カブ50で戸隠神社五社巡り。大雨と濃霧と、隠された要石の話
カブ50で戸隠神社五社巡り。大雨と濃霧と、隠された要石の話
2025年シルバーウィーク
長野の戸隠神社に、カブ50で二泊三日。
総走行距離500km。ガス代1,514円。
判断を間違えたら、たぶん途中で引き返していた。
なぜ戸隠だったのか
他部署のデザイナーに勧められた。
「わたし戸隠神社大好きで!ぜひおすすめしたい!」
神社好き同士の会話から始まった計画だった。
そこから1年。
9月の連休に合わせて、ようやく実行に移した。
カブ50という選択
110にしない理由はシンプルで、まだ資金がない。
でも正直、今すぐ乗り換えたいとも思っていない。
今のカブは、よく走る。
内部の仕様は完全にわたし仕様にカスタムされていて、
一見ただのカブ50だけど、中身は別物だ。
出来の悪い子が、なおさら可愛い。

あの感覚に近い。
山道で全開にしても20km/hしか出ない。
それでも500km走れる。
ちなみに、このカブで和歌山県まで行ったこともある。
1,500円もあれば奈良くらいまでは届く。
燃費モンスターだ。
制約があるから、判断が磨かれる。
1日目|50km地点で土砂降り
群馬県に入ったあたりで、雲行きが怪しくなった。
ポツっときたと思ったら、一気に大雨。
もうすぐ道の駅だから、そこでカッパを着よう。
そう考えていたけど、間に合わなかった。
道の駅に着いた頃には、びしょ濡れ。
まだ50kmしか走っていないのに。
しかも着いたら、ほぼ晴れていた。
何だったんだ。

テンションだけが下がった。
引き返すことが頭をよぎった。
けど、1年前からの計画を無駄にしたくなかった。
これだけ晴れているし、走っていれば乾くだろう。
また走り出した。
出発から9時間で宿に到着。
2日目|標高1200m、体感5℃
戸隠神社は標高1200m。
平地より10℃前後寒い。
カッパ上下にウインドブレーカーを重ねて走った。
あとからAIに状況を説明して体感温度を聞いてみたら、
単純計算で5℃だったらしい。

中社に着いて、バイクを山道の脇に停めた。
準備をしていたら、新型のカブ110が通り過ぎた。
いいな、110。
そう思っていたら、転回してこちらに来た。
目が合ったので先制した。
「こんにちは!」
「どこから来はったんですか?」
「西東京です!」
「え、カブで?110?」
「50です!」
「50でここまで?そりゃすごいですわ!」
住まいは京都で、毎年この時期に仕事で長野に来ているらしい。
「110は峠も普通に登りますか?」
「ええ、最高ですわ!」
「50だと、この山道めいっぱい吹かしても20km/hくらいなんですよ…」
「ははは、そうなん!」
名前も知らない。
でもカブ主同士、一期一会で仲良くなれる。
奥社まで片道2km、16,000歩
最後の参拝は、奥社と九頭龍社。
鳥居をくぐって片道2kmの山道を歩く。
前半は緩やかな上り坂。
後半は少し息切れするほどの傾斜。
最後の300mくらいは大小の石で作られたガタガタの階段で、
一気に汗が吹き出した。
富士登山を思い出した。
しっかり歩けているのに杖を持っている人がチラホラいて、
ああ、こういう理由だったのか、と腑に落ちた。
杉の木が「ねじれ」ながら、何百年もかけて成長している。
人間の時間感覚では測れない、静かな力がそこにあった。
隠された要石
奥社のすぐ手前に、何も表示のない場所があった。
3m四方くらいの石の枠。
50cmほどの小上がりになっていて、
砂利で綺麗に整地されている。
柵があり、チェーンで入れないようになっている。
導線からも少し外れている。
一見、普通の景色。
でも、すっとよく観たら、なにかおかしい。

ピンと来た。
要石だ。「写真を見てほしい」
猛烈な速度で頭が回転したのだと思う。
直感と呼ぶには、少しだけ根拠がある。
伊勢神宮の外宮にも、何も看板が出ていない場所に要石があった。
みんな素通りしていたけど、小さく囲われた場所に、それはあった。
あえて人目にさらすことで隠す。
逆転の発想。日本人的思考だと思う。
戸隠神社の公表記録やネットを調べても、
奥社に要石があるという情報は見つからなかった。
だが、きっとある。
現場に来ないと分からないことがある。
わたしの後ろを歩いていた親子がその場所に来て、
「なんだろう?なんにもないね???」と言った。
「たぶん要石があるんだと思います。看板出てないけど。」
「?????????」
「要石ってご存知ないですか?映画のすずめの戸締まり、知ってますか?」
「はい!!!」
「あれです。」
「あああっ!」
大事なものを隠す技。
日本人は素晴らしいと思う。
3日目|深夜2:15、濃霧、視界10m
全然寝れなかった。
深夜2:15に走り始めた。
軽井沢のあたりで雨が降ってきた。
だんだん強くなり、結局、大雨。
しかも、ものすごい濃霧。
視界は10mくらいしかない。

高地だから寒い。
カッパで雨の侵入は防げていたけど、
5時頃の給油で立ち上がった瞬間、隙間から雨が入った。
パンツまで、びしょ濡れ。
寒くて凍えそうだった。
6:30頃、通りに面したコインランドリーを見つけた。
ラッキー。ついてる。

誰も来なかったので、中で乾かしていたら、
黒い帽子をかぶったオシャレな老爺が来た。
「今日は昨日より涼しくていいよな!」
「わたし、昨日まで長野の戸隠にいたんですよ。西東京まで帰るところです。」
「え?このバイク、にいちゃんのか?」
「はい、50ccです。」
「50で行けるんだ!うちのムコは、7半に乗ってるんだけど。」
名前も知らない。
でも、こういう会話が記憶に残る。
「榛名神社にも来てよ!」と言ってくれた。
今度、日帰りで行こうかな。
昼の11:30に帰宅。
シャワーを浴びて、後片付けをして、
14時から19時まで昼寝。
一晩中走って、一晩寝ていないから、
一回分、寝た。
カブ50は、制約そのもの
今回の往復、ハイオクのガス代1,514円。
ガソリン量8L。
峠が多い長野はガス代がかかるけど、
平地メインなら1,500円で奈良まで届く計算になる。
実際、このカブで和歌山県まで走ったこともある。
燃費モンスター。
大雨でもよく走ってくれた。ありがとう。
カブ50は、制約そのものだ。
でも制約があるから、判断が磨かれる。
いつカッパを着るか。
いつ引き返すか。
いつ休むか。
いつ走り続けるか。
旅も、稽古も、仕事も、同じ構造をしている。
制約の中で設計する。
それが、わたしの旅の仕方だ。
Walk on.
