【家電修理記録3】三度、安定化電源
久しぶりに家電修理です。
今回の修理依頼物
HPやnoteで無償修理の募集をしているのですが、今回もnoteの記事を見て頂いた知らない方から依頼を受けました。
しかも、またまた安定化電源。3回目です。
今回は150Wのスイッチング電源で、パッと見ためは大手メーカの製品と同じ形です。

安定化電源専門という訳ではないので、他の家電にも挑戦したい今日この頃w
症状
1.出力電圧はつまみの回転に応じほぼ正常に出力されている。(動画の右側のLED表示が電圧で、左が電流)
2.電圧と電流の表示が全く間違っている。電圧は少しマシで、6~7V程度からは正常になるが、電流は流れていないのにも関わらず結構な電流が流れていると表示される。
分解開始
蓋を外して、分解した全体はこんな感じ。

写真右が空冷ファンやコンセント側の背面で、左がボリュームや表示パネルのある全面です。
ファンの真ん前に大きなヒートシンクが2つあり、ここにスイッチングデバイスが張り付いています。
スイッチング電源ということもあり、かなりすっきりとした構成です。半導体だけは一流メーカのものを使っていて、それ以外は割安に調達できるメーカのもののようでした。このような部品選定もメイドインチャイナの工夫なんでしょうね。
症状から推測すると、安定化電源としての基本機能は壊れてなさそう。LED表示も数字のみが表示される(L、A、dといった本来表示されるべきではない表示は一切表示されない)ため、LEDの駆動回路や数字表示を作り出すための回路も壊れてはなさそう。
単に表示がおかしいので、電圧や電流を検出して表示部に渡す部分か、検知した電圧値などを表示するための情報に変換するまでの回路が故障しているのだろうと予想。
なぜ、電圧は途中から正常な値を表示するのか?
依頼主さんから最初に症状を聞いた際から、ずっと疑問だったのが途中から電圧値の表示が正常になるという点。
もし、電圧や電流を検知する部分が故障していると、途中から正常になることなんてまずありえないのに、途中から正常ってどういうことなのか?
幸いなことに、この電源の基板はシルク表示(R1(抵抗の1番目)などと書いてある白い文字)が充実していました。
シルク表示から簡単に推測できたのですが、パネルの基板には電源用にプラスマイナスの線が1組と、出力すべき電圧、電流の情報用の線が1組の2つの線がありました。
もし、この線のどちらかに異常があると、電源本体側のどこかの故障で、異常がなければ表示パネル側のどこかの故障と切り分けられそうです。
パネルに電源を供給している線には常に約10Vがかかっており、特に異常はなさそうです。
電圧情報を伝える線も電源の出力と完全に同期しており、異常はなさそうです。
ということは、表示パネル自体の異常ってことになりそうです。
表示パネルの動作
表示パネルは10Vの電源で駆動し、電圧を負の電圧の形で受け取ると、その値をプラスマイナス逆にした正の値として表示する仕組みになっていました。
更に調べると、メインの電源から受け取った負の電圧をオペアンプで1/20倍の反転増幅したのち、CPUのアナログ入力に正の電圧で入れると、20倍の値が表示されるということが分かりました。
故障の原因はほぼ特定
CPUのアナログ入力を注意深く監視して、LEDの表示と比べると完全に一致していました。つまり、CPUのアナログ入力から先のLED表示までの部分は壊れていないことになります。
メインの電源から受け取った負の電圧をオペアンプで反転増幅しているところで、計算と合わないおかしな動きをしていることが分かり、ここが誤表示を起こしている原因になっていました。
じゃ、オペアンプを交換するか!と思ったのですが、ここで電流計の方を見て、あることに気づきました。

電圧計と電流計が表示パネルで全くといっていいほど同じ回路構成になっているのです。もしオペアンプなら電圧計側も電流計側どちらも故障ということになります。そんなことあるか?と疑い、さらに真因を調べることに。
故障の真因を特定
オペアンプで反転増幅回路を組んで、負の入力に対して、正の出力を出すためにはプラスマイナスの両方の電源が不可欠です。電源を調べると、正側の電圧が約+5Vだったのに対し、負側の電圧が-1.35Vとかなりアンバランスでした。なお、この正負の電圧は電圧計側にも電流計側にも共通して使用しています。
電圧と電流の表示が双方ともに異常だということは、共通している電源の異常(今回は特に負電圧の方)の可能性が高いのではと推測しました。

反転増幅回路で正負の電源電圧値がアンバランスではダメということはないのですが、普通は正負の電圧をそろえることが多いです。
そもそも表示パネルには+10Vの電源しか来ていないので、負電圧を表示パネル基板のどこかで作っているはずです。その電圧が意図的に-1.35Vなら、オペアンプの故障でほぼ確定ですが、負電源生成回路が故障している可能性もあります。
負電源はチャージポンプ回路で作られていました。7660という名機で、この基板ではインターシル社(現在はルネサステクノロジー社)のチャージポンプが使ってありました。
チャージポンプ回路は、与えた電圧の正負逆の電圧が作られます。チャージポンプには+5Vが印可されているので、‐5Vが正しい出力値となります。しかし、負の出力は-1.35V。これはチャージポンプの動作として明らかに異常です。
負電圧発生回路である、チャージポンプICかその周辺素子の故障で間違いなさそうです。今回、電圧表示が中途半端に正常に動いたのは負側の電圧が十分にないのが原因だったようです。
新品に交換
7660というか、このタイプのチャージポンプはこれ以外に存在するのかと思えるほど有名なICなので、入手は簡単です。
実は今回もアナログデバイセズ社のICL7660を注文したつもりでしたが、誤発注したようで、マキシム社のICが届いたくらい、各社からコンパチ品が出ています
電流計の異常のことはとりあえず気にすることなく、チャージポンプを新品に交換したところ。。。
結果、無事動きました♬
負電圧は少し低めに出ましたが、メータ表示の調整用の可変抵抗を調整して、正常な値が出るようにしておきました。
電流も10Ωのセメント抵抗を取り付けて動作確認しました。電圧表示の1/10の電流表示となり、電流計の方も正常動作確認の完了です。
最後に
今回の修理にかかった部品費ですが、チャージポンプICのみなので100円程度でした。トップ画面の写真が購入した部品ですが、送料の関係で5個セットでしか購入できなかったので、無駄に高い部品を買ったことにはなります。汎用品なので、いつか使うこともあるでしょう。
個人的には、昔はよく使ったチャージポンプICですが、故障したことは一度もありませんでした。回路の奥の方に配置するので、一度組み込むと静電気等で壊れることはないと思いますが、なぜ故障したのか不思議です。
送料は往復とも依頼主さんにご負担頂いていますが、修理自体は無償対応できました!!
ご依頼、ありがとうございました😊
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