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崩壊を処理しながら、本当の自分を描く──Mini Trees/Slow It Down 【ディスクレビュー42】

カリフォルニア州を拠点に活動するシンガーソングライター、Lexi Vegaによるソロユニット、Mini Trees。2018年に始動。

父はキューバ出身の高名なセッションドラマー、母は日系アメリカ人でフュージョン・バンド「Hiroshima」のボーカリストという音楽一家に育ち、元々はドラマーとして複数のバンドで活動していた経歴を持つ。

クラシック・ロック、スクリーモ、ハードコア、フォーク、ヒップホップ──雑食的なルーツを抱えながら、自ら「リビングルーム・ポップ」と称するインディー・ポップへと結実させた。リラックス感の強い音像は自宅でソファに腰掛けて楽しむのにぴったりだ。

Julien Baker、Death Cab for Cutie、Phoebe Bridgersが率いるboygeniusといった現代インディーシーンの重要アーティストとの共演を重ね、実力派として地位を固めてきた。

2ndフルアルバム『Slow It Down』は、2025年11月7日に初の完全自主制作作品としてリリース。2021年のデビューアルバム『Always in Motion』、2023年のEP『Burn Out』を経て、より自身をさらけ出した「最も脆弱で個人的な記録」と位置づけられる。

生ドラムのグルーヴにサンプリング・ループ、重層的なハーモニーを融合させたサウンドは、親密さと広がりが同居。明るいギターラインと重厚な音の壁が落ち着きなく共存する。

お気に入りの楽曲①「Hard To Love」

これまでの人生や結婚生活の静かな崩壊を処理する過程の感情が、正面から刻まれた一曲だ。アルバム全体を貫くテーマの核心に最も近い位置にある。

歌詞が描くのは、自分自身を愛することの難しさだ。

「一人にはなりたくない、でも自分は愛されにくい」──その矛盾した感情と、うまくコントロールできない自己嫌悪の念が、包み隠さず吐き出される。

現実から離れて空想の中に逃げ込みたくなる衝動、理想にとらわれた末の疲弊。繊細で傷つきやすい内側が、そのままの形で音として鳴る。崩壊の渦中にありながら、それでも自分を手放さないという選択。感傷ではなく、静かな決断として刻まれている。

お気に入りの楽曲②「Sludge」

かつては希望に満ちて、地に足がついていた。今は幽霊のように消え入りそうだ──そのままの言葉が、歌詞の中心にある。

成長や時間の経過によって失われた「無敵だと思っていた若さ」への郷愁が滲み出る。

「すべては時と共に過ぎ去る」と知りながら、それでも「あの頃に戻りたい」と願う。その矛盾を、この曲は責めない。

崖の縁に立って、その価値があったのかと問いかける中盤の瞬間は、アルバムの中で最も内省的な場面のひとつだ。変化した自分を受け入れようとしながら、まだ手放せていない──その宙吊りの感覚が綴られる。

アコースティックバージョンもまた、違った味わい深さが感じられる。


お気に入りの楽曲③「Slow It Down」

アルバム最後を飾る10曲目、タイトル曲。生楽器とサンプリング、テクスチャ豊かなバックボーカルが織りなす、アルバム全体のサウンドの集大成として機能する。

歌詞が描くのは、人生の速度に圧倒されそうになりながら、それでも立ち止まって内観しようとする心情だ。

「Can we slow it down?」という問いかけが繰り返される。急ぎすぎた日々の中で、自分を守るためにペースを落としたいという切実な願い。

曲の前半では、子供を持つ女性の姿を通して光を見出す瞬間が描かれ、日常の中に静かな神聖さを感じ取る視点が差し込まれる。

タイトル曲がアルバムの最後に置かれているのは、すべてを経た先で初めてこの問いかけが意味を持つからなのだろう。


『Slow It Down』は別れの記録であり、到着の記録でもある。

崩壊を処理し、自分自身に手を差し伸べる。自己矛盾を受け止める。生きづらくなった生活を静かに、そして確実に抜け出す──その行程が10曲に刻まれている。

完全自主制作という選択もまた、誰かの基準に委ねることをやめた宣言だ。Lexi Vegaはここで初めて、自分の音楽を自分で書き直した。


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