「つながる旅」へ。私が考える「AT型観光」というスタイル
これからの旅は、何よりも「つながる」ことが大切になるのかもしれません。
旅を通じて地域や人々とふれあい、文化や自然に没入する。
そうして新しい価値観に出会い、ゆるやかにつながる感覚を持てたとき、これまでの日常が、もしかしたら人生さえも、少しだけ面白く感じられるようになるのではないか・・・
最近、私はそんな旅をガイドとして届けていけたらと考えるようになりました。
ここ数年、観光業界では「アドベンチャートラベル(AT)」という言葉を耳にする機会が本当に増え、「ATツアーに対応できるガイドが足りない」といった声もよく聞きます。
私自身は2016年、アラスカで行われた会議(ATWS)に参加して以来、ATに関わってきました。当時、日本ではATという概念が紹介されたばかりで、さまざまな意見や議論が飛び交い、正直なところ私自身も翻弄され、模索し続けてきました。
それでも「ATスルーガイド」として現場に立ち、多くのゲストと向き合う中で、次第に見えてきたものがあります。
アドベンチャートラベルと聞くと、多くの人は山の縦走や長距離サイクリングなど、ハードなアクティビティ中心の旅を思い浮かべがちです。しかし実際には、数キロのハイキング、のんびりとしたサイクリング(ポタリング)、カヌー、料理体験や文化体験といった「ソフトアドベンチャー」の需要も高く、ガイドする機会は多くあります。
特に日本では「Culture(文化)」の要素が欠かせません。多くの旅行者は、日本人の自然観やその背景にある文化・価値観を感じたい、知りたいと願っています。
ここで重要なのは、自然や体験はあくまでその手段であるということです。
自然の中を歩いたり、文化体験を通じて人々と交流し、その営みや土地の歴史、文化、価値観にふれ、理解を深めることこそが旅の核心なのではないかと感じています。
こうしたツアーに関わっていると、講演や勉強会・座談会などでよく
「ATとはこうあるべき」
「このツアーはATじゃない!」
「ストーリーはどこなんだ!」
といった声をいただきます。
しかし私は、こうした「AT」の定義に縛られすぎることに少し違和感を覚えています。
「AT」や「アドベンチャー」という言葉だけが一人歩きしているのではないかと。
そして、現場で多くのゲストと接する中で、次第にこう考えるようになりました。
ATは「何をするか」ではなく、「どう旅をするか」「何を大切にするか」という、“旅の価値観”の一つなのだと。
そしてガイドとは、まさにその価値観を伝え、ゲストと地域・文化・自然をつなぐ人、そのつながりをそっと後押しする人だと。
旅の目的や楽しみ方は、かつてよりずっと多様になってきています。
団体旅行に加え、個人旅行や地域密着型の旅が増え、SNSや口コミで得た情報をもとに「自分にとって価値ある体験」を求める人が増加。
さらに、「たくさん消費する旅」から「未来につながる旅」へと、価値の置き方も変わりつつあります。
現場では次のような傾向が顕著です。
・その土地にじっくり滞在し、深く味わう旅を好む人が増えている
・環境に配慮し、低負荷な移動や行動を選ぶ人が増えている
・地元の人や文化との交流を求め、地域にお金や時間を還元したいと考える旅人が増えている
・旅を通じ、地域や文化、自然へのリスペクトを深めようとする人が増えている
こうした旅人を受け入れる旅を、私は「AT型」の旅と呼びたいと考えています。厳密に定義づけるつもりはありませんが、アドベンチャートラベル(AT)の基本コンセプトから生まれたので、現時点ではそう呼んでいます。
つまり、それは人・文化・自然・地域がゆるやかにつながる旅です。
おそらく、これは従来の「アドベンチャートラベル」の定義には当てはまらない部分もあるでしょう。
しかし、私がATに携わる中で次第に生まれてきた考えであり、旅をとらえる新たな視点です。そして当然のことながら、ガイディングのあり方や向き合い方も、この気づきによって大きく変わってきました。
こうしたAT型の旅は、単なる「個人の満足」にとどまらず、地域社会にもポジティブな影響をもたらしていると実感しています。
観光客が価値を感じることで、地域の人々自身も自分たちの文化や自然に誇りを持てる。
そんな好循環を、私は現場で間近に見てきました。
ゲストだけでなく、地域も、ガイドも笑顔になる旅。
こうした旅のスタイルに共感する人は着実に増えており、「AT型観光」はこれからの時代のスタンダードの一つになっていく(もうなっている)、と思っています。
ガイドや講師として、自分の考えを言葉にしてみることはとても大切だ感じ、こうして書きました。
まだまだ変化の途中ですが、この問いを胸に、これからもガイド業やゲスト、旅と向き合っていきたいと思います。
いつか皆さんと、こうしたことについて語り合える日がきたらうれしいです。
