026/08/12 泉~いわき
宮ノ作、小部屋作、永井作、大小作、梅ノ木作、宮ノ作、安部作、小物作、稲葉作、牛作、東作、永田作、柳作、寺作入、居作、作、八ツ替(やつがえ)、泉谷(大字)、寺作、寺作、入ノ作、大久保、山王作、越田作、湯長谷(大字)、仮又作、矢津、屋津、厚木作、水野谷(大字)、傾城作、杭出作、柿作、殿作、滝作、柳作、寺作、勝負作、蓬作、宮ノ作、細作、後作、鍋作、戸ノ作、滝ノ作、中後ノ作、平八作、磐ノ作、草ケ谷、道上作、太良作、荒神作、寺ノ作、堂ノ作、上ノ作、西作、吉野谷、磐ノ作、藁谷(わらがい)、穂町作、訳作、宮ノ作、林作、吉野作、砂屋戸、堂ノ入、西作、根木作、平谷川瀬(大字)、滝ノ作、金谷、筬ケ作(おさがさく)、槐作、沢小谷
本日の予定、2日目
現地で調査開始できる利点は早朝から出立できることである。
ということで6時台に旅館を出て調査再開。
本日も朝から雨が降ったり止んだりと続いたので雨合羽を着脱しながら予定地を廻る。
山間部の最奥にあるような地名は悪天候のため事前に調査断念とした。
調査の概要③~福島のヤツ地名~
2日目で見て回ったサクもだいたい谷戸型。
同様に谷地地名はすべて谷地型。
気になったとこと言えばこちら。


両者が近くにある谷戸型地形(おそらく屋津が矢津の支谷)であり、かなりの高台の上だったが谷津の同音異字と思われる。
サクだけでなくヤツ地名も存在する。だがその数はサクに比べて非常に少ない。これは浜通りの地名を考えるうえで非常に重要な要素であるが、こちらもいずれ別項でまとめる予定。
調査の概要④~福島のサク地名、合成地名について~
もうひとつ気になったのがサクとイリの合成地名。
サク+イリとイリ+サクのどちらも見つかった。


ニュアンス的には寺作入が「寺作の入口」、入ノ作が「入口にある作」ということになる。
ではなんの入口か、と言う話になるが山間部かつ近くに神社があるでなし、となるとおそらく「山への入口」のようなニュアンスだろう。
地形構成を見ても両者に大きな差異は感じない。
とりあえずこの「イリ」地名が谷戸型であるということは確かなようだ。
調査の概要⑤~福島の放棄型サク地名を見て思う事~
もうひとつ気になったのが放棄されたサク。
いやそれ自体は別に他地方でも見受けられるのだが気になったのがその様子である。


このように福島の放棄されたサクは樹林に覆われてしまったものが非常に多かった。
関東の谷戸・谷津の放棄型にもこの手のものはあるが全てではない。
例えば湿地帯に戻ったり、あるいは葦原になっていたりと様々な「戻り方」がある。元の地勢が地域によって様々だからだ。
今回のいわき市のようにだいたいすべて樹林に帰すというのは少々珍しいパターンである。
これは福島のサクのほとんどが元々樹木に覆われて、それを伐採して開拓したものだという事を示している。
福島のサクの成り立ちを考えるうえで重要な要素である。
これについてもいずれ別項でまとめる予定。
調査の終わり、2日目
この日は先日のような強風からは解放された代わりにたびたび大雨に見舞われた。
それこそ先が見えないレベルの大粒の土砂降りであり、これまた自転車で先に進むのは困難なレベル。
仕方なく発生するたび雨宿りをしてやり過ごしていた。
さてその大雨で雨宿り中にいささか困ったことに気づく。
普段現地で見聞きしたものは写真を撮ってXにコメント付きで上げていたのだが、それが先日の最後あたりの投稿からすべて『下書き』行きになっていたのである。
調べてみるとどうやらXは一度投稿が失敗し下書き行きになるとその後の投稿全てが下書き送りになることがあるそうで、さらに大量の下書きをバックアップしたりダウンロードしたりする機能はないそうなのだ。
だいぶ困ったがGoogleKeepにメモを入れ直すことでどうにか調査復帰。雨の中再び自転車で出立する事に。
なお夕食は居酒屋で福島名物のメヒカリのから揚げをいただいた。
…自転車なのでアルコールは厳禁だが。
走行距離:106km
2026/08/13 いわき~小川郷~草野
小谷作(大字)、杉内作、愛谷(大字)、高谷地、大久保、諏訪作、猿ケ作、カラス作、神谷分、山田作、矢田ノ目、三谷渡神社、才子作、堂ノ作、作田、沼ノ作、北作、磐井作、作、作ノ内、不動作、南作、庄司作、恩作、諏訪作、絹谷、扇作、御代作、北野作、南作、沼久保、吉野作、仲ノ作、前ノ作、袖作、女房作、神谷(大字)
本日の予定、3日目
この日も朝から雨。
山間部や極端な高台の上は悪天候のため調査先から外し、回りやすいところをぐるっと見て回る。
実家に帰省するために調査は午前中いっぱいまで。
調査の概要⑥~サクの用途~
いわき各地のサクを見ていて気付いたことがある。
微妙に高台にある事だ。


関東の谷戸であれば谷戸の下流域である下谷戸はそのままその先の低地と接続しており、高低差は存在しない。
一方で福島のサクは手前の低地から一段上がったところから奥に続いている事が多いように見受けられる。
また谷戸の多くは棚田と水田利用が基本なのだが、サク地名には過去に渡って棚田が構築されたり水田として活用されたか疑わしいものがそこそこ見受けられた。
つまり畑地利用が比較的多いように見えるのだ。
このあたりもいずれ掘り下げてみたい。
調査の終わり、3日目
山間部の調査を取りやめたため思ったより早めに今日の分のノルマが終わってしまい、次回以降に調査予定だった予定地を追加で16か所ほど見て回ることになった。
その後余裕をもっていわき駅に到着…したところ1本前の電車に急げば間に合いそうと判明。
実家方面の電車は1時間に1本。
これは乗るしかない…と急ぎ自転車を輪行袋に入れて電車に飛び乗った。
そして発車した後に気づいたのだ。
「あ、お昼食べてないな」
実家までおよそ3時間の道程である。
最後まで台風に振り回された…いや最後のは自業自得か。
走行距離:79km
