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東京都同情塔 / 九段理江 (2023)

2023年下半期の芥川賞作品なのだが、ちょっと遅れてこのお盆休みに読了(正確にはオーディブルで聞いた)。いまの世相の気持ち悪いところを見事に切り取ってると思った。これは映画化とか無理だろうな、小説でしか描けないだろうな、とも。

「より良い社会の実現のためには抑圧・暴力も厭わない」的なディストピアを描く作品はよくある。パッと思いつくだけでも、ジョージオーウェルの1984とか、映画なら未来世紀ブラジルとか、マイノリティ・リポートとか、デモリションマンとか。ただこれらは「より良い社会」=「犯罪ゼロ社会」とかだが、この小説では「他者への配慮や優しさを重要視する」というところ。最終的にシンパシータワーで制度化した規則は言論抑圧という形で現れ、それはまさにディストピア以外の何物でもなく、この結果は他の作品と似ていると思う。他の作品と違うのは、「他者への配慮や優しさを重要視する」 というきっかけのところで、SNSでコンプラ・ポリコレ的によくない人を吊るしてる現状の延長線上にある点。そのおかげでこのディストピアは近い将来ありうべき話と思えてくる。

(中略)それがAIの構築する文章であることに思い当たった。如何にも世の中の人々の平均的な望みを集約させた、かつ批判を最小限に留める模範的回答。平和、平等、尊厳、尊重、共感、共生。質問した側からスクロールを促してくる、せっかちな文字が脳裏に浮かぶ。

東京都同情塔 / 九段理江
ホモ・ミゼラビリス 同情されるべき人々 完全版

AIがアウトプットする文章だけでなく、政治家の会見とか、会社の偉い人の発言を聞いてると、「何か言っているようで何も言ってない」という感想を抱くことが多い。「相手の言葉が分からなくなる」というのが何度も小説に出てきたが、本当にそうなりつつある気がする。人を傷つけてもいいから本音で、というのも違うと思うけど、行き過ぎた配慮とそれに対する同調圧力も暴力だよなぁ。難しい。。

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