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しなしなと二輪ちゃん78    番外編 屋久島

鹿児島までやってきた二輪ちゃん旅。
せっかく鹿児島まできたのだ。
一旦、二輪ちゃんのことは忘れて番外編。
自転車には乗らず、屋久島に大きな寄り道をしている。


深く、そのあと浅い

今夜の宿が決まった。
部屋に荷物をおろしたあとは、夕食である。
近辺に食堂がないので、スーパー《Aコープ》へ買出しに行く。

小学生や部活の中学生が、すれ違いざま元気に挨拶してくれる。
高校生カップルに出会った。
普段なら、何をイチャイチャしておるのか、まったく最近の若いもんはなんて羨ましいんだとか思うのだが、島では微笑ましく見えて、ついつい写真を撮りたいと思ってしまう。

しかし最近考える。
そもそも私は何を撮りたいのか。

島の子どもだから純朴だとか、ほっぺが赤くてかわいいだとかいうのは勝手な思い込みだ。
島だから街だからではない。
つい最近まで、自分のイメージする田舎の子供たちの写真を撮っていたが、今はそんな事に意味があるのかと思う。

もちろん、話をする中で写真を撮る事はある。
しかしそれが、島だから田舎だからというのは違うと思う。

最近の私は考えることが深い。

Aコープで買い物をして宿へと向う。

宮之浦川に架かる橋の上で、釣糸を垂れているおじいさんと話した。
橋のたもとの家に40年間住んでいるらしい。家におっても暑くてかなわんと、夕涼みがてら橋の上で釣りをしているという。

宮之浦川といってもここはほぼ海なので、海の魚が釣れる。
ダツ・チヌが多いそうで、この前こんな大っきいダツを釣ったと両手を広げた。

三割増しと見たい。

橋はいかにも中学生が飛込み遊びしたくなる高さだった。

「ワシの息子も昔、飛び込みよった。
 みんな年頃になるとこの橋から飛んで・・・
 そうそう勇気試しみたいに。
 深く見えよるがこれでも山からの土砂で
 浅くなって、今はもう飛び込めんねぇ」

私には飛び込んでも支障ない深さに見えた。

しかしそれは、水が澄んで蒼い岩影が濃い青に見えたからなのだろう。

本当は浅いのだ。

クイズ

宮之浦大橋から釣りをしていたおじいさん。数年前に鹿児島市内の病院で白内障の手術をしたという。
手術の前はホントに怖くて恐くてビビったが、今はよく見えるようになったという。

「なんでもっと早く手術せんかったのかい
 ねぇと思ったわ」

いずれは私も行く道であり、その時は勇気を持って手術しようと思った。
おじいさんは白内障の話をしてから私たちに聞いた。

「ワシ、いくつに見えるぅ?」

・・・出た。
正解を言ってはいけないクイズ。
白内障の話のあとでこのクイズは辛い。
どう見ても75歳ぐらいだろうと思ったが、そこは私も大人。
当らずとも遠からず。
うまく外すほどほど感が大事だ。

「ろくじゅう8さい…ぐらいですか?」
「ひゃひゃひゃ」
 77歳だと、嬉しそうに笑うおじいさん。

 私、セーフ。

私もいい歳になり、このクイズの答え次第によって、生きるテンションがだだ下がりすることが分かってきた。

「いくつに見えるぅ?」とは聞かないが、
年齢の話題になると周囲が気遣う空気が分かる。
その空気だけでも、自分でもわからない、どこかのテンションが少し下がるのだ。
おじいさんにはきちんと対応できてよかった。

ほどほど感

宿に戻る前に、バス停で明日乗るバスの時刻を確認。

朝8時台に目的地である白谷雲水峡行きのバスが2本ある。
発車時間がほぼ同じなので、2本目に乗った方が空いているのかなと思ったが、もしも2本目のバスが満員で乗れなかったらヤバイ。
1本目に乗ることにする。
バスは登山口方面のほかに島内を回るバスが、1時間に1本あった。
島の周遊観光客や、島民のお年寄りの利用があるのだろうか。
島のバスにしては結構、頻繁にある感じだ。

宮之浦の町には徒歩圏内に登山用具のお店があるし、スーパーもある。
登山用の弁当も電話で注文して、バス停前のお店で朝に受け取る事が出来る。

ここには「どうしよう?」と思う事がすべてサービスとしてあって、困らない。

今まで出掛けた先で、思った所にスーパーもなく、必要なものを買いにヒッチハイクして助けてもらったこともある。
不便な所でも、人の善意で何とかなることを経験してきた。

善意は美談になるが、島で暮らす人が善意で食えるわけではない。
お金が発生しないと島の人は〝ここ〟で暮らすことはできない。

宮之浦の町は、人との出会いで何とかなる部分を、いい意味でお金を介入させて何とかなるようにしたという印象を持った。

最低限なければ困るというサービスを、お金と引き換えに提供する。
世界遺産に乗っかった過剰なサービスではない。
その、ほどほど感がいいなと思った。
   
          2016年7月3日(日)
          屋久島 宮之浦にて

宮之浦川 空が広い
飛び込める高さではない
「のぼりあがり」と読む
人生のどん底には、こんなバス停があってほしい

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