2才はまーだだよしか言わない。
2才の次女が熱を出した。
数日前から透明な鼻水を流しており、つい先日あたりから、色が黄色に変わり始めた。
朝、妻は次女を抱っこした時、何かおかしいと感じたそうだ。
しかし体温計で熱を測っても、36.8℃の平熱。
半日後に次女が熱を出したとの連絡が入り、私はは仕事を早く切り上げ、保育園に迎えにいった。
かかりつけの小児科へいくと、随分と年齢を重ねられた女性の先生がいらっしゃって、娘のからだを触り、口の中を見る。
先生は、
『これは高い熱が出ますねぇ。』
と言った。
いつも検査しない。
でも、いつも診断が外れた事もない。
処方箋をもらって、家に帰った。
不思議な事に最初のうちは、どんなに高熱が出ていても平然と走り回る。
幼い子はみんなそうなのだろうか?
私は明日の仕事を休む旨を連絡した。
翌朝。
朝の段階で、熱は37.3℃。
仕事へ行く妻を見送る。
長女を保育園に送迎し、同時に、次女を休ませる旨を伝えた。
そして私は、次女と二人になる。
なかなかこんな事もないと思ったけれど、病気で休んでいるので、呑気にリラックスしてもいられない。
ご飯を食べさせて、お薬を飲ませる。
次女が、
『ブルーイいいの!』
と言うので、ブルーイを見せる。
ブルーイを見終わった後は、
『お外いいのに!』
と言う。
でも私は、
『2才ちゃんはお熱があるから、お外は行けないんだよ。』
と言って却下した。
むくれた様子だったが、少し経って気が済んだのか、今度は、
『かくれんぼするー。』
と言い出した。
私は、
『いいよー、じゃあ10数えるから、隠れてきて!』
と言いながら、洗濯物を干し始めた。
『いーち、にーい、さーん……』
『もういいかーい?』
『まーだだよ』
『いーち、にーい、さーん…』
しかし、何度
『もういいかい?』
を尋ねても、
『まーだだよ!』
が繰り返されるばかり。
おそらく、ルールを理解できていない。
次女は、毛布の中から顔を出して、何か期待に満ちたニコニコ顔で、ずーっとこちらを見てる。
丸見えだ。
頭も尻も隠れてない。
それでも本人は隠れている気分で、多分私が、
『みーつけた!』
をするのを待ってるんだろう。
別に今、正しいことを覚える必要はない。
私はそう思って、
『2才ちゃんみーつけた!』
と言うと、
『きゃはは!』
と笑って、
『もういっかいやるの!』
と言った。
何度繰り返しても永遠に、
『まーだだよ。』
そして毎回、同じ場所で、顔とお尻まるだしで、背中に毛布をかけただけ。
それなのに、何度でも笑ってみせた。
平和なのは、午前中だけだった。
お昼ご飯のあとは、いよいよ体力を消耗した様子で、みるみる不機嫌になっていく。
何をしても泣く。
何もしなくても泣く。
抱っこ、と言うので抱き上げると、降りる、と言って泣く。
降ろすと、更に激しく泣く。
熱を測ると40.3℃だ。
こんな小さい身体で、訳もわからず苦しい思いを強いられたとあれば、熱も相まって、混乱するのも仕方のない事と思った。
望むままに、抱き上げて、おろして、抱っこしたまま歩いたり。
外に行きたいと言うので、ほんの少しだけお散歩をする。
しかし、日が差す。
風も吹く。
家に入ると、また激しく泣く。
手足を触ると、熱い。
これは熱が下がるサインだ。
私は坐薬を投与して、薬が効くのを待った。
30分ほど経って、少し楽になったのか。
次女は、眠りはじめた。
布団に寝かせて、私も横になる。
身体が熱い。
布団をかけた方が良いか?
剥がした方が良いか?
少し考えるが、坐薬に解熱作用を期待している今は、熱を逃した方が良い。
そう判断して、お腹にだけ布団をかけて、足と胸は出しておく。
荒い呼吸。
赤い顔。
汗にじっとりと濡れた、細やかな髪の毛。
私も眠ろうと思ったのだけど、結局眠れないから、隣で横になった。
あと、どのくらいで楽になるのかな?
ふと、さっきのかくれんぼを思い出す。
『もういいかーい?』
と私は聞く。
『もういいよー!』
が返ってくればいいなと思ったけど、娘はなにも答えなくて、寝息をたて、深く眠り続けた。
