「サイト内で人気でも書籍化したら売れない」現象が起こるのは何故か?
「買う気」が無くても数字は上がる、評価するのはタダだから
小説投稿サイトの中で1位を獲って書籍化した作品のはずなのに、売れない…
サイトの中では「人気」のある作品なのに、いざ書籍化すると、売れない…
そんな話、よく聞きますよね?
この現象、妙だとは思いませんか?
サイトで人気が出た作品なら、書籍化しても人気が出るのが「普通」なのではないでしょうか?
しかし「そうならない」パターンも間々あるのが「現実」です。

「普通はそうなる」ことが「そうならない」場合、そこには何らかの「勘違い」「思い違い」があるものです。
今回は、そんな投稿サイト内外の「人気のギャップ」が何故発生するのか――
そして、我々が「何を見誤っているのか?」について、考察を挙げられるだけ挙げていきます。
■ブクマ数や評価数がそのままファンの数「ではない」
とあるインフルエンサーさんが、著者の中でこんな失敗談を書いていました。
↑
SNSが苦手過ぎる意識があるため、とりあえず勉強してみようと地元の書店で手に取った本。
初版の発行年が2019年なのでSNSを取り巻く環境など変わってきてしまっているかも知れませんが、今でも参考になる部分は結構あるかと。
当時フォロワーが2万人を超えていたにも関わらず、3000円のチケットでイベントを開いて、集まったのはたった3人だけだった…と。
「インフルエンサー」というジャンルの違いはあれど、この「数字のギャップ」は物書きにも通ずるところがあるのではないでしょうか?
「SNSをフォローしてくれる人」と「実際イベントに足を運んでくれるファン」の数にギャップがあるように、「ブクマ(お気に入り)や評価をしてくれる人」と「書籍化したら買ってくれる人」の数にはギャップがあるのです。
なぜなら、フォローやブクマはタダで出来ますが、イベントに足を運んだり書籍を買ったりするにはお金や時間・労力がかかるからです。
そのインフルエンサーさんはフォロワーを「お金と時間を使ってくれるフォロワー」「いいねやコメントをくれるファン」「とりあえずフォローしてくれた人」の3段階に分けて分析していました。
ウェブ小説につく数字(人気)にも同じことが言えます。
「お金を払ってでも読みたいファン」「無料なら追うけど課金してまで追わない読者」「『とりあえずまぁキープしてみただけ』のユーザー」…こんな風に「作品(作者)に対する熱意」でレベル分けができるのではないでしょうか?

問題は、見た目の数字だけでは「どの階層の読者がどれだけいるのか」が分からないということです。
たとえブクマが2万件ついていたとしても、それが「お金を払ってまで追わない層」や「とりまキープ層」ばかりだったなら、書籍は売れません。
それこそ上の例に倣うなら「2万部売れると思ったら3冊しか売れなかった」ということさえ有り得るかも知れないのです。
■小説投稿サイトのランキング精度を過信してはいけない
これは以前から過去記事でちょこちょこ書いていることなのですが…
そもそも小説投稿サイトでの「順位」や「ポイント数」は、過信しない方が身のためです。
普段から「データ」というものによく触れている方なら、既にお気づきでしょうが…
「データ」というものには「精度」があります。
調べ方ひとつ、データの仕組みひとつで「実態と合ったもの」にも「全然合っていないもの」にもなるのです。
たとえば小説投稿サイトの場合、まず「不正防止策」が無ければ(あるいは有っても機能していなければ)精度はガタガタになります。
たとえば作者が自作品にいくらでもブクマあるいは高評価がつけられるとしたら、数字なんて有って無いようなもの…まるで信用できませんよね。
何かと「モラル崩壊」が囁かれる現代…
「性善説を信じてユーザーのモラルに任せる」というスタンスでは「ズルした人が得をして、真面目な人間が馬鹿を見る」ことになるのではないかと、常々危惧しています…。
それと「男女間のリアクション格差問題(※)」で「女性向け作品」ばかりが有利になり「男性向け作品」は割を食う結果になっているのではないか…と、昨今の投稿サイトのランキングを見ていると感じます。
