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【中編】2024年個人的BEST30曲

さて前編に引き続き、今回は中編です。

【ルール】
・1アーティスト1曲とする
・2023年以前の曲でも収録されているアルバムが2024年なら選んでもOK

相変わらずHIPHOPが多めです。
よろしくお願いいたします。


11  『The World Is Yours』 - OMA


今日は何にも考えたくないなと思う日はYoutubeで誰かの DJプレイをダラダラ2時間くらい流している。

このOMAというバンドはそんなことしてる時におすすめで出てきた。

HIPHOPの名曲をカバーしているバンドで、選曲も刺さるチョイスが多くてトラックの良さを再認識することができる。

『The World Is Yours 』はNasの代表曲でクラシック中のクラシックだ。

カバー曲がBEST30曲に入るのは珍しいが2024年は作業用BGMとして自分の中では大活躍だった。


12 『素晴らしき世界 (feat. Kuro) 』 - SIGEMARU

SIGEMARUというラッパーはこの曲で初めて知った。これもApple musicのおすすめからだったと思う。

まずトラックが難しい。容易にラップ出来ないと思うがSIGEMARUのラップを聴いていると確かにこの乗せ方しか無いよなという納得感を味わえる。

抽象度の高いリリックだが、ところどころで刺さる部分がある。

事実は純粋だが時に単純じゃない
こうすれば ああすれば まぁ勝手にすれば?
時代とのズレが焦らせるなら
わざわざすがる程のものじゃないといつか気づくさ

普遍的な価値観だと思っていたものは実はそんなことはなく固執するものではなかったという気づき。

取り巻く環境  上っ面
うすっぺらな奴もペラペラなことはそうは変わんねーんじゃね?
悟りなんて楽に開けるか
足るを知ったかぶんじゃない

世界という大きなテーマを扱うと妙に達観したリリックになりそうなものだが、悟りなんて簡単には開けない。「足るを知ったかぶんじゃない」とても良い言葉だと思う。

普遍的な感情 ここに声録り残す

普遍的なのは今ここにいる自分の感情のみで、それを声にして録音して残す、それだけは確かに出来ることだ。 …みたいな意味だろうと解釈した。

かたや『The World Is Yours 』という曲が名曲とされる一方で「悟ってんじゃねーよ!」と冷や水を浴びせてくるのもHIPHOPだ。


13  『実感 』- Lucky Kilimanjaro

よく聴く曲ランクを見た時に何故か上位にいた曲。なんか癖になるとしか言いようがないんだけど好き。HIPHOPじゃなくなると途端に語彙力がなくなる(笑)

「踊れない夜は」がサビで繰り返し出てくるので勝手に「踊れない夜は」という曲名だと勘違いしていた。

限られた時間のなかで見つけた、没頭できる"何か"に、熱中できる"瞬間"を大切にしたいという思いが込められているそうでMV観るとなんとなく言いたい事はわかる。

必要ない日々も 愛の過程だと信じている

この辺りの歌詞が刺さる。

あと「100年」というワードも多く出る。
永遠を表現する時とかによく100年とか100万回とか、デカい数字を出す曲はなんとなくダサいと感じていて、そういうのを聴くと自分の中のBLEACHの愛染が「あまり強い言葉を遣うなよ 弱く見えるぞ」と囁く。

でもこの曲の「100年」は愛染の顔がチラつかない。なんなんでしょうね。



14『ガラスの京都』- Daichi Yamamoto & JJJ


『ガラスの京都』は蟲として生まれ変わった自分が故郷の京都に帰ってきて昔を思い出すという発想からできた曲だ。

アルバムがリリースされたころのインタビューでそのことに言及している。

このインタビューを読んでから曲に対する理解度が上がったので興味ある人は是非。(この曲に関しては結構後半の方に載ってます。)

HIPHOPにおいて地元を歌うという行為は大きな意味がある。所謂「レペゼン」というやつだ。

自分がどこから来た何者なのかを表現することから始まったRepresent(レペゼン)の文化は地元を盛り上げるため、自分を育てた地元に感謝するため、地元に残る仲間のため、様々な意図で表現されてきた。今や日本のHIPHOPにおいてもかなり浸透した価値観だと思う。

ただ、Daichi Yamamotoにとって地元の京都を表現することは「レペゼン」のそれとは違った。

人間の自分の視点ではなく蟲に生まれ変わった自分の視点で京都を俯瞰し昔を思い出している。

瓦屋根から飛び立った盆地
丸い車が増えたな 最近
8月の雨 羽で跳ね返して
団地の花壇で一休みして
手を洗った水溜りあくびして
土の中から木に登り脱皮して
君の肩で一休み

蟲視点のリリックの中でも特に「丸い車が増えたな 最近」にとても感動した。他のリリックは何となく自分が蟲だったら頑張れば想像できそうなものだが車を空から見下ろした蟲の視点になり今の車の形が昔に比べ丸くなったと表現するなんてどうやったら思いつくのか。

