4.私の日記【友達の行方】
物を捨てられない人ほど、大切にもできない。
私の母がそうだった。
貧しくて、何だって抱え込んだ。
納屋に沢山の荷物を残したまま、それは永遠に開けられることはないだろう。
今もこの瞬間、姉のなのか、妹のなのか知らないが、その人と、その子供たちと、時間を過ごしているのだと思う。
私に新しい家族ができた時、それまでの私の家族は、私の未来を大切にしてはくれなかった。
何かを守るため、みたいな綺麗事を言う気力もなくて、私は煩わしいものを捨てる事にした。
私の両手はあまり大きくはないから、割り切る事ができる選択をした。
今頃、みんな何をしているんだろう?
確認しようと思えばできる事だけど、私はそれをしないんだ。
時々、妻の実家に行く事がある。
妻の父、妻の母、そしてその周りにいる人たちは、いつも私と子供達を歓迎してくれた。
私は思う。
なんで私はこんな感じで、妻のところはあんな感じなのだろうな?
って。
いつか子供達が大きくなった時、
『パパのママやパパはどこにいるの?』
と聞かれる日が来るかもしれない。
その時の私は、何て答えるんだろうな?
私はその答えを、その時の私に任せようと思ってる。
積み重ねてきたものは人を豊かにする。
ただ、大切にしてこなかったのなら、それはただの荷物になる。
私は、何を残して去るのだろう?
今ここにあるものくらいは、大切にしていきたい。
私のためでもあるし、子供たちだったり、妻だったり、私の家族を大切にしてくれる人たちのためでもある。
午前中、子供たちを保育園に送っていった後、私は何もする気にならなくて、部屋でテレビを見ていた。
雪の中へ、の制作を進めようとも考えたけど、私はテレビを消して、自宅の2階へ上がっていく。
階段は危険なので、子供達が大きくなるまで使わない事にしている。
代わりに、すぐには使わない荷物の置き場になっているのだ。
そこにはキングダムデスというボードゲームの黒い箱があって、私はその蓋を開けて、中にある物を改めた。
死んだ友達が残していった遺品だ。
時々カビが生えたりしないように、換気をしてやっている。
私は一人で、38歳にして亡くなった親友のあだ名を呼ぶ。
私は今でも時々いたたまれなくなって、その名前を呼んでみる事がある。
いつも返事はないし、そういうものだと理解してる。
大切に思うことは簡単だ。
みんな、私を大切には思ってくれていたはずだった。
でも、大切に思うことは簡単でも、大切にする事は難しい。
好む好まざるに関わらず、時間に背中を押されて、私は未来に進んでいく。
その中で、本当に大切にしたいものだけを選びとっていく事の難しさを、改めて認識するんだ。
箱の前で少しだけ物思いに耽ったあと、私はまた箱を元に戻して、2階を後にした。
彼のご両親は私に親切だったが、私は彼の葬式にも参列できなかった。
彼の死を知った時、彼は既に火葬が済んでおり、骨だけになってたからだ。
どうしてこんなに悲しい事ばかり考えてしまうのかな?
みんなは私に優しいのに。
あいつはどこにいってしまったんだろう。
なんで、もういないんだろう?
あの黒い箱を、2階の窓から投げ捨ててみようかな?
と一瞬だけ思ったけど、やっぱりそんな事できるはずがないと思ったから、やめた。
