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受給者証が持ち出せなくても、サービスは止まらない。令和8年熊本地震で障害のある人と家族が今使える制度

避難所で、車の中で、半分片づいた家で。「受給者証を持ち出せなかった」「いつもの事業所が止まった」「補装具が壊れた」——令和8年熊本地震の発生から4日目、障害のある家族との避難生活でこうした困りごとを抱えている方と、その隣にいる方に向けて書きます。

先に結論です。

受給者証が手元になくても、サービスも医療も止まらないように、国から特例の通知が出ています。

ただし、特例は黙っていても適用されません。窓口や事業所に「伝えた人」から使えます。この記事では、困りごとごとに「何が使えるか」「どこに言えばいいか」を1つずつ書きます。

私は岐阜県在住の社会福祉士です。今回の地震では被災していません。現地の様子を体験として語ることはできないので、この記事は厚生労働省などの公表資料を1つずつ確認しながら書きました。根拠は記事の最後にまとめてあります。

もう1つ、大事な注意です。特例には「熊本県向け」のものと「全国向け」のものがあります。 避難先が県外の方に関係するため、項目ごとに書き分けます。

「受給者証を持ち出せなかった」——提示できなくても受けられる

ヘルパーや通所などの障害福祉サービス

厚生労働省は7月29日、「被災により受給者証を紛失等した場合に、受給者証を提示しなくても障害福祉サービス等を受けることができる」旨を各都道府県等に周知したと公表しています。

この通知の本文はまだ厚労省サイトに掲載されておらず、詳しい手続きは確認できていません。まずは、いつも使っている事業所か、避難先の市町村の障害福祉窓口に「受給者証が持ち出せなかった」とそのまま伝えてください。

病院と薬(自立支援医療)——こちらは全国有効

自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療)を使っている方。受給者証を提示できなくても、医療機関の窓口で「自立支援医療を受けている」と申し出て、氏名・生年月日・住所を確認してもらえば受診できます(7月28日付の厚労省事務連絡)。国の通知は3つを区別せず「自立支援医療」として扱っています。

この通知の宛先は全国の都道府県です。つまり、今回の地震で被災した方が県外に避難した先の病院でも、同じ扱いです。 緊急の場合は、受給者証に書かれていない医療機関でも受診できるとされています(後から支給認定の変更手続きをすることになります)。

窓口で話が通じないこともあります。医療機関の受付がこの事務連絡をまだ把握していない場合です。そのときは記事末尾のURLをその場で見せるか、避難先の都道府県の担当課に電話してみてください。

「いつもの事業所が止まった」「避難先でサービスを使いたい」

次の特例は、7月28日付で国から熊本県に宛てて出されたものです(熊本県から県内の市町村・事業所へ伝えられます)。県外に避難した場合にどう扱われるかは、この通知には書かれていません。避難先でサービスが必要なときは、避難先の市町村の障害福祉窓口に「熊本から避難してきた」と伝えて相談してください。

  • 定員がいっぱいでも受け入れてよい。 入所施設・短期入所(ショートステイ)・生活介護などの日中活動・宿泊型自立訓練・グループホーム(共同生活援助)について、定員を超えて受け入れても報酬を減らさない特例が出ています

  • 避難所にヘルパーが来られる。 居宅介護・重度訪問介護は「避難所等の避難先を居宅とみなしてサービス提供して差し支えない」と明記されています

  • 短期入所中に自宅が被災した場合、 施設での受け入れを基本に、必要なら短期入所の継続も可能とされています

「定員オーバーだから」「自宅じゃないから」で諦める前に、事業所か相談支援専門員に聞いてみてください。

県外や別の市町村に避難した場合の支給決定の取扱いも、7月29日に各都道府県等へ周知されたと公表されています。こちらも通知本文が未掲載のため、詳しくは避難先の市町村の障害福祉窓口へ

「利用料を払えるか不安」——減免は市区町村の判断でできる

被災して利用者負担が難しい場合、市区町村の判断により、障害福祉サービスの利用者負担を減免できるとされています(障害者総合支援法第31条/7月28日付事務連絡・熊本県宛て)。自立支援医療や補装具費の負担軽減も、同じ事務連絡に記載があります。窓口で相談するときは、この条文番号を出すと話が早いことがあります。

自動的に安くなるわけではありません。市区町村の判断です。窓口で被災の状況を伝えて相談してください。

熊本市は7月29日時点の被災者支援制度の冊子に、自立支援医療・補装具・日常生活用具の自己負担額の減額の項目を載せています(熊本市民が対象)。お住まいの市町村にも、これから同様の案内が出る可能性があります。

「補装具が壊れた」——「まだ耐用年数内だから」では止まらない

車いす、装具、補聴器。ふだんの補装具費支給には耐用年数の考え方がありますが、国は熊本県宛ての事務連絡で次のように示しています。

「必要な場合には耐用年数等の如何にかかわらず支給・給付して差し支えありません」

「前回作ってからまだ数年しか経っていない」という理由では止まらない、ということです。日常生活用具も同じ扱いです。窓口は市町村の障害福祉担当です。

熊本市は「地震による家屋倒壊などにより使用できなくなった福祉用具の再給付」を案内しています。案内では、身体障がい者手帳と破損状況が分かる写真などが必要書類とされています(熊本市民が対象)。

「特別児童扶養手当の書類がそろわない」——全国向けの特例

7月29日付で、特別児童扶養手当等について、提出書類の省略や所得制限の特例の取扱いが各都道府県・指定都市宛てに発出されています。宛先は全国です。

書類が流された・持ち出せなかったという状態でも、手続きを諦めずに窓口へ相談してください。

避難所がつらい。誰に言えばいい?

