『吉田修一論』(左右社)のご紹介
1.「文學界」掲載の「吉田修一論」を改稿して、「国宝」を含め長崎を舞台にした作品を批評した本です
『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』は、「文學界」(文藝春秋)掲載の3つの原稿を元に、吉田修一作品について論じた本です。帯文は、「僕は長崎に生れていなかったら小説は書いてないかもしれないですね」という吉田修一さんのインタビューの一節を、ご許諾を頂き、使わせて頂きました。
下の「文學界」の目次の冒頭の「立ち読み」の部分で、この本の書き出しの部分を読むことができます。この号では、表紙でもご紹介を頂きました。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/bungakukai1704.htm

『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』は、「文學界」の原稿に大幅に加筆・修正をして、「国宝」を含め、長崎を舞台にした吉田修一作品について論じています。文芸誌の原稿ともひと味違った内容に仕上がっていると思います。
吉田修一さんは、私にとって長崎南高校の先輩にあたる人で、生まれ育った場所がほぼ同じということもあり、「ネイティブ」らしい視点から論を展開しています。
以前にも「文學界」には「10年代の入り口で 文學界2010」という特集で、長めの批評文を寄稿していましたが、今回は更に長く、前編・後編の合計で約420枚の分量がありました。
https://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/bungakukai1009.htm

2. 本のデザインは元町・中華街駅のコンセプトデザインを担当した松田行正氏と杉本聖士氏です
書籍の『吉田修一論』は、赤とピンクを基調とした松田行正氏と杉本聖士氏の本のデザインが素晴らしいです。赤とピンクの表紙は、この本の内容に馴染んでいると感じています。
紅白の色で出されていた『国宝』とも色合いが似ていて、嬉しい限りです。336ページですので、それなりに厚みがあり、読み応えのある内容に仕上がっていると思いますので、ご関心の向く方は、ぜひご一読頂ければ幸いです。

『吉田修一論』は『国宝』と同じ月に出版されたこともあり、書店によっては「20冊」の電話注文がありました。驚いた担当編集者が「吉田修一さんが書いた本ではないですが、大丈夫しょうか?」と念のため確認したところ、「間違いないです」とご回答を頂いたそうです(ありがたい話です)。いくつかの大型書店では、『国宝』と並べて面陳列して頂き、大変ありがたかったです。
「文學界」に「吉田修一論」を掲載頂いた時は、吉田修一さんが芥川賞の選考委員に史上最年少で就任された頃で、『国宝』が朝日新聞に連載された頃から、吉田さんの小説の評価は一段、高まっていました。
映画「国宝」の大ヒットは、李相日監督の演出の手腕もさることながら、作家・吉田修一の実績の積み重ねの上で生まれたものだと私は考えています。
なお映画「国宝」については、批評家の宇野常寛さんと映画評論家の森直人さんと座談会を行っています。
映画『国宝』は歌舞伎を「殺した」のか? 吉田修一&李相日監督の到達点を語り尽くす
https://www.youtube.com/watch?v=Y_q0gmNy7vY&t=1504s

3. 本の目次と概要も読めます 「吉田修一作品の舞台マップ」も収録されています
版元の左右社のホームページで、本の概要が紹介されていますので、下に引用します。
現代の「悪」を描き、誰もが抱える「寂しさ」に触れる吉田作品の魅力を解き明かす吉田修一ファン必携の1冊。
『パレード』から『悪人』、そして『国宝』までほぼ全作品を網羅。もの哀しさと可笑しさを合わせ持つ土地「長崎」から、吉田作品が描く「悪」と「感情」を照らし出す。現代の「悪」を描き、誰もが抱える「寂しさ」に触れる吉田作品の魅力を解き明かす吉田修一ファン必携の1冊。
97年デビュー後、山本周五郎賞、芥川賞という全く違うタイプの文学賞を受賞。
大衆文学と純文学を自由に行き来し、代表作『悪人』、『怒り』はミリオンセラーとなる。
映像化でも興行収入は19億を超え、ジャンルを問わず文学ファンを魅了し続ける。
風土/長崎/酒屋/父性/母性の不在/ブルーカラー/ヤンキー/成熟と喪失/嘘/ヨイトマケの唄/長崎南高校/訛り/疑似家族の親密さ/男女別の秩序/原風景/故郷喪失/悪/新宿/歌舞伎町/カズオ・イシグロ/没場所性 ほか
〈はじめにより〉
吉田修一の作品の大きな魅力の一つは、その多国籍的な人物の造形と、風景の描写にある。長崎を舞台にした作品の多さや、インタビューや対談の発言内容を踏まえると、吉田の多文化混交的な作風は、生まれ育った長崎で培われたものである考えるのが自然だろう。
作品の舞台としても、長崎を選択することの多い吉田修一にとって、生まれ育った場所はどのような意味を持ち、現代日本を代表する作家となった現在の作風にどのような影響を与えているのだろうか。
この本では吉田修一の作品の細やかな描写やインタビューの分析を基にして、作家の無意識に迫るような批評を試みたい。
『吉田修一論』については、AERA(朝日新聞出版)2018年11月12日号で、リブロの野上由人さんに、「書店員さんオススメの一冊/吉田作品を長崎という風土からとらえる」というタイトルで、ご紹介を頂きました。
週刊読書人(2019年2月15日 第3277号)で、陣野俊史氏(批評家・作家、立教大学特任教授)に『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』の書評を頂きました。
「反時代的な文芸批評 きわめて本質的な文学の「場所」へ」というタイトルで、吉田修一の作品を通して長崎という場所について批評することの意味について、同じ長崎出身の陣野氏らしい鋭い観点から、興味深い分析を頂きました。
図書新聞(第3379号 2018年12月8日)で、三輪太郎氏(作家・評論家、東海大学教授)に『吉田修一論 現代小説の風土と訛り』の論評を頂きました。
「ノイズは白昼夢の路地裏に生い立つ――思考を誘発する侮りがたい力」というタイトルで、拙著の要点について踏み込んだ分析を頂きました。読み応えのある内容で嬉しく拝読しました。
4. この本がきっかけとなり、吉田修一さんの『逃亡小説集』の文庫解説や映画「楽園」のパンフレット解説を寄稿しました
吉田修一さんの作品については、『現代文学風土記』(西日本新聞社)でも最多の7作品を取り上げています。この本の帯文も、吉田修一さんの了承を得て使用させて頂いたものです。「小説は場所への興味から始まる」(新潮社「波」より)。

また『吉田修一論』を書いたことをきっかけとして、吉田さんの作品について書評を書く機会が増えたり、映画「楽園」(原作は『犯罪小説集』)のパンフレットの解説や、『逃亡小説集』の解説を書かせて頂きました。
『吉田修一論』を買っていただくと、著者謹製「吉田修一作品の舞台マップ」もご覧いただけます。吉田氏や私が卒業した長崎南高校から、長崎の旧市街にかけて、隠れた名所や穴場が一覧できる内容です。
吉田修一作品に馴染みのない人にも、じっくりと読んで楽しめる内容となっていると思いますので、ぜひご一読頂ければ幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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