蟲視点以外のリリックは前世の人間の頃の思い出なのだがこれも「レペゼン」的な発想とは遠く離れているように思う。

夏の湿度に脳みそ ふやかされ
近所のやつには陰口たたかれ
骨の芯まで冷えて伸びた冬
あの道なりにたたずむ小さな駄菓子屋
今じゃ空き家になって悲しみは 憂う心になった
親の金を抜いて買った遊戯王
ダチに奪われて 金の重みを知る20歳
万引きを疑われたりして
指を刺されてポカっと空いた穴 言葉に

良い思い出や地元を誇る要素が全くない。それなのにリリックの中には

そんな京都を何処かで愛している

と入る。

この「何処かで」の部分が味噌だと思う。
辛い思い出も自分の中で昇華し、その経験を含めて今の自分があると認識できたから「愛している」という言葉が出たのだろう。しかし、真正面から京都を受け入れているようには思えない。「何処かで」がないとこの複雑な感情のニュアンスは表現できないだろう。

もう、国語の教科書に載せませんかね?

あとこれは完全に筆者の深読みだが「人間が人間の感情を持ったまま蟲になる」という設定がカフカの『変身』を思い出させる。

カフカの『変身』はある日突然人間から蟲になってしまった主人公の話だ。蟲になった主人公は家族に疎ましく思われ厄介者扱いされ最後には干からびて死んでしまう。

これは現実で差別を受けた人や病気になった人が疎外され孤独になることと、疎外する側の人間の冷酷さを描いた寓話だ。

Daichi Yamamotoは日本人の父とジャマイカ人の母親を持ち、「黒人」にカテゴライズされ差別を受けてきたそうだ。

「近所のやつには陰口たたかれ」というのはそういうことだったのかもしれない。

「蟲」というテーマで筆者の頭の中で勝手につながったDaichi Yamamoto『ガラスの京都』とカフカの『変身』について、自分が文学部の大学生に戻れたらゼミで嬉々として発表してたんだろうなあ。



15  『Pointless 5 (feat. PUNPEE) 』 - スチャダラパー & STUTS


pointless は形容詞で、「目的がなく、無駄な時間をかけること」や「無意味な」「つかみどころのない」という意味。

そういうpointlessな5人という意味なんだろうけどみんな謙虚すぎやしないか?

PUNPEEもSTUTSも死ぬほど売れっ子だし、スチャダラパー に関してはもう売れる売れないとかじゃないHIPHOP界の重鎮だ。

Boseのverseに出てくるネガティブな言葉

国道沿いのやるせない風景
挫けそうになる
散文的なイメージ
繋がりっこない点と点
重なりっこない世界線
バズる気配はないがヒマがある
霞を喰らい
職業欄はラッパーと言い切れず など と加える性

いやいや自分はラッパーだと言い切ってくれよ。
あなたが言い切らなかったら他のラッパーみんな何者でもねーよ。

と思うところはあるが、現在のBose自身のことを言っているというよりは音楽で食っていくことの不安定さみたいな全体的な話なのかもしれない。

あとのANIのverseもネガティブ要素がある。

駄゛から来た種属

日本語ラップが駄洒落と揶揄された過去を言っているのだろう。

作ったジョイント5万本

スチャダラパーで草ネタって珍しくないか?全部を知っているわけではないのでなんとも言えないが。

ちょいちょいスチャダラパーのセルフサンプリングも入るがそこを拾うとまた長くなるので自重。そこはSTUTSのスチャダラパーへのリスペクトなんだろう。

あとPUNPEEは当たり前のように良いhook作る。

マルチエンディングの向こうに

偶然の連続でできた現状以外のマルチエンディングがあったかもね。という意味なのか。

それにしてもみんな謙虚というか自虐的というか…

まあそういうの大好物なんですけどね。


16 『スペル』 - 折笠悠太

よく聴く曲ランクを見た時に気づいたら上位にいた曲。(2回目)

折笠悠太に関して、とにかくここ数年高い評価を受けているのは認識していて確かに個性的な声の持ち主だなぁと思っていた。

序盤はゆったりと始まる。

静かに 静かに 忍び寄る夜に
上り框のうえで ワインを注ごう

上り框という言葉が入ることでなんとなくイメージが湧いてくる。ちょっと昔の家なんだろうな。久しぶりに実家に帰って来た息子と家族がワインを呑んでいるイメージが浮かぶ。

