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生き物は独りで生きていない第4話 ミトコンドリアの正体

生き物は独りで生きていない

第4話 ミトコンドリアの正体 ― 元は別の生物だった

今、あなたが指を動かし、心臓を動かし、この文章を読むために脳を働かせている、そのすべてのエネルギーは、細胞の中にある小さな器官が作り出しています。ミトコンドリアです。

ミトコンドリアは、独自のDNAを持っています。これは非常に不思議なことです。人間の細胞の中にある遺伝情報のほとんどは核の中にまとめられていますが、ミトコンドリアだけは核の外側で、自分専用の遺伝子を持ち、自分で増える力を持っています。まるで細胞の中に、もう一つ別の生き物が住んでいるかのようです。

実際、それは比喩ではありません。約20億年前、酸素を使ってエネルギーを効率よく作り出す能力を持った細菌が、別の大きな細胞に取り込まれました。普通であれば、取り込まれた側は消化されて終わりです。しかし、このケースでは違いました。取り込まれた細菌は消化されずに生き延び、宿主の細胞の中で酸素を使ったエネルギー生産を担うようになったのです。これが「細胞内共生説」と呼ばれる考え方で、今では広く受け入れられています。

この出来事は、生命の歴史における最大級の転換点の一つでした。酸素を効率よく利用できるようになったことで、生物はそれまでよりもはるかに多くのエネルギーを使えるようになり、複雑な多細胞生物への進化の道が開かれたと考えられています。もしこの共生が起きていなければ、人間どころか、目に見えるほど大きな生き物自体が存在しなかったかもしれません。

さらに興味深いのは、ミトコンドリアが母親からしか受け継がれないという点です。父親由来のミトコンドリアは受精の過程でほぼ排除され、子どもの体を動かすエネルギー工場は、母方の系統だけがずっと受け継がれていきます。これを利用して人類の起源をたどる研究も行われており、「ミトコンドリア・イブ」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。

つまり、あなたが今こうして生きて動いていられるのは、20億年前に起きた一つの「共生」のおかげです。あなたの細胞一つひとつの中に、太古の出来事の生きた証拠が今も息づいています。

次回は、植物の世界に目を向けます。ミトコンドリアと同じように、もともとは別の生物だった葉緑体の起源に迫ります。

(第5話につづく)

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