福祉避難所は開設されています(8月3日時点)。

熊本市は特別養護老人ホーム2施設で受け入れており、3世帯4名が移っています。氷川町は氷川町公民館に開設しています。宇城市・宇土市など他の自治体については、公表資料では確認できていません。

この記事の公開時点(7月31日)では「確認できていない」と書いていましたが、誤りでした。福祉避難所の開設は、県や厚生労働省の資料ではなく市町村の災害対策本部会議資料に載るため、見落としていました。お詫びして訂正します。

ただし、福祉避難所へ直接避難できるかどうかは、事前に個別避難計画があるかどうかで決まります。移りたい場合は、避難所の運営スタッフか、市町村の障害福祉担当に「福祉避難所に移れないか」と聞いてください。

今いる避難所で過ごすのがつらい場合は、避難所の運営スタッフや巡回している保健師に、困りごとをそのまま伝えてください。 音や光の刺激がつらい、パニックになってしまう、医療的ケアがある、トイレが使えない——「わがままかな」と飲み込みがちなことほど、伝えてほしい内容です。個別の配慮や場所の調整は、伝わって初めて動き出します。

「伝えてください」と言われても、伝えるのが難しいとき

ここまで何度も「伝えてください」と書きました。でも、それがいちばん難しい人がいます。言葉で説明するのが苦手な方、失語のある方、混乱すると話せなくなる方。避難所という場所は、その難しさが最大になる場所です。

3つだけ、書いておきます。

  • 本人が伝えられないときは、家族や支援者が代わりに伝えて構いません。 委任状のようなものは要りません

  • 口で言うのが難しければ、紙に書いて渡してください。 書くのは3つで足ります。①何が困るか ②何があると助かるか ③飲んでいる薬

  • 熊本県が、避難所で使える資料を公開しています。 「障がい者の特性に応じた平時・災害時の対応指針」と「コミュニケーション手段の例(コミュニケーションボードを含む)」です。職員に見せられる形になっています

同じページに、耳の聞こえない・聞こえにくい方に向けて、24時間・無償で代理電話や遠隔手話を提供している民間事業者のサービスの案内も載っています。詳しい使い方はそのページから確認してください。

熊本県「障がいのある方への支援について」

https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/39/274727.html

どこに言えばいいか、まとめ

  • 受給者証がない・サービスを使いたい・利用料の減免・補装具 → 市町村の障害福祉窓口(避難先の市町村でも相談を)

  • 自立支援医療の受診 → 医療機関の窓口で申し出(全国どこの避難先でも)

  • 特別児童扶養手当 → 市町村・都道府県の窓口

  • いつもの事業所・相談支援専門員も、制度への橋渡し役です

災害時の特例は、知って、伝えた人から使えます。この記事が、避難生活のどこかで「それ、聞いてみよう」につながればと思います。近くに障害のあるご家族と避難している方がいたら、この情報を伝えてもらえたらうれしいです。

情報は7月31日朝の時点で公表されている資料に基づいています。今後、通知の追加や自治体独自の案内が出る可能性があります。最新の情報は市町村・熊本県・厚生労働省の公式発表で確認してください。


根拠にした公表資料(2026年7月31日朝に再確認)

  • 厚生労働省「災害救助法の適用を踏まえた被災した要援護障害者等への対応について」(令和8年7月28日事務連絡・熊本県宛て)

https://www.mhlw.go.jp/content/001730376.pdf

  • 厚生労働省「令和8年熊本地震に係る公費負担医療の取扱いについて」(令和8年7月28日事務連絡・全国の都道府県宛て)

https://www.mhlw.go.jp/content/001730329.pdf

  • 厚生労働省 被害報「熊本を震源とする地震について」第18報(特別児童扶養手当等の書類省略・所得制限の特例/障害福祉サービスの各特例の記載あり)

https://www.mhlw.go.jp/content/001731255.pdf

  • 熊本市「令和8年熊本地震被災者支援制度」(7月29日時点・第1版)

https://www.city.kumamoto.jp/common/upload/freearea/21_5408_up_g0ndsh5w.pdf

(この記事は岐阜県在住の社会福祉士が、公表資料を確認して書いています。今回の地震では被災していません。誤りに気づかれた方はコメントで教えてください。すぐ直します。)

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