瞳の奥に降り注ぐ
手懐けられぬ風景が
私を私たらしめる
思いがけぬ強さで

手懐けられぬ風景ってなんかいい表現だな。
過去の思い出が現在の自分を形作っているということなんだろうか。

一人で行くなら
心配だからね
最寄りの駅までは
見届けさせてね

これは息子を送る親の視点なのか。

序盤はゆったりとした感じだが段々と音数が増えてきて壮大なクライマックスになっていく。精神的にグラグラしてる時に聴いたら後半で泣く。

あとこの曲はMVが良い。
ドキュメント映画みたいで曲に対する理解度が増すので是非。



17  『MOUNTAIN D』 - Dos Monos

2023年の夏にヒップホップクルーとしての活動を終了し、2024年3月から第二期を始動宣言。ロックバンドになって帰ってきたDos Monosの最新アルバム『Dos Atomos』の2曲目。

『MOUNTAIN D』 はアルバムの中でも個人的にはわかりやすい曲だと思っているが正月に実家の母親に聴かせたら頭の上に?が3つくらい出てた。

うん、まあそりゃそうか。

歌詞は全体通してよくわからん。

穿つ天 培養土捨て
太陽のうえ
只管 High up in the sky, I fly again

サビのフロウが気持ち良くて縦ノリでぶち上がる。あと後ろで聴こえる名前のわからない楽器がいいアクセントになっている。なんだっけこれ?
オスマン帝国の行進曲みたいな…


これか?知ってる人がいたら教えて欲しい。

個人的に面白いところ

生前退位も 3years ago
イザナギノミコト亡き後
リザードン覚える かえんほうしゃ
わざマシーンは増えても
所詮子供騙しのテク AからZ
BALENCIAGAが増えても
増えない愛とか勇気とかセロトニン
ドーパミンだけが友達
アンパンチ飛ぶ 前後のPEACE
だが、バイキンが笑うラストシーン

これ抜粋でなく一連の流れだから面白い。
BALENCIAGAが増えても愛とか勇気とかセロトニンは増えない。
これ結構な皮肉だな。

アルバム通してぶっ飛んだ内容なので気になる人は是非。


18 『Rolling Stone』 - VaVa


イントロ聴いた瞬間、あれ?これなんだっけ聴き覚えがあるぞと思ったらSkypeの着信音だった。

現在34歳の筆者としては大学生の頃によくSkypeを使っていたのでとても懐かしい。こういうサンプリングセンス最高。VaVaはほぼ同世代なので前から勝手に親近感を感じている。

前編のSPARTAのところで触れたオートチューン問題(問題ではない)だがVaVaは②のnerd系だと勝手に思っているので好き。

君が思うより 人 君 見てねぇー
君が思うより 君は君を見てねぇー
無駄も無駄に集まれば正解
よく人は言う 『そんなんくーだらない 無駄』
じゃあその『くーだらない 無駄』で無駄を埋めようぜ

脱力した感じで優しい言葉をかけてくれるところが好き。我ながらチョロいと言わざるを得ない。

あと個人的な話だが、ジャケットになっている護国寺インターの前を昔よく新卒で勤めた会社の営業車で通っていたのでとても懐かしい気持ちになった。




19 『聖徳太子』 - 水曜日のカンパネラ

シングルとしてのリリースは2023年だがこの曲が収録されているアルバム『POP DELIVERY』は2024年リリースなのでルール的にはセーフということで。

ポップでかわいい曲なんだけど低音がドカンドカン響いててテンション上がる。

詩羽ちゃん歌上手いなぁ。
他のレビューで頑張ったので語彙力無くなってしまった。

もうあれよ。
Don't think, Feel.

LIVEでのゆるーいダンスが可愛いので貼っときます。



20  『The Light』 - NF Zessho, KAKKY & ENDRUN


もうイントロから良い。勝利確定。(2回目)
ENDRUNのトラックのボコンボコン響くキックとベースが好きでこの曲以外のトラックでも2024年は大変楽しませてもらった。SILENT KILLA JOINTとのアルバムもいいトラックが多かったので気になる人は是非。

NF Zesshoに関して、正直そこまで注目していなかったがコンスタントにいい曲を出しているイメージでこの『The Lihgt』はモロに好みだった。

リリックの内容としては死を迎える時までラップし続けてやるという覚悟とか信念を表現している。

あるだけのカードから 捻り出すWord
無いものは無い 腹を決めて超える不安
いつかこの世を去る それまではRap
道中で会う同じようなやつをピックアップして
また抗う卑怯なシステム
霧を払う Shure へ God Bless
Can you feel the light?

hookの前半はケツで踏んでアクセントをつけてしっかりリリックを伝え、後半から食い気味に「してまた抗うシステム」からリズムが変わるのが気持ちいい。

KAKKYのverseでは最後の「上がらない曲は飛ばしてまえ」にうんうんと頷いた。

あと細かいところで好きなのが最初の方の「俺対俺の根比べ」のところ。「根比べ」onuae で踏みたいから次の小節のケツで「ボンクラ」onua の後にエイ!って言ってeを意地でも追加するところ。

わかる。もうそこまできたら綺麗に踏みたいよね。

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中編は以上です。
後編はたぶん来週になると思います。


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