【新譜】名前のつかない感情を、音楽だけが知っている──Burgundy Red/SKAYA【ディスクレビュー11】
デンマーク出身のソロアーティスト、SKAYA。
音楽オーディション番組「Xファクター」への出演を経てシーンに登場し、他アーティストとのコラボレーションを重ねながら存在感を積み上げてきた。
彼女の奏でる音楽はドラマチック・ポップ──耳当たりがいいだけではなく、感情の起伏そのものをサウンドに落とし込む。
2026年にリリースされたデビューアルバム『Burgundy Red』は、赤色だけでなく、複雑な色の感情を扱った作品だ。
大胆でエネルギーに満ちた表現の中に、内側へ向かう視線が貫かれている。新人の一枚目とは思えない構築力で、ポップというフォーマットの中に深い内省を織り込んでいる。
まず取り上げたいのがファーストトラックの「Ways To Get Rid Of You」だ。2分22秒というコンパクトな尺の中に、執着と拒絶の心理が凝縮されている。
相手のドライブウェイに停めた車の中でひとり、目障りな相手の「精神分析」を繰り返し、どうやったら追い払えるかをずっと考えている──そんな、少し狂気じみた独白がそのまま歌詞になっている。
感情を整理しようとすればするほど、かえって深みにはまっていく。その矛盾の苦しさを、SKAYAはドラマチックなポップのフォーマットで、あっけないほど正直に歌う。
もう1曲は「Is There A Word For It」名前のつかない感情、という意味だ。
低音を強調したアコースティックギターの響きだけで始まり、最初のコーラスでバスドラムが力強く鳴り出す。
2回目のコーラスではスネアが加わり、音が層を重ねるにつれて感情も厚みを増していく。
「沈み込むような感覚」
「置いていかれているような焦燥」
「リセットしてしまいたい」
──ネガティブな言葉が繰り返されるが、結論は最後まで示されない。問いかけのみで曲は締め括られる。意図的に設けられた余白こそが、この曲の味わい深さを醸し出しているのではないだろうか?
胸の中にあるのに、言葉にできない感情がある。『Burgundy Red』は、心に抱くもどかしさに名前をつけようとせず、ドラマチックな音として差し出す一枚なのだ。
