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「恋人と別れる50の方法 Fifty Ways To Leave Your Lover」アルバム 「時の流れに」第4曲 1975年

ポール・サイモンの作品は個性的なものばかりですが、一風変わった題名と、スティーヴ・ガッドの見事なドラムが曲全体に流れている、摩訶不思議な雰囲気たっぷりのこの歌。特に題名が興味をそそられませんか?出会いがあれば別離も必ずやってくる。人類永遠のテーマのひとつ。

ワンパターンのドラムの繰り返し。エレクトリックギターの乾いた音色と相まって妙に寂しい幕開けを前奏から演出しています。このコード進行のやるせなさ、、、。

ポールの詩にしては珍しく女性の語りです。

50 Ways To Leave Your Lover

The problem is all inside your head
問題は貴方の頭の中にあるのよ
She said to me
彼女が僕にいう
The answer is easy if you
簡単な答えよ
Take it logically
論理的に考えてみれば
I'd like to help you in your struggle?
もがき苦しむあなたを
To be free
助けてあげたいと思っているの
There must be fifty ways
恋人と別れる方法は
To leave your lover
50の方法があるの

Lyric by Paul Simon/迷訳:musiker(以下同)

どんな場面設定なんだろう?と考えてみます。
ある男がいて、彼は恋人と別れたいと思っている。でもどうしたらいいのか、わからず迷い悩み苦しんでいる。それを見ているのは恋人とは別の女性のようです。そうか、、。こういうシチュエーションってよくあるパターンかもしれません。

何気ないコード進行ですが普通のメジャーやマイナーのコードではなく、6thzやー9、dimなどが必ず入る一筋縄ではいかないサウンド。ドラムパターンにのって淡々と進む伴奏、メロディラインも決して複雑ではないのですが、ポールの巧みな語り口調が詩と見事にフィットし聞いていて爽やかです。

ポールは歌を作る際、イマジネーションにあわせてまずコード進行をあれこれ試し、メロディラインを決める。そしてメロディが決まった後、詩を書いていくパターンが多いと語っています。実に意外に思いました。詩とメロディが一体となっている歌が多いからです。でも時には曲と詩が一度に思い浮かぶこともあるらしいです。この「50の~」は朝シャワーを浴びている時に頭に浮かんできたということですが、その時にはきっとメロディも同時に生まれたはずだ、と私は勝手に信じています。

She said it's really not my habit?
To intrude
でしゃばるのはいやだし
Furthermore, I hope my meaning
あなたを迷わせたり
Won't be lost or misconstrued
誤解させたくはない
But I'll repeat myself
でももう一度いうわ
At the risk of being crude
遠慮ない云い方になるけど
There must be fifty ways
恋人と別れるための
To leave your lover
50の方法
Fifty ways to leave your lover
恋人と別れる50の方法

相手を気遣っているんですね、彼女はきっと。それに心の思うまま、歯に衣着せぬ云い方をすることを少しためらっている。でも、そうしないと男は目が醒めないから、自分を飾らずに直言するんです。

それまでポールの語り口調が主導でジャズ的なコード進行だった歌が、中間部ではロックンロールあるいはブルース調のコード展開になります。女性のコーラスも加わりノリのよい曲調、体が思わず動きます。

CHORUS:
You just slip out the back, Jack
こっそり出ていくのよ、ジャック
Make a new plan, Stan
新しいプランをたてなさい、スタン
You don't need to be coy, Roy
恥ずかしがらなくていいの、ロイ
Just get yourself free
ただ、自由になるの
Hop on the bus, Gus
バスに飛び乗りなさいよ、ガス
You don't need to discuss much
話し合いはほどほどにするべきね
Just drop off the key, Lee
鍵を捨てなさいよ、リー
And get yourself free
そして自由になりなさいって

歌詞が妙に調子いいのは、もちろん語尾の発音。
back, Jack
plan, Stan
coy, Roy
bus, Gus
key, Lee

キーワードと男の名前を巧みに合わせています。いわゆる言葉遊びですね。

ポールはこの種の言葉(韻)遊びが好きでよく息子と遊んでいました。それは息子に大受け、ポールがそれを始めるとハーパーはいつも笑い転げていたそうです。

こういう展開になると、迷訳をつけるのが本当に邪道にさえ思えてきます。訳(というより英語の詩をもとにしたmusikerの全く勝手な創作のつも
りですが、、、)はあくまで歌の内容と雰囲気を伝えるため、毎回記述してい
るものの、特に今回の場合は日本語にしてしまえば元もこもありません。

She said it grieves me so
こんな痛みでうちひしがれている
To see you in such pain
あなたを見ているのはつらい
I wish there was something I could do
何か私にできることはない?
To make you smile again
また微笑んでほしいのよ
I said I appreciate that
・・・ありがとう、、、
And would you please explain
だったら、ぜひ教えてくれないかい?
About the fifty ways
その50の方法ってやつ

優しい言葉ですね。男の方は恋人と別れるための方法を教えてくれるという申し出に少し戸惑いながら、彼女の言葉を聞き入ります。長く話をした後なのでしょうか、一晩寝て考えることにします。

She said why don't we both
ねえ、このことは
Just sleep on it tonight
一晩寝て考えることにしない?
And I believe in the morning
朝になればきっと
You'll begin to see the light
光も見えてくるから
And then she kissed me?
そして彼女は僕にキスをした
And I realized she probably was right
きっと君の言うとおりだろう
There must be fifty ways
50の方法があるはずさ
To leave your lover
恋人と別れる方法
Fifty ways to leave your lover
恋人と別れるための50の方法

ポール・サイモンはこの音楽を、リズム・エースというドラムマシーンを使って書きました。このマシンを使うと緊張感がありややぎこちなくもあるリズムが作られます。同じパターンのリズムが曲中ずっと繰り返され、最後は徐々に消えていきます。まるで行進が遠ざかるようなイメージを思い浮かべます。

ヴィクトリア・キングストンは著書の中でこう語ります。

まるで人間関係が遠くへ行進して去っていくようで、どきっとさせられる。
ドラムの音がなくなった瞬間の静けさは、人間関係の消滅(死)を感じる。
恋人との関係が荒涼とした砂漠のようになってしまった時の(心の)静寂
感のように、、、。

最初、恋人とは別の女性と書きました。それは別の女友達だろうと勝手に解釈していたのですが、主人公の男性のよき相談相手でたとえば叔母さんや姉さんかもしれません。いえ、実はこの女性が恋人その人なのかもしれないとも思えます。
どんな登場人物かは、あなたのイマジネーションで自由に設定してください。

アルバム「時の流れに/Still Crazy After All These Years」の中で主題曲に勝るとも劣らぬこの歌の存在感は並々ならぬ物があります。とことん個性的な歌を投入してくるポール・サイモンのこのアルバムは、聞き手に常に新しい提案をしていて、本当にハラハラさせられますね。中でもこの歌は、曲、伴奏、詩、いずれも申しぶんのない、傑作といえるでしょう。ポール・サイモンの歌の中で、私としては間違いなくベスト10に入れたい曲です。


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