音楽評論家 故.黒田恭一の鮮やかな謙虚さ(ベートーベン.ピアノ協奏曲 第1番カラヤン指揮&エッシェンバッハ.ベルリンフィル管弦楽団)🇩🇪クラッシック音楽の普遍化マガジン掲載文.再掲
🪁🪁🪁明けまして おめでとう御座います。🪁🪁🪁
黒田 恭一先生は 大学在学中から文筆活動をなさって、実に穏やかな表情で 御優しい印象ではあるのだが、たまには辛口批判も書いていらっしゃる本もあったりするわけで…..
黒田先生は “1938年1月1日” という、大変おめでたい日に生まれていらっしゃる。
だからなのか、本の表紙等からも穏和なイメージがあるのだけれど、あまり多くを語らず 無駄な事は一切省いて はぐらかしながらも、言いたい事を暗に仄めかす様なところがあると仰る方もある。
そこは プロということなのか…..
黒田先生がハッキリとは仰らないという場合においては、それはその演奏が 今ひとつである事を物語っているのだが、決して 偉そうには仰らず、品格のある謙虚さの中に宿るものを察してくれ…..ということなのだろうと思われる。
オペラについても 色々な御考えがあるようだが、それはそれとして 穏やかに 且つ、厳しくも批評されるスタイルは、「大人の音楽評論家!」といった感じである。
そんな「大人の評論家」である 黒田先生が太鼓判を押す、ベートーベン.ピアノ協奏曲の演奏がある。
カラヤン (指揮) , エッシェンバッハ (ピアノ), ベルリン.フィル.ハーモニー管弦楽団による ピアノ協奏曲 第1番(グラモフォン)である。
この曲の日本国内盤で ライナーノーツを書いていらっしゃるのだが、カラヤンの構築美とエッシェンバッハの美しい詩的なタッチとの融合に対し、黒田先生は 高評価を与えたものと思われる。
1966年12月に ベルリン、イエス・キリスト協会にて録音された ベートーベンのハ長調 第1番は、エッシェンバッハにとっては ドイツグラモフォンにおける初めての協奏曲の録音であり、カラヤンにとっても 偶然にも この協奏曲は初のスタジオ録音であった。
難しい最初の方のリズムも 堂々と重量感のある演奏をしており、カデンツァにおいても 2つの完成されたもののうち、長い方を選んでいる。
エッシェンバッハは “モーツァルト弾き” としての視点からなのか、“モーツァルトのカデンツァは洗練されているが、ベートーベンのカデンツァは 又 別の働きを持っている” と考えていた様でもある。
エッシェンバッハの演奏は 決して暗い音質ではないのであるが、どこか陰があるというか、甘々の演奏では決してない。
それは、彼のシューマンやシューベルトにも見られる様な 女性を寄せ付けない崇高な演奏で、その中に見えてくる豊かな詩情に心打たれるものなのである。

個人的には モーツァルト弾きの中では、クララ.ハスキルとエッシェンバッハが最高だと思っているが、エッシェンバッハのベートーベンも なかなかのものだ。
エッシェンバッハは エリーザ.ハンゼンに認められ、1965年にルツェルンのクララ.ハスキルコンクールで優勝し、世界的な注目を浴び、日本にも何度も来ている。
モーツァルトのピアノ.ソナタでは、フランツと2台のピアノで美しい演奏を披露しており、その演奏は あのバーンスタインが、
「世界最高のデュオ」と大絶賛をした 素晴らしい演奏である。

そんなエッシェンバッハがカラヤン指揮のもと、ベルリン.フィル.ハーモニー管弦楽団での演奏で ベートーベンを演奏するのだから、素晴らしいに決まっている!
エッシェンバッハ贔屓だから 言うのではない。
本当に素晴らしいのである。
エッシェンバッハとカラヤンの組合せは、実はゴールデン.コンビだと思っている。
その演奏を 黒田先生は大絶賛されている。
“謙虚な大人の評論家” である黒田先生が大絶賛される、カラヤン指揮のベートーベン.ピアノ協奏曲 第1番を弾くエッシェンバッハは、 控え目に こう語っている。
「音楽を演奏する時 最も素晴らしいのは、専門家ではなく、単に音楽家として演奏する場合である。私は自分のことを専門家ではないと思っている。専門家という言葉は嫌いである。私は ただ優れた作曲家に共感を抱くだけだ。」
という 実に “謙虚な言葉” をエッシェンバッハは残している。
このエッシェンバッハの言葉は、どこか 黒田先生に通ずる部分がある様に思われる。

黒田先生は 2009年5月29日 享年71歳で お亡くなりになっている。
カラヤンも もう この世にはいない。
エッシェンバッハだけが この名盤と共に まだ生きている。
曾ては、ピアニストとして大人気であったエッシェンバッハの演奏する この盤は、もっと再評価されるべきものと思っている。
史上最高のモーツァルト弾きが演奏する ベートーベン.ピアノ協奏曲 第1番は、静かに、熱く、しなやかに、そして 女性を寄せ付けずに、“謙虚に誠実に愛を訴えているもの” と考えている。
私は 黒田先生も大絶賛された この演奏が大好きである。
だから…..
好きすぎて、
実は 同じ盤を2枚持っている。
黒田先生も きっとこう仰るだろう。
「そんなに好きであるのなら、2枚でも 3枚でも買って下さい。」と。
元旦には、
謙虚に 控え目に 鮮やかに、
黒田先生 お薦めの
カラヤン指揮、エッシェンバッハ、ベルリン.フィル.ハーモニー管弦楽団の ベートーベン.ピアノ協奏曲 第1番を聴くこととしよう!
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