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僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード 第1話「出会い」【全10話】

あらすじ

心臓の病気で学校へ通えない少年は、ある日、ボロ雑巾のような老猫ニャンゴ君と出会う。孤独だった少年にとって、ニャンゴ君は初めての友達になった。

やがて満月の夜、老猫は少年の心に語りかける。「目を貸せ。俺が死んだら、この心臓をやる」。目の悪いニャンゴ君には、少年の目で見たい三つの景色があった。

取引が成立した瞬間、少年の意識はニャンゴ君の身体へ移る。猫の身体で街へ繰り出し、電車に乗り、少年はニャンゴ君とともに見たことのない世界へ駆け出していく。

その日から、止まっていた少年の世界が少しずつ動き出す。

🎧 サントラ小説
再生できる方は、本文と一緒にお楽しみください。


【僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード】
第1話
出会い

ある日、僕んちに新しい家族がやってきた。
汚れたボロ雑巾みたいに、ボサボサの大きな猫。

それは、ひと月ほど前の僕んちの会話。
僕は、何の気なしに「猫を飼ってみたいな」って、お母さんとお父さんの前で言ってしまった。

僕が想像していたのは、白くてフワフワの子猫だった。
でもお父さんは「子猫は飼うのが大変だから」とか言って、野良猫を保護している団体から保護猫を譲ってもらおうとしていた。

僕はその時点で、猫に興味がなくなった。

そんなとき、偶然にも僕んちの庭に、一匹の野良猫がやってきた。
タヌキみたいな姿のでっかい老猫。

窓越しに、その薄汚れた野良猫を僕は眺めていた。

お母さんがその猫にご飯をあげ始めると、次の日も、また次の日も、同じ時間に
そいつはご飯をもらいにやってきた。

するとお母さんが、
「お母さん、小さいころから長毛の猫を飼いたかったの」
って言い始めた。

野良猫は、お母さんにすり寄り、ずうずうしくも、すっかり気に入られてしまっていた。

あのボサボサの毛並みは「長毛種」なんだとか。

そのうちお父さんまで、
「キジトラ柄は、とても人懐こくて頭がいいんだよ」
って言い始めた。

あの薄汚れた雑巾みたいな色は「キジトラ柄」だって、お父さんが教えてくれた。

それから二人は、その猫がどこかの家の飼い猫じゃないことを確かめるために、自治体に問い合わせたりして――野良だと確定した。

野良猫は動物病院に連れて行かれ、検査とか虫の駆除とか、ワクチンを済ませた。らしい。
さらにペットサロンというところでシャンプーまでしてもらったとかで、とうとう僕んちの家の中にまで
そいつは上がり込んできた。

僕は心の中で反対した。
だって、デカすぎる。しかも年寄りだ。
ボサボサの雑巾が