【BGM】川越・飯能・幸手、埼玉の夏の心ほどける散歩時間|Chill Lo-fi Hip-Hop 創作秘話
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真夏の埼玉を、ゆっくり歩いて旅するような一時間のチルいローファイ・ヒップホップ音楽作品を公開しました。
今回の舞台は、川越、飯能、幸手です。
同じ埼玉県内でも、川沿いの歴史ある町、深い緑に包まれた童話のような公園、広い空を望む夕暮れの堤防では、流れている時間の質がまったく異なります。
この三つの景色を、ただ並べるのではなく、一日の終わりへ向かって少しずつ心がほどけていく、一続きの散歩として構成しました。
川面に反射する光から始まり、木漏れ日の森を抜け、最後は茜色の空へ。
音楽を聴いているうちに、忙しかった日常が少しずつ遠ざかっていく。そんな感覚を目指した作品です。
埼玉を「静かな散歩の土地」として描く
埼玉というと、東京に近い住宅地や交通の要所という印象が先に浮かぶかもしれません。
一方で、少し歩く場所を変えるだけで、水辺、古い町並み、森、田園、堤防といった穏やかな景色が次々に現れます。
今回は、そうした埼玉の「生活圏のすぐそばに残る静けさ」に注目しました。
特別な観光旅行ではありません。
大きな目的も決めず、冷たいコーヒーを片手に、気になる道をゆっくり歩いてみる。遠くまで出かけなくても、いつもの日常から少しだけ離れられる。
この距離感こそ、埼玉を舞台にしたチルいローファイ・ヒップホップに合うのではないかと考えました。

川越・新河岸川、水面から始まる午後
最初の舞台は、川越を流れる新河岸川です。
川越には蔵造りの町並みや寺社など、よく知られた歴史的な風景があります。しかし今回描きたかったのは、その中心へ急いで向かうのではなく、少し手前の川沿いをゆっくり歩く時間でした。
柳の枝が風に揺れ、水面には夏の光が細かく反射します。
強い日差しの中でも、川から届く風にはわずかな涼しさがあります。歩みを止めるほどではないけれど、思わず川の方へ顔を向けたくなる。その小さな動きを、音の揺らぎとして表現しています。
前半の楽曲には「川越水鏡」「氷川風音」という名前を付けました。
水面にほどける午後、柳が揺れる季節、静かな川音、風待ちの午後。曲名には、風景そのものだけでなく、そこを歩く人の呼吸が少しずつ整っていく感覚も込めています。
川越の魅力は、歴史的な重厚さだけではありません。
町を囲む水辺や細い道には、観光地の華やかさとは異なる、静かな生活の時間が残っています。今回の始まりには、その穏やかさが必要でした。

飯能・森の中で時間を忘れる
川辺を離れ、次に向かうのは飯能市のトーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園です。
ここでは空気が大きく変わります。
木々に囲まれた散策路を歩くと、葉の間から落ちる光が地面にまだらな模様を作ります。その先には、北欧の物語から抜け出してきたような、不思議な形の建物が現れます。
ただし、今回の作品では、建物を目的地として見せるのではなく、歩いている途中にふと出会う風景として描きました。
足を止めて眺めたくなる。それでも、すぐには立ち止まらず、そのまま木陰を歩いていく。
その「少しだけ名残惜しい歩き方」が、この場面の核になっています。
楽曲名は「森の余白」と「木漏れ童話」です。
木漏れ日の記憶、緑のささやき、小さな童話、葉音の休日。川越でまだ少し残っていた日常の緊張が、森の中でゆっくり薄れていくような流れを意識しました。
飯能には、山や森がすぐ近くにありながら、どこか親しみやすい空気があります。
深い自然へ分け入るのではなく、安心して歩ける場所の中で、都市の時間感覚を手放していく。そうした柔らかな非日常が、この作品の中盤を支えています。

幸手・広い夕空へ向かう帰り道
最後の舞台は、幸手市の権現堂公園です。
ここでは視界が一気に開けます。
川越では水面を見つめ、飯能では木々に包まれていました。幸手では、遠くまで続く遊歩道と、その上に広がる夕空が主役になります。
昼間の熱が少しずつ地面から抜け、風が髪を揺らします。手に持ったコーヒーも、歩き始めた頃より少しぬるくなっています。
けれど、それは残念な変化ではありません。
一日が穏やかに終わりへ向かっていることを知らせる、小さな合図のように感じられます。
後半の曲には「権現夕空」「幸手帰路」と名付けました。
茜色の帰り道、一日の余白、黄昏の足音、やわらかな終幕、夜へ続く風。夕焼けを見て感動するというよりも、歩いているうちに自然と気持ちが静まっていくような終わり方を目指しています。
権現堂は花の名所として知られていますが、今回描いたのは、季節の象徴だけに頼らない堤防と遊歩道の広がりです。
長く延びる道と大きな空。それだけで、人は自分の内側にあった余計なものを少しずつ手放せるのかもしれません。

絵が生まれる小さなアトリエ
動画の中では、猫のいるアトリエで、ローファイちゃんが各地の風景を描いています。
今回も動きや仕草を見直し、これまでよりも制作中の気配が感じられるローファイちゃん2.0として登場しました。
ただ完成した絵を見せるのではなく、風景が一枚の作品になっていく時間そのものを、音楽と一緒に楽しめる構成にしています。
この記事には、動画内で描かれたイラストの完成図も掲載します。
同じ埼玉の夏でも、川越の水辺、飯能の木陰、幸手の夕空では、光の色も、風の質も、歩く人の気持ちも異なります。その違いを、音楽と絵の両方から感じていただければ嬉しいです。

歩くほど、夏が静かになっていく
今回の物語は、暑い夏の日を否定するものではありません。
強い日差しも、濃い緑も、蝉の声も、夕方まで残る熱も、その季節にしか出会えない大切な要素です。
ただ、その中を急がず歩くことで、暑さの奥にある風や水音、木陰の匂い、空の色の変化に気づくことができます。
川辺から森へ。森から夕暮れの堤防へ。
景色が変わるたびに、心の中の速度も少しずつ落ちていきます。
作業や勉強、読書、休憩の時間にはもちろん、何となく気持ちを整えたい夜にも、そっと流していただける作品になりました。
埼玉の何気ない夏の風景を歩くように、自分だけの一時間をお楽しみください。
※本シリーズは、日本各地の風景や季節感を音楽と文章で記録するプロジェクトです。
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