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【食】 私は何を考えながらかき氷を食べているのか(vol.1 旬と氷の質 編)

 ※書くの疲れたので執筆途中ですが公開します。

 僕は「ゴーラー」である。ゴーラーとは、かきゴーラーの略でかき氷愛好家のことを指す。僕は年間でおそらく30杯くらいは食べるのだけど、ゴーラーにしては少なく、200杯以上食べるような人もいる。だから、そういう人から見たら僕なんてゴーラーとは呼べないかもしれないが、食全般への興味ではきっと負けていない。今回はそんな僕がかき氷を食べにいく時/食べている時に何を考えているのかを解説していきたいと思う。

1.かき氷の「旬」

 かき氷には旬がある。先に断っておくが、夏ではない。確かに夏はかき氷を「おいしく感じられる」季節であることに疑いはないが、それは人間側のコンディションの問題である。旬というのは基本的に素材側のコンディションの問題だ。例えば、ブリの旬が11月〜2月とされているのはその時期に最も脂が乗るからだし、スイカの旬が7月とされているのはその時期に最も糖度が高くなるからである。かき氷の素材はもちろん氷だ。だから、かき氷の旬とは、正確に言えば「氷の旬」である。では、氷のコンディションが最も良くなる時期はいつなのか。
 それは当然、だ。品質の観点では夏場の高温・多湿よりも冬場の低温・低湿度が氷の食感が長く保たれる。また、輸送や保管の観点から見ても、夏の高温下では溶けが早まるため業者は温度管理に神経を使う。冬季は自然気温が低く保管しやすい利点があり、クオリティが保たれやすい。逆にいえば、夏に食べにいった時に、客に対して「ドア閉めてもらえますか」とお願いするような店は氷に対してこだわりを持っている可能性が高く、信頼できる
 また、詳しくは次の「どのような氷を使っているか」で述べるが、日光などでつくられる天然氷の生産は1~2月が最盛期で、この時期にゆっくりと育った氷は高密度で溶けにくく、おいしい氷になる。氷が溶けにくいということは、より薄く、微細に氷を削ることができるということだ。即ち、それがあのフワフワな食感につながっているのだ。しかし、夏場の繁忙期にとにかく売上を伸ばそうと冷凍庫で急速に氷をつくる店も中には存在し、やはりそのような氷ではクオリティが下がり、「シャリシャリ感」が強くなってしまう。
 したがって、気温や湿度が低い12~2月頃は、かき氷の食感を最も良く味わえる環境であると言えるゴーラーは一年中かき氷を食べるが、夏場は「質が落ちる」+「激混み」で活動を抑える人も多い。ゴーラーにとって、メインの活動シーズンは夏の繁忙期が終わってからなのだ。また、美味しいかき氷を食べるという以外の目的として、冬場のかき氷屋を買い支えるという目的もある。みなさんも、冬も営業してくれている本気のかき氷屋さんにいって、冬のかき氷を味わってほしい。

2.どのような氷を使っているか

 前章でも述べたが、氷の質はかき氷の質に直結する。シャリシャリ感を抑えてフワフワの氷にするためには、どのような氷を使っているか、というポイントがとても大切になる。正直、かき氷の質の半分以上はこれで決まると言っても過言ではないと思う。
 「どのような氷を使っているか」という問いを分解すると、「どのような水で氷をつくっているか」「どのように氷をつくっているか」という問いをさらに抽出することができるので、以下では主にこの観点から説明していきたい。

かき氷に適した水質

 かき氷の滑らかさや味に影響を与えているのは、氷をつくる時に使用した水の純度・ミネラル含有量である。雑味の少ない水ほど氷が細かく削れ、口中でスッと溶ける。つまり、(当たり前だが)水道水はカルキが含まれていて適していないし、ミネラルウォーターであっても硬度が高いと適していないということになる。
 逆に向いているのは、軟水のミネラルウォーターと蒸留水だ。日本で売られているミネラルウォーターのほとんどは軟水であり、天然氷をつくっている蔵元で使用されるのもその地域の超軟水であることが多い。ちなみに、なぜ日本は超軟水なのか解説すると(急に地理の先生っぽい)、

