仮面ライダーって何者?
仮面ライダーに触れてこなかった人にとって、仮面ライダーは「正義の組織に選ばれし者」というイメージがあるようです。正義の組織から、敵と戦う力を得るための変身ベルトをもらって、それを装着して人々を守ために戦う。いわゆる、戦隊モノのイメージですね。でも、仮面ライダーは違っていて「悪の組織に選ばれし者」なんです。人々を守るために戦う人間のことを英雄やヒーローと呼ぶのなら、確かに仮面ライダーはヒーローですが、めちゃくちゃ辛いヒーロです。
今回は、仮面ライダーとは何者なのか、はじめて知る人向けにそのポイントをご説明します。
時代を経るにつれていろんな設定の仮面ライダーが出てきますが、これから説明する内容は基本的に初代仮面ライダーに当てはまるものです。その点、ご承知おきください。
1. 悪の組織に選ばれし者
正義の組織に選ばれし者なら、まだどれだけ良かったか・・・
あろうことか、城北大学の秀才 本郷猛は、悪の組織に選ばれてしまうんです。
その組織とは、人間を改造し、思い通りに動かすことで世界征服をねらう悪の組織「ショッカー」。
優秀な本郷猛を、組織の一員として(統領にとっては歯車でしかありませんが)迎え入れようとしたのです。
滑稽な設定だと思いますか?でも、決して他人事ではないのです。現代の日本人が、身体改造はされずとも、思想や精神面ですでに「ほぼ改造済み」の状態にされているなんて噂もあるくらいですから・・・
2. 無断で身体を改造され望まぬ力を与えられている
正義の組織から強力な変身グッズを与えられたのなら、まだどれだけ良かったか・・・
本郷猛は、敵に拘束され、目覚めた時にはもう、脳以外のほとんどが勝手に改造されています。最悪です。
だって、体の中身がほとんど機械になってしまってるんですからね・・・生身の部分はほとんど残っていません。
それで、尋常じゃないパンチ力やキック力、ジャンプ力を与えてやったと言われても、全然喜べないですよね。
そんな力、一度だって望んだことなどないのですから。
その後本郷猛は、緑川博士の手助けを得て脳改造を免れ、組織を抜け出します。
ここで彼は、ショッカーにとって命令に従わない異分子となり、抹殺の対象となりました。
3. 日常を奪われ決して元の生活に戻れない
身体がほぼ機械になり、抹殺の対象となった時点で、今までのように「普通の生活」を送ることができません。
前者に関しては、多分、常に身体の中で機械が作動している違和感を覚えながら日々を過ごすことになりますし、
それが悪い組織に与えられたものだからこそ絶対人には知られたくないですし、
機械だからいつ故障するかわからないですし、自分自身でメンテナンスなんかできないですし、
ちょっと手に力を入れたら異常な力が発動して物を壊したり人を傷つけかねないですし、
ほんと何にもいいことありません。
後者に関しては、自分を抹殺しようと次々と差し向けられる刺客にいつ命を奪われるかわからないので、
おちおち眠っていられません。辛すぎます。
正義の組織から変身グッズを与えられて戦っていたのなら、敵を倒せばいつかは元の生活に戻ることができます。
でも、身体をほとんど改造されてしまっている以上、決して元の生活には戻れません。
4. 人々や自分の命を守るために一人で戦い続けなければならない
悪の組織「ショッカー」は、人々を拉致して改造するという非道いことをしますし、
命令に従わない本郷猛の命を狙ってきます。
悪事をはたらくショッカーの戦闘員は強大な力を持っているので、
拉致されそうな人々を守ることも、ショッカーに狙われる自分を守ってもらうことも、
一般人にはできません。
それができるのは、敵と同等の力を持った自分だけです。
しかも、自分がはじめての異分子なので、同じような境遇の仲間がいません。
ショッカーが悪事をはたらこうとする度に、たった一人で戦い続けなければならないのです。
前者の方は見過ごすこともできますが、良心の呵責に耐えねばなりません。
後者の方は自分が当事者なので、自分でなんとかするしかありません。
辛すぎます。
5. 憎き敵の力に頼らねばならない
人々や自分の命を守るためには、自分を非道い目に遭わせた憎き敵の力を使わねばなりません。
悪の組織に与えられた力を使わねばならないのです。
正義の組織が作った「みんなに承認された力」なら、それほどためらうことなく使えるんですけどね。
戦う度に悪の力に手を染めることになるし、それがなければ人も自分も守れない。
これもかなり心の葛藤を生みます。
6. 怖しい見た目と力の影響で忌避される
ショッカーの戦闘員と戦うためには強大な力が必要で、それを得るために変身する必要があります。
ただ、変身の際に怒りや悲しみが伴うことで、顔に改造手術の手術痕が醜く現れてしまいます。
この醜い手術痕を隠すために、本郷猛は仮面を被ります。
身体改造によって既に普通の人間ではないのに、変身することによってさらに化け物のようになる。
人々を守るために変身して戦っているのに、人々から「うわっ・・・」と思われ忌避される存在になってしまう。
人のために戦っても、素直にありがとうなんて言ってもらえません。
辛すぎます。
7. 長く生きられない
身体がほぼ機械になっているので、メンテナンスが必要です。
でも、本郷猛は組織を抜け出しているため、メンテナンスしてもらえません。むしろ抹殺しに来ます。
もちろん、自分でメンテナンスするなど不可能です。
どのような技術が使われているかなど、一切知り得ません。
そうすると、いつか機械に動作不具合が発生します。
その時点で生命の維持が難しくなります。
つまり、メンテナンスの術を一切持たない本郷猛は、長生きできないということです。
いかがだったでしょうか?
仮面ライダーは、「正義の組織に選ばれし者」ではなく「悪の組織に選ばれし者」であり、彼らによって人生を無茶苦茶にされた人です。その辛さは上述の通りで、普通の精神力ではやっていけません。
きっと、脳改造されて何も考えない一戦闘員になった方が、楽だと思います。
けれど、本郷猛はそれを良しとしなかった。
悪の組織の手先にはならず、これ以上悲劇を生まぬよう、苦しみながらも人々を守る道を選んだ。
その覚悟と行動が、仮面ライダーがヒーローたる所以なのだと思います。
最近の仮面ライダーはかなりポップでノリの軽い感じにはなっていますが、それだけだとここまで人を魅了するコンテンツにはならないと思います。いくら時代が変わっても、仮面ライダーというコンテンツの背景に、今回ご説明したような「辛すぎる運命に向き合う覚悟の設定」が一本の筋として通っているからこそ、そのコントラストがえも云われぬ魅力を発揮しているのだと思います。
もし仮面ライダーに興味を持っていただけたなら、ぜひ原作の漫画を読んだり映像作品を見たりして、その世界にどっぷり浸ってみてください。
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