宇宙が人間を必要としている可能性第1話 宇宙は、人間がいなくても存在できるのか
宇宙が人間を必要としている可能性
第1話 宇宙は、人間がいなくても存在できるのか
人間が生まれる前の宇宙
宇宙が誕生したのは、今から約138億年前だと考えられています。
それに対して、現生人類が地球に現れたのは、およそ30万年前です。
宇宙の歴史を一年に縮めたとすれば、人類が登場するのは、12月31日の最後の十数分にすぎません。
それ以前にも、宇宙は存在していました。
星は生まれ、光を放ち、やがて燃料を使い果たしました。
巨大な星は爆発し、その内部で作られた元素を宇宙空間へまき散らしました。
その元素から新しい星や惑星が作られ、地球も誕生しました。
そこに人間はいません。
しかし宇宙は、誰に見られることもなく動き続けていました。
この事実だけを考えれば、答えは単純に思えます。
宇宙は、人間がいなくても存在できます。
人間がいなくても、法則は働く
太陽が地球を照らすのは、人間のためではありません。
重力が物体を引きつけるのも、人間が発見したからではありません。
ニュートンが生まれる前から、物体は重力に従って落下していました。
アインシュタインが相対性理論を作る前から、時間と空間は重力の影響を受けていました。
人間は、宇宙の法則を作ったのではありません。
すでに働いていた法則を発見したのです。
人類が明日突然いなくなったとしても、地球は太陽の周りを回り続けます。
太陽はいずれ膨張し、遠い未来には燃料を使い果たします。
銀河どうしは衝突し、宇宙は変化を続けます。
宇宙は、人間の存在とは関係なく進んでいくように見えます。
それなら、人間は宇宙にとって必要ではないのでしょうか。
「存在する」と「知られている」
ここで、一つの違いを考える必要があります。
宇宙が存在することと、宇宙の存在が知られることは、同じではありません。
人間が誕生する以前にも、星は輝いていました。
しかし、その光を見て、
「あれは星だ」
と考える存在はいませんでした。
銀河は回転していました。
しかし、その姿を観測し、銀河と名づける存在はいませんでした。
宇宙には法則がありました。
しかし、それを数式で表し、なぜそうなるのかを考える存在はいませんでした。
もちろん、地球以外に知的生命が存在していた可能性はあります。
現在の科学では、それを否定も確認もできていません。
少なくとも地球では、人間が登場したことで初めて、宇宙の一部が宇宙全体について考え始めました。
これは、宇宙の歴史の中で非常に不思議な出来事です。
星から生まれた物質が、星を見上げる
人間の体を作っている元素の多くは、かつて星の内部で作られました。
私たちの体にある炭素や酸素、カルシウムや鉄は、宇宙の初期から現在の形で存在していたわけではありません。
それらは星の内部で起きた核融合反応や、星の最期に起きる大規模な爆発などによって作られ、宇宙空間へ放出されました。
その物質が集まり、太陽系と地球が作られました。
地球上で生命が生まれ、長い進化を経て、人間が現れました。
つまり、人間は宇宙の外からやってきた観測者ではありません。
宇宙の物質から生まれた、宇宙の一部分です。
その人間が夜空を見上げています。
星から生まれた物質が、星を観測している。
宇宙から生まれた脳が、宇宙の始まりを考えている。
宇宙の一部が、自分の生まれた宇宙を理解しようとしているのです。
誰にも知られない宇宙
ここで、少し極端な想像をしてみます。
宇宙に生命が一つも存在しなかったとします。
星も銀河もブラックホールも、現在と同じように存在しています。
光も重力も働いています。
しかし、それを見る者はいません。
宇宙が美しいと感じる者もいません。
星の誕生に驚く者もいません。
宇宙の広さに恐れを感じる者もいません。
そこには出来事があります。
けれども、その出来事を「出来事」として認識する存在はいません。
宇宙は存在しています。
しかし、自分が存在していることを知る者が、宇宙のどこにもいないのです。
この宇宙は、私たちのいる宇宙と本当に同じだと言えるのでしょうか。
人間は宇宙の目的なのか
ここで注意しなければならないことがあります。
人間が宇宙を観測しているからといって、宇宙が人間を作ることを最初から目的としていたとは言えません。
現在の科学には、そのような目的を証明する証拠はありません。
人間の誕生は、宇宙の必然だったのかもしれません。
非常に珍しい偶然だったのかもしれません。
あるいは、条件が整えば、宇宙のさまざまな場所で知的生命が生まれるのかもしれません。
今のところ、答えは分かっていません。
ただし、確かなことが一つあります。
人間が誕生したことで、宇宙の中に、それまで確認できなかった新しい現象が現れました。
宇宙を知ろうとする働きです。
人間は望遠鏡を作り、宇宙から届いた光を集めました。
数式を作り、目に見えない法則を探しました。
探査機を送り、自分たちが生まれた惑星の外へ手を伸ばしました。
そして今、宇宙はなぜ存在するのかを考えています。
人間が宇宙を必要としていることは明らかです。
私たちは宇宙から生まれ、宇宙なしには一瞬も存在できません。
しかし、反対方向の問いは、まだほとんど答えられていません。
宇宙もまた、自分自身を知る存在を必要としているのでしょうか。
存在するだけでは、完成しない可能性
宇宙は、人間がいなくても物理的には存在できます。
この点は、否定する理由がありません。
しかし、物理的に存在することだけが、宇宙のすべてなのでしょうか。
宇宙が自分自身を映す目を持つこと。
自分の法則を理解する脳を持つこと。
自分の美しさに心を動かされる存在を持つこと。
それらも宇宙の歴史の一部だとすれば、人間の誕生は、単に一種類の生物が増えたというだけの出来事ではありません。
宇宙は人間を通して、自分の過去を調べ始めました。
自分の構造を数式で記述し始めました。
そして、自分がなぜ存在するのかを問い始めました。
宇宙は、人間がいなくても存在できる。
しかし、人間がいなければ、少なくとも地球から見える宇宙は、自分が存在していることを知ることができなかった。
そう考えると、人間は宇宙にとって無関係な異物ではありません。
宇宙が長い時間をかけて生み出した、自分自身を見つめる一つの窓なのかもしれません。
あなたはどう思いますか
宇宙は、誰にも知られなくても完全なのでしょうか。
それとも、自分自身を見つめる存在が生まれたことで、宇宙にはそれまでなかった何かが加わったのでしょうか。
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