①日本は火山によって形成され、花崗岩・安山岩・玄武岩などが多く、石灰岩(炭酸塩岩)が少ない。つまり、硬水の主成分であるCaとMgを供給しにくい母岩が主流なので軟水となる。(ただし、沖縄や山口、北九州、埼玉北部などの石灰岩地質の地域では硬度が高くなる=かき氷向きではない)
②山地と海との距離が短く、河川が短いうえに河床勾配が急であるため、水が岩と触れている時間が短いので、CaやMgが水に溶け出す余地が小さいため軟水となる。
③年間降水量が多いため、表流水の比率が高く、ダム・湖などの表流水由来の水源が使われることが多い。そのため、長く伏流して鉱物を溶かした“硬い”地下水の寄与が相対的に小さい。

という三点が主な要因として挙げられる。この日本列島はフワフワかき氷を生み出すのに世界屈指の好条件を備えていると言ってもよい。下の図を見ると関東ではやや硬度が高くなっているが、日光などの山地で作られる天然氷には超軟水が使われおり、水の成分面で、天然氷はやはりかき氷に適しているということになる。

全国水質マップ(出典:クリタック株式会社HP)

(※ちなみに関東で硬度が高くなるのは、利根川水系が日本で最大の流域面積を誇り、長い流路になりがちであることや途中に石灰岩質の地域があること、人口密集地で農工業・都市由来の溶存物が混入しやすいことなどが理由)

 しかし、個人的に天然氷を超えるポテンシャルを持っていると思うのが、純水(蒸留水・逆浸透水)で作られた氷である蒸留とは、液体を沸騰させ、その蒸気を冷却して回収することで、イオンや多くの不純物が取り除かれた液体だけを抽出する方法のことだ。蒸留水とはつまり、純粋なH2Oに極力近づけた水のことである。自然由来の軟水ミネラルウォーターよりもさらに純度を高めることが可能だ。また、蒸留だけでなく、逆浸透(Reverse Osmosis)という方法を用いて純水に近い水を作ることもできる。ROは半透膜に給水側>透過側の圧力をかけ、水分子だけを通し、イオン・有機物・微粒子・微生物をはじく方法だ。

ウミネコパーラーのかき氷
↑石川県金沢市にあるウミネコパーラーさんは
蒸留水を使用していて氷の質が抜群に良い

 この二つの方法で精製された純水を凍らせて作った氷は、理論上、最もかき氷に適していると言える。しかし、これを使ったからといって質の高いかき氷になるかというとそうではない。より大切なのはもう一つの観点「どのように氷をつくったか」である。

不純物を取り除く凍らせ方

 フワフワのかき氷を作る時には、削ったときに氷が薄片(表現が難しいが、リボン状あるいは繊維っぽい感じ)になることが望ましい。これを達成するためには、まず、どこを削っても同じ条件になるように氷のコンディションを整えなければならない。前述のようなかき氷に適した水(超軟水や純水)を使ったとしても、凍らせ方によっては空気が入り込んで気泡ができ、均一な削り(と再現性)に支障をきたすことになる。
 では、どのようにつくられた氷を使用するべきなのだろうか。結論から言えば、上から下方向にゆっくりと時間をかけて凍らせ、空気や不純物を取り除いて作られた氷である。
 氷は凍るときに溶けていた気体やミネラルを結晶内に取り込みにくい性質がある。だから凍結の“前線”はそれらを押しやりながら進む。例えば、家庭の製氷器でつくる一般的な氷は全ての方向から冷気が当てられることによって先に全ての表面が「氷の壁」を形成してしまい、中に空気が閉じ込められる。この原理からすれば、つまり、表面の「氷の壁」をどの方向にコントロールしていくかが空気や不純物を取り除くための肝となることはお分かりいただけるだろう。

家庭用冷凍庫の製氷器でつくられた氷
空気や不純物が中心部に閉じ込められている

 そのため、少なくとも36〜48時間程度の時間をかけて上面からゆっくりと凍らせ、底に押しやられた不純物を切り取ってブロックにすることが求められる。

まとめ

 今回の結論としては
①かき氷は冬にこそ食べる
②蒸留水などの純水に近い水でつくられた氷、もしくは硬度の低い水でつくられた天然氷を使用しているか
③天然氷でない場合、上面からゆっくりと凍らせた氷を使用しているか
というポイントに注目して僕はかき氷を食べている。とはいえ、②,③に関しては店が情報を公開していなければ知ることはできない。しかし、そこはゴーラーの腕の見せ所で、官能評価で推測することによって楽しんだりしているのである。
 冬はかき氷店の売り上げがどうしても落ちるので、みなさんもこれからの季節に食べにいって買い支えてください。

 次回は「削り」と「シロップ」、「エスプーマ」をテーマに書くつもりです。(書くモチベがあれば)

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