※あくまで「世間で囁かれている」程度の話で、実際にデータを取って調べたわけではありませんが…
エンタメ作品へのリアクション(感想や評価)をするのは女性の方が圧倒的に多く、男性はたとえ面白くても目に見えるリアクションは取らない(取ったとしても数が少ない)と言われています。
小説投稿サイトのシステムはだいたいの場合、読者の「ブクマ(お気に入り)」や「評価」がポイントに結びつき、順位を押し上げるようになっているため、「リアクションの多い『女性向け』の方がポイントも順位も上がりやすいのではないか?」という仮説が成り立ちます。
小説投稿サイトは「読者のリアクション」がポイントや順位に大きく影響するため「リアクションする層」に偏りがあると、実際の人気と「見た目の人気」にギャップが出てしまうんですよね…。
上に書いた「男女間リアクション格差」で言うなら、「男性向け作品」だって本当は人気があるはずなのに、リアクションする読者の数が少ないせいで、その人気が「目に見えない」状態になってしまう(あるいは「実態」よりも「人気が低そう」に見えてしまう)…ということです。
数値やランキングの「精度」が狂うと、それは「実際の人気」とはほど遠い「見せかけの人気」になってしまいます。
世の中には効率良くポイントや順位を稼ごうという「数字を獲るための戦略」が溢れていますが…
それって結局「見せかけの数字」を獲っているだけで、本当の意味での「人気」を獲っているわけではないんですよね…。
むしろそうして「見せかけの数字」に踊らされ「本当に獲るべきもの」を見失ってしまうと、「効率が良い」どころか「急がば回れの逆」にしかならないのではないでしょうか?
■サイト「内」戦略はサイト「外」へは持ち出せない
そもそも皆さん、気づいているでしょうか?
小説投稿サイトのポイントや順位が「書店に並んだ書籍」からは見えないことに…。
本屋で初めてその本に出逢う読者は、小説投稿サイトでの「人気」など知らない状態で買う本を選ぶのです。
時々「帯」や広告のコピーで「〇万PV達成!」が謳われている作品も無いわけではないですけど…。
そして見るたびに「よりにもよって、何でこんな『アテにならない数値』を使うんだろう…?」といつも疑問に思うのですが…。
PV(ページビュー)が作品人気の指標として「最も比較に使えない数値」だってこと、思考力がある程度以上ある方なら、すぐお気づきになりますよね?
↑
1Pあたりの文字数が作品によってマチマチなので(さらに総ページ数も作品によって違うので)、大きさの違うマスで米を量るようなものなのです。
今の世の中「データが読めない人間が多い」ことを見越した上で「とにかく大きい数字を出しとけばダマされるだろう」という作戦なのかも知れませんが(気づく人間は気づくので、普通に信頼度が下がるのですが)…。
ポイント戦略やランキング戦略が通じるのは小説投稿サイトの「内」まで。
書籍化してサイトの「外」へ出れば、そこからは全く別の戦いが待ち受けているのです。
「毎日投稿」や「新着ブースト」「完結ブースト」など「投稿の仕方」でポイント・順位を稼いできた物書きさんもいらっしゃるかと思いますが…
書店で販売する本に「毎日投稿」も「ブースト」も何も無いですよね。
書籍化してしまえば、物書きは最早戦略面で作品にタッチできなくなるのです。
販売戦略を考えるのは出版・流通などの「他者」になります。
絵師さんやキャッチコピーを選ぶこともできなければ、タイトルさえ変更になることがあります。
そうした時にモノを言うのは、見せかけの数字を稼ぐための「小手先の戦略」ではなく、作品自体の魅力を高める「真の意味での戦略」なのです。
たとえば、数値や順位はサイト外に持ち出せませんが「読者のニーズに合った作品を書く戦略」はサイト外にも持ち出せます。
サイトの「内」でしか通用しない戦略に労力を削られるより、最初からサイト「外」でも通じる戦略を追っておいた方が、長い目で見て「得」なのではないでしょうか?
■小説投稿サイトの「ガラパゴス化」を疑え
上でも書いたことですが…サイト内の「見せかけの人気」がサイト外でも通じる「本当の人気」だとは限りません。
小説投稿サイトの性質上、たとえば「リアクションする読者層」が「ざまぁ要素ありの恋愛小説好き」に偏っていたなら、そのジャンルにばかり(見せかけの)人気が集中し、他ジャンルはたとえ(本当の意味での)人気があっても「無いもの」としてスルーされてしまうのです。
小説投稿サイトのランキングと、マンガ・アニメなどの他コンテンツの「人気」を比べてみた時「何か妙だ…」と感じたことはありませんか?
他のエンタメ・コンテンツでは「恋愛要素なし」の作品でも普通に人気を博しているのに…
他のエンタメ・コンテンツでは、ランキングに様々なジャンルが多様に交ざり合っているのに…
小説投稿サイトでは何故だかいつも「同じジャンル」ばかりがランキング上位を独占していると思いませんか?
これが小説投稿サイトの「内」だけでしか通じない「局地的な流行」なのだとしたら、どうでしょう?
「井の中の蛙大海を知らず」で、井戸の中の「トレンド」を必死に追っても、外海に出たら実は全然違う「トレンド」が流行っていた…
そんな可能性も、有り得るとは思いませんか?
「サイトで人気を獲っても書籍化すると売れない」のは、実はサイト「内」でのトレンドと「外」のトレンドが食い違っているからだったりはしないでしょうか?
自分は小説投稿サイトのランキングを見て「何か妙だ…」と感じた時から、サイト「外」のトレンドに注意を払っています。
そしてそこにサイト「内」とのギャップを見つけたなら、そこに注目して「なぜサイト内ではこれが流行らないのか?」を考察しています。
…まぁ、そもそも小説投稿サイトでは、ランキング上位トレンド以外のジャンルに手を出す物書きさん自体が少ない気がするんですけどね…。
(皆が皆、同じジャンルに一極集中して「少ないパイを多人数で奪い合う」構図になっているような…。)
■バズり型の注目度は長持ちしない
「ネットでの人気」で注意が必要なのが「バズり型の注目度は持続性が低い」ということです。
爆発的に数値が伸びる「バズ」現象は、確かに人の注目を集めます。
ですがそれは「一時的」なもの。
ネットでは次から次へと新たな「バズ」が起こり、古い「バズ」は忘れ去られていきます。
世の中の情報スピードが速くなれば速くなるほど、そうした「情報の新陳代謝」のスピードも上がります。
マンガ『【推しの子】』でも「(YouTubeの)チャンネル登録者数増加には1度きりのバズでは効果なし」といった描写が出てきますが…
昨今、1回や2回の「その場限りのバズ」では人気を維持することはできません(そもそも人気「獲得」に至るかどうかさえ怪しい…)。
重要なのは「バズったかどうか」ではないのです。
バズった時に、そこに「人を引き留めるほどの魅力があるかどうか」なのです。
それほどの魅力が無ければ、人はバズに惹かれて集まっても「へぇ~ふーん」で終わって流れ去って行きます。
大事なのは、いざ人が集まって来た時に、その人々をガッチリ捕まえて逃さない「魅力」を備えておくことなのです。
「目立ったもの勝ちな経済」と呼ばれる現代、世の人は「いかにバズを生み出すか」にばかり熱中していますが…
本当に重要なのは「バズの先にあるもの」。バズは「手段」であって「目的」ではないのです。
そこを見誤ると、数字に一喜一憂して心を擦り減らすだけの「苦しい」物書き人生になってしまうのではないでしょうか?
※今回の記事で利用させていただいたイラスト素材はコチラ↓。
