なぜあのプロジェクトは炎上しかけたのか ― PM実録と初期兆候の見抜き方
※本記事は第1章「その違和感は、炎上の前触れ」の内容です。
炎上は突然起きるものではなく、必ず違和感から始まります。
本章ではその違和感がどのように現れ、どう見極めるべきかを整理します。
違和感はあった
あの時点ではまだ炎上していなかった。
タスクも一応、前には進んでいた。
新しいメンバーで進めているプロジェクト。
最初から完璧に噛み合うわけがない。
「仕方ない」
そう思っていた。
嚙み合っていない意見を丁寧にフォローし、なんとか着地点を探してすり合わせていく。
それが私の役割だった。
しかし――
月末までにやります、と聞いていた成果物が出てこない。
「いつまでにできそうですか?」という問いには、
「2週間後なら」という回答だった。
その2週間後。
まだ出てこない。
「できているところまでいいので、見せてください」
ただ、それでも出てこなかった。
1on1で状況を聞いた。
しかし、返ってきたのは他人への不満。

「あのPMはマネジャー向きじゃない」
「(他の)リーダーと合わない」
これでは「できているところまでいいので、見せてください」に対する答えになっていない。いま私が確認したかったのは、
「何につまずいているのか」
「どこまでできて、何ができていないのか」
であって、その輪郭が全く見えない。
これはまずい…
私はこれまで、いくつものしんどいプロジェクトを乗り越えてきた。
炎上したプロジェクトもあった。
その過程で、
「リスクセンサー」のようなものが身に付いた。
今回、そのセンサーが静かに反応していた。
このとき私が感じていたのは、
「遅れている」という事実ではなく、
「コントロールできていない」という違和感。
そのリーダーは、過去にシステムを商品化した実績があるという話だった。
しかし、現時点の成果物と進行状況を見る限り、商品化を任せるリーダーとして必要な役割を果たせているとは判断できなかった。
成果物を見える状態にする。
課題を整理し、担当者と期限を決める。
会議で意思決定を進める。
要件の認識をそろえ、メンバーが動ける仕組みを作る。
これらもリーダーの重要な仕事だ。
当時の体制と残された期間を考えると、このままリーダーを任せ続けるのは難しいと判断。
上司に相談した。
「このままでは厳しいです。リーダー交代の検討が必要です。」
話は聞いてもらえた。
しかし、結論は
「交代はせず、皆を巻き込んで継続的に改善していこう」
だった。
リーダークラスは慢性的に不足している。
簡単には交代できない。
それは理解していたが、
さすがにこのまま継続は厳しい
が、本音だ。
経験上、わかる。本人の意識や行動が変わるのを待つだけでは、残された期間内での改善は難しい。構造を変えない限り、静かに悪化する。
当初、私は他のプロジェクトを掛け持ちしており、このプロジェクトは「サポート」という立ち位置だった。しかし、この日を境に、私は「主体者」として動くことにした。
交代しない=今いるメンバーで立て直すのであれば、私の行動を変えるしかない。会議の設計、期限管理、要件の整理まで踏み込み、自分がプロジェクトを前に進める主体者として、仕組みをつくることにした。
録画された定例会を見直した。
そこには、はっきりと兆候が映っていた。
アジェンダがない
資料の投影なし
口頭のみの議論
「これ、どう思いますか?」という曖昧な問い
10名以上参加しているのに発言者は3~4名
結論が曖昧(いつ・誰が・何をやるのか不明確)
会議をしたのに、何も決まっていない。
要件定義も曖昧だった。
このシステムが「誰に、どう使われるのか」がぼんやりしていた。
結果、見当違いな設計が進んでいた。
しかも、それが発覚したのはかなり後のレビュー。
修正コストは、重い。
そして、追い打ち。
来月から参画者が一気に増える。
統制は、さらに難しくなる。
私は確信した。
「これはまずい」
あのとき、まだ間に合った。
期限、会議、要件の整理に踏み込んだことで、見えなかった進捗や課題が表面化し、チームは優先順位をつけて動ける状態へ少しずつ変わっていった。
しかし、多くの炎上プロジェクトは、
この「まだ間に合う段階」を見過ごしてしまう。
では、何をもって「初期兆候」と判断するのか。
重要なのは、兆候があるかどうかではない。
それが放置してよいものか、即対応すべきものかを見極めることだ。
私が実際に確認した5つの初期兆候と、プロジェクトを立て直すために取った3つのアクションを紹介する。
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プロジェクトの炎上は、ある日突然起きるものではありません。 多くの場合、その前に「違和感」があります。 そして問題点は、問題が起きることで…
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