真矢さんの訃報が届いた日、LUNA SEAの楽曲をしみじみと聴きつづけた
LUNA SEA──中学生のときにハマって以来、幾度となく聴いてきたバンドだ。これまでの人生で、真矢さんのパワフルで抜けの良いスネアの音を、天文学的な数だけ聴いてきた気がする。
訃報に触れた日、自然と部屋で彼らの曲を流していた。真矢さんへの追悼の言葉を探すより先に。いつも自分の人生のそばにあった音だからこそ、どの曲も「過去の自分の時間」とつながってしまう。
今日聴いた16の楽曲を、ここに並べてみよう。それぞれの曲への想いを綴りながら。
※レビューではメンバーの敬称を省略します。
STORM
少し複雑な想いのよぎる復活第一弾SONG
LUNA SEAは人気絶頂期だった97年に1年間の活動休止をしている。
「STORM」はその活動休止後第一弾シングルとして98年に発表された楽曲だ。
いかにも彼らのシングルらしい疾走感にあふれるナンバーで、曲自体は文句なしに好き。特にSUGIZOの熱量が込められたギターソロは、1年間彼らの復活を待ち望んだ自分の涙腺を刺激するほど感動的だった。
ただ、RYUICHIのヴォーカリゼーションの変化にショックを隠しきれなかった。カミソリのような切れ味を持つRYUICHIから、甘さと優しさが滲み出る“河村隆一”の歌声へ。複雑な想いを抱いたまま聴いていた一曲だった。
ANUBIS
『EDEN』の中でも異質な輝きを放つ、ダンサブルで鋭利な一曲
全体的に浮遊感に満ちた『EDEN』の中にあって、この曲の異物感は際立っている。神経をヒリつかせるギターカッティングとビート感が印象的で、ダンサブルなのに刺々しい。そのバランスが面白い。
今聴いても近未来感があるのがすごい。時代を少し先回りした音として残っている感じがする。
BELIEVE
耽美性と疾走感、そして浮遊感が美しく同居する一曲
彼らにとって記念すべきメジャーデビューシングル。他のシングルと比べても、かなり異質な存在だと思う。
耽美性と疾走感、そして『EDEN』特有の浮遊感が美しく同居していて、優雅で流麗なのに、ちゃんと前へ進む力がある。SUGIZOのヴァイオリンも絶妙で、LUNA SEAの“美”が凝縮されている一曲だ。
それまでの退廃的な黒いロック像とも、その後の骨太なシングル群とも少し違う。だからこそ当時は戸惑いもあったけれど、今聴くとこの時代の気高さが胸に迫る。
若い頃は“華やかさ”に惹かれていた曲が、今はバンドの結束や気高さまで響いてくる。追悼の文脈で聴くと、5人で鳴らす意味の大きさがより胸に迫った。
Claustrophobia
ダウナーな音がフィナーレへ向けて開ける
真矢のどっしりとしたドラムでスタートするヘヴィな楽曲。
「閉所恐怖症」を意味するClaustrophobia。言葉どおりに、閉塞感をまとったヴァースがじわじわと溜めをつくり、メロディアスなサビへ雪崩れ込む瞬間に一気に視界が開ける。
──このカタルシスは何度聴いても鳥肌もの。
尺の長さとサビの配置まで含めて、構成の妙を味わえる曲。
いわゆる“わかりやすい名曲”とは少し違うけれど、聴くほどに設計の巧さが沁みてくる。
TRUE BLUE
シンプルかつ、誰も届かない境地
シンプルなプレイとコード進行なのに、彼らの濃厚な世界観がしっかり広がる。何度聴いても飽きない、LUNA SEAの強さがよく出た曲だと思う。
パッと聴けば、疾走感のあるヴィジュアル系ロックという印象かもしれない。実際、後輩バンドに研究され、参照され尽くした一曲とも言える。でも、ノイズまみれのアウトロや閉塞感のある詞世界など、焼き増しでは届かない個性がある。
MVのギラついた殺気と色気も含めて、何度見ても惹き込まれる。
最後はやっぱりこの曲に戻りたくなる。LUNA SEAというバンドの強さを、改めて噛みしめる締めにふさわしい一曲だ。
FAKE
速いのに、攻撃性より無機質さが立つ異色曲
テンポはかなり速いのに、前のめりな攻撃性というより、機械的な無機質さが際立つ。
熱狂を煽るというより、少し引いた視点から熱狂を眺めているような冷たさがある。その“体温の低さ”がクセになる。
LUNA SEAの曲群の中でも、かなり独特なポジションの一曲だと思う。
DESIRE
狂おしい恋を唄う、漆黒の疾走ロック
SUGIZO作曲の疾走ロックナンバー。
暗闇の中を駆け抜けるようなダークさとスピード感が同居していて、とにかくスリリング。タイトな真矢のドラミングを堪能できる。
追い立てられるような焦燥感と、一聴では掴み切れない渋いメロ。でも繰り返し聴くほど身体に染み込み、いつの間にか中毒になる。そんな曲だと思う。
BPMの速さやメロディ展開のクセもあって、一回で全体像を掴むのは難しいかもしれない。そのぶん、楽器隊のキメやギターソロのかっこよさがじわじわ効いてくる。
IN SILENCE
穏やかな日の海のように
ディレイギター(やまびこみたいな音)とアコースティックギターが織りなす、癒しの空間。一言で言えばそんな曲だ。
優しげなアコギは穏やかな海。ディレイギターは海鳥の鳴き声。目を閉じると、そんなサウンドスケープが見えてくる。ディレイギターをここまで効果的に活かしている楽曲って、なかなかないんじゃないかと思っている。
気持ちよさそうに歌い上げるRYUICHIのヴォーカルも、開放感に満ちている。
それまでのLUNA SEAのシングルといえば、攻撃的かダークな曲が多かったので、透明感を全面に押し出したこの曲は当時かなり新鮮だった。
余談だけど、MVには幼い頃のウエンツ瑛士さんが出演している。
TONIGHT
98年の活動再開後、最もアグレッシブなナンバー
いかにもJの作品らしいパンキッシュな一曲。疾走感に満ちた真矢のドラミングが気持ちいい。
3分に満たない短尺、極限まで贅肉を削ぎ落としたシンプルな構成。このラフな突き抜け感は、それまでのLUNA SEAにはあまりなかったカラーだ。
RYUICHIのヴォーカルも熱を帯びていて、ロックヴォーカリスト然としたスタイルを取り戻したかのよう。
この曲を聴いたとき、これからのLUNA SEAにすごく期待した。
でも、その期待のすぐあとに終幕(解散)発表が来る。今聴くと、勢いの中に時間の切なさまで混ざって聞こえる。
Rain
隠れた名曲として語られがちな、ドラマのある一曲
オリジナルアルバム未収録ということもあってか、“隠れた名曲”として挙がることの多い曲。隠れたままでいるには惜しすぎるほどドラマティックだと思う。
裏打ちのリズムや地を這うようなベースが土台をつくり、後半に向けて広がりのある展開へと開いていく流れが見事。静かに始まって、気づけば大きな景色を見せられているタイプの曲だ。
gravity
アルペジオギターの美しさが引き立つミドルナンバー
冒頭からINORANの美しいアルペジオがサウンドを彩る、ダークなミドルナンバー。
INORANソロにも通じるアンビエントな要素をふんだんに取り入れつつ、骨太なリズム隊がしっかり支えるバランスが絶妙だ。
ベースラインも印象的。Aメロでは少ない音数でズシンと支え、サビでは歌うように動く。曲全体にメリハリを与えていて、聴けば聴くほど効いてくる。
アルバム『SHINE』期にあった迷いのようなものが吹っ切れて、ソロ活動後のRYUICHIのヴォーカリゼーションと調和するサウンドアプローチを見つけたのかな、と個人的には感じている。
Recall
“想起”というタイトルがそのまま音になったような曲
輪郭の曖昧な、ゆらゆら揺れるようなサウンドが美しい。タイトルどおり“想起”の感覚がそのまま音になっていて、夢うつつの中で大切な人を思い浮かべているような切なさがまっすぐ届く。
なんとなく今の気分に一番重なる曲だなと感じた。
こういう曲を聴くと、LUNA SEAは単に激しい/美しいでは括れないなと改めて思う。感情の輪郭そのものを音にしてしまうバンドだ。
MOTHER
神々しささえ感じるバラード曲
メジャー4枚目のアルバム『MOTHER』からリカットされた楽曲で、シングルとしては初のバラード。
ただ、単なるバラードで終わらないのがLUNA SEAらしいところで、アンビエントやプログレッシブロックの要素を含んだ難解な作りになっていて、何度聴いても飽きない。
美しいアルペジオで紡がれる、神々しさに満ちた一曲。アンビエントやポストロックにもつながるような癒しの響きがあり、LUNA SEAの懐の深さを感じる。
ギターソロではなく、SUGIZOのヴァイオリンソロをフィーチャーしているのも印象的。クラシカルなフレーズが、曲の神々しさをさらに押し上げている。作曲者INORANらしい淡々としたアコギのアルペジオも静かに効いている。
そしてこの曲はMVも素晴らしい。
曲単体でももちろん素晴らしいけれど、映像と合わせると神聖さがさらに増す。音と視覚が溶け合って、ひとつの祈りみたいに立ち上がる。
MOON
ディレイギターの余韻ごと、心を持っていかれる
ディレイギターの使い方がとにかく見事。
神々しさすら感じるスケール感があって、音の余韻ごと心を持っていかれる。
派手に感情を煽るというより、残響の中でじわじわ深く沈めてくる感じ。
LUNA SEAの“空間を鳴らす力”がよくわかる曲だと思う。
SELVES
静寂から混沌へ、宇宙的な広がりに飲み込まれる
ポストロック、プログレ的な要素が絡み合う、複雑で壮大な楽曲。真矢のレゲエ的なリズムアプローチも新鮮だった。
静寂を讃えるような厳粛な雰囲気で始まり、やがて混沌とした音の波に飲み込まれていく流れが圧巻だ。
宇宙的な広がりに身を委ねたくなる一曲。“曲を聴く”というより、“曲の中に飲み込まれていく”感覚がある。
END OF SORROW
緩急のある、表情豊かなロックナンバー
華やかなサビのインパクトと、緩急をつけたドラマチックな展開に心を鷲掴みにされる一曲。LUNA SEAのアグレッシブな側面がピークに向かっていく時期の熱量が、そのまま封じ込められているように感じる。
タイトルどおり、憂いを含んだメロディが少しずつポジティブなエネルギーへ変わっていく流れも見事。鮮やかなフィナーレまで含めて、何度聴いても惹き込まれる。
そして何よりSUGIZOのギターソロが素晴らしい。テクニックを誇示するというより、ロングトーンに感情を込めて“歌う”ように弾くスタイルが、この曲では特に光っている。
Precious...
パンキッシュな土台に、郷愁と創造力が鳴る
パンキッシュなサウンドを土台にしながら、美しいアルペジオと郷愁漂うメロディを重ねていく。その時点でかなり面白いのに、ちゃんと一曲として成立させてしまうのがすごい。
刺激的で独創性の高い音世界。バンドの音楽的バックグラウンドの豊かさが、そのまま創造力として鳴っているように感じる。
ROSIER
LUNA SEA随一のキラーチューン
彼らの楽曲の中でも、最も愛されている一曲だと思う。
後続のロックバンドに与えた影響の大きさでいっても、TRUE BLUEと並ぶ代表曲と言っていいはず。
でも、この曲のすごさは“影響力”だけじゃない。
ヒットチャート上位に食い込んだとは思えない毒気と殺気が、PVにもサウンドにもはっきり宿っている。
小さい頃に聴いたときは、「見てはいけないものを見ている感じ」があった。親に内緒でこっそり再生ボタンを押していた、あの妙な背徳感まで含めて忘れられない。
主張しまくるベース、噛み合いながら楽曲を彩るツインギター、そして脳天から腹に響いてくる真矢のドラム。全身で浴びるタイプの名曲だと思う。
これからも自分の人生でLUNA SEAを聴いていく
真矢さんの訃報が届いた日、たくさんLUNA SEAを聴いた。あれ聴きたい、これ聴きたいと心の赴くままに曲を選んでいた。
悲しみを埋めようという気持ちもあっただろうし、音の中にある確かなものに触れたかったからだと思う。
彼のドラムは、これからも再生ボタンを押すたびに鳴る。自分の命が続く限り、そのビートに身を委ねる日が何度でも来る。そう確信している。
