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生命誕生の通説の穴を突く・第3話 鶏が先か、卵が先か?

生命誕生の通説の穴を突く・第3話
鶏が先か、卵が先か? 〜情報(DNA)と労働者(タンパク質)のデッドロック〜

生命誕生の謎を語るとき、避けて通れない最大の難問があります。
それが、あまりにも有名な「鶏が先か、卵が先か」というパラドックスです。
これを現代の生物学の言葉に置き換えると、「設計図(DNA)」と「大工(タンパク質)」のどちらが最初に生まれたのか?という、絶対に解けないデッドロック(膠着状態)になります。

1. 生きていくための「完璧すぎる分業体制」
私たちの体を形作る細胞の中では、見事な分業体制が敷かれています。
設計図(DNA / RNA):
  「こういうタンパク質をこういう順番で作れ」というすべての情報が書き込まれている、いわば超精密な設計図。
大工(タンパク質):
  その設計図を読み取り、実際にパーツを組み立てたり、化学反応を起こしたりして細胞を維持する働き者。
ここで、決定的な問題が発生します。
「設計図(DNA)」は、自分一人では何も作ることができません。 タンパク質という「大工」が読まなければ、ただの分子の塊です。
しかし同時に、「大工(タンパク質)」は、自分一人では絶対に作り出せません。 設計図(DNA)に書かれた指示通りにアミノ酸を並べてもらわなければ、大工自身が存在できないからです。
つまり、
DNAを作るにはタンパク質が必要。
タンパク質を作るにはDNAが必要。
「あれ、これって完全に『鶏が先か、卵が先か』じゃないか……?」

2. 「偶然」では絶対に揃わない、あまりに精巧なシステム
原始の海にアミノ酸や分子がどれだけスープのように溢れていたとしても、この「設計図」と「大工」のセットが奇跡的なタイミングで同時に、同じ場所で組み合わさる必要があります。
どちらか片方が片方より先に存在していたとしても、相棒がいなければ何も起きません。DNAだけがぽつんと海に浮いていても、それはただの分解されやすい分子の紐にすぎず、放置すればすぐにバラバラに崩壊してしまいます。
現代の科学者たちは、この矛盾を解決するために、初期の生命はDNAではなく「RNA(リボ核酸)」という、設計図と大工の両方の役割を少しずつ兼ね備えた物質から始まったのではないか(RNAワールド仮説)という説を唱えました。
しかし、その「都合の良い万能選手(RNA)」が、何もない化学反応の海の中でどうやって自発的に組み上がり、自己複製を始めたのかについては、いまだに誰も実験室で再現できていません。

■ 今回のオチ
生物の最小単位である細胞を見たとき、そこにあるのは「どちらか一方が欠けたら一瞬で崩壊する」という完璧すぎる相互依存のループです。
「自然の偶然の積み重ねで、この複雑な分業システムがピタリと同時に組み上がった」と教科書はサラッと教えますが、その裏側にあるのは、確率論の限界を遥かに超越した「最初からセットで揃っていなければ成り立たない奇妙な仕組み」です。
ニワトリがいないと卵が生まれないし、卵がないとニワトリは孵らない。
この宇宙の始まりにおいて、誰が最初にその「ループの輪」を繋いだのか。科学というメスを入れてもなお、生命の根底には、解き明かせない「完璧なパズルの輪」が静かに私たちを睨み返しているのです。
(第3話・おわり)

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