【実話怪談】先生、肩重くありません? …だっていますもん、2人。
はじめに
夏になるとなぜか怪談が読みたくなります。
noteでも怪談を書かれている方がたくさんいらっしゃるので、私も楽しんでおりますが…。
そう考えると季節はあんまり関係ないかもしれないですね。
ただ私自身が実際に体験した不思議な話は
今からお話しするこの一回限り。
私はそれまで霊感がないものとして、ずっと過ごしてきたのですが、「その日」は前触れなく突然訪れました。
できれば、この一回が
最初で最後であってほしいと願うばかりです。
2009年12月
これは私が浜松市にある塾の教室長として働きだした頃の話。
クリスマスも終えた年の瀬。
恰幅のよいおおらかそうなお母さんが小学2年生のお子さんを連れて来られました。
「体験授業を予約した○○です。」
「○○さんですね。お待ちしていました。」
私はその親子を笑顔で出迎えた。
そして50分ほどお子さんだけで個別授業を体験してもらい、その後授業の様子をお母様にお話する旨を伝えた。
教室に一人残された小学2年生の男の子は、物珍しそうに教室をきょろきょろと見回す。
学年の小さなお子さんにとって、50分の体験授業は少し長く感じるかもしれないな。
そんな一抹の不安がよぎった。
しかし、いざ授業を始めてみるとそんな心配は無用だった。
その子は集中力が途切れることなくどんどん問題を解き進めていく。
わからない問題は質問してみたり、解けたときには大げさ喜んでみたり。
心の底から勉強を楽しんでいるようだった。
「あらっ。頑張っているじゃない。」
あっという間に50分が経ち、お母さんが戻ってきたがその集中力は全く変わらない。
「そうなんですよ。もう5ページも進めちゃって。私も驚いてます。」
「母ちゃん!待って。オレね、このページ終わらせるから!」
お母さんは『まったく。うちじゃ何もやらないのに』と笑いながら、こちらに視線を向ける。
小学生が頑張る姿と、
それを静かに見守るお母さん。
そこには、穏やかな時間が流れていた。
しかし次の瞬間、お母さんが怪訝そうな視線を私の方へと向けた。
「先生、あの。
こんなこと言うと、おかしいと思われるかもしれませんが…ちょっとよろしいですか。」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
私も笑顔で応える。
塾の先生として聞かれることはある程度予想がつく。
「先生。肩、重くありません?」
ーーえっ?
意表を突く質問に私は戸惑った。
そう言ったお母さんの目は、私に視線をあわせていなかった。
なぜか私の背後へとその視線を送っている。
ーー肩?
私は思わず肩を回す。
首の辺りに寝違えたような痛みが走る。
言われてみれば最近ずっとこの痛みが取れないことに気づいた。
そこで初めて自分の体に起きている異変を感じた。
「肩ではないですが…。ちょっと首が痛みますね。」
私は思わず首の辺りに手を当てた。
手のひらの冷たさが首筋に伝わる。
そこには先ほどまでおおらかだったお母さんの表情は消えていた。
「ですよね…。
だって、いますもん。」
そう言うとお母さんが口もとをゆがめた。
ーーいますもん?
背筋が冷たいものに触れたかのように、反射的に身震いした。
「2人も。」
ーー2人…?
その2人、
あるいは2体というべきか。
私には、ある夜の光景が脳裏によぎった。
2009年9月
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