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秋、ビーナスラインを走るぞ!その2

私は何も分かってはいなかった。
ビーナスラインが、一体どんなところなのかを。

「そこから、どう行くつもりなん?」 息子からルートのチェックが入ったのだ。
私はてっきり、白樺湖から諏訪に抜ける道がビーナスラインだと思い込んでいた。

指摘されて、慌てて調べ直した。
どうやら私が本当に走りたかったのは、霧ヶ峰から扉峠までの道のりだったようだ。
危ないところだった。
お天気次第ではあるけれど、事前に気がついて本当によかった。
もし指摘されなければ、現地で何も疑わずに諏訪まで走り、「やっぱりビーナスラインは綺麗ねえ」などと満足していたかもしれない。
こういう勘違いは、私にはよくあることだ。

旅の行程で、すべての夜に宿(ホテル)を決めておくなんて、私にはほとんど経験がない。
3泊4日とはいえ、今回は友人との二人旅。
相談した結果、今回は「袖を振ろうか(※1)」ということになった。 (私たちは、少し贅沢をする時のことを、お互いにこう言い合います)

その友人とは、どちらも普段は車中泊やキャンプをする身だ。
だからこそ、今回は「ちゃんとしたホテルに泊まる」というだけでも、なんだか新鮮でとても楽しい。

彼女とは、お互いにとって気楽な旅の道連れだ。
私はすでに仕事をリタイアして「毎日が日曜日」の身だけれど、彼女はまだ現役で働いている。
年の差は30歳、それがこれまでは、長旅のハードルになっていた。
けれど、近頃の「働き方改革」とやらが浸透してきたおかげで、少しずつ休みが取りやすくなってきた

私も私で、もういつまでこうして元気に一人で動き回れるか、心細くなってきている。
そんなこともあり、「長く休みが取れる時は、これからは二人旅にしようか」という話になった。
どちらも旅好きだから、そんな約束はすぐにまとまる。

夫が旅立ってから、もう30年近くになる。
夫が元気だった頃、我が家には犬が二匹もいたので、夫婦二人での長い旅はできなかった。
それが一番の理由で当時は、お互い別々に旅には出ていたのだ。
やがて、それぞれに「一人旅の楽しさ」を知ることになったのだけれど、これは今思えば、犬たちが残してくれた一番のプレゼントだったのかもしれない。

そんな夫が、いよいよ無理ができなくなってきた頃、ぽつりと「もう一度、北海道に行きたい」と言い出したことがあった。

「どこで入院することになるか分からないけれど、それでもいい?」 私が聞くと、夫は静かに「それでもいい……」と答えた。

「二人では、北海道に行ってないね……」

主治医の先生に相談し、諸準備を調えながら、一大決心をして出かけた北の大地だった。
それぞれが知る北海道を語り合い、二人で初めて出会った景色の中では、感動を共にしては、意義深く温かい思い出を作ることができた。
それが、夫が亡くなる2年前の、特別な旅となった。

先日、その思い出話を彼女にしていると、ある日、彼女が真顔でこう言った。
「〇〇さんだって、来年死ぬかもしれないじゃない。だから行こうよ」

初めはきょとんとしてしまったけれど、その言葉の意味が腑に落ちた瞬間、二人で大爆笑した。
「私はね、もう少しは生きているつもりなんだけど(笑)」
「あ、いや、そんなつもりで言ったんじゃないの!」
慌てる彼女を見ていたら、なんだか無性に嬉しくなった。
それほどまでに私と旅がしたかったのだ、この人は。
そう思うと嬉しくなって、
「行こう。来年死ぬかもしれないものね」
そうして、この秋に北海道に行くことが決まった。

日程は最大で10日間。私にしてみれば、そんな短い北海道の旅は少し物足りないけれど、「まあ、来年死ぬかもしれないものね」と思えば、大いに納得がいく。

秋の北海道のルートも少しずつ決まり始めている。
けれどその前に、まずは新潟〜長野〜山梨へと続く今回のドライブだ。
二人で走るビーナスラインが、どんな景色を見せてくれるのか。
今はただ、それが楽しみで仕方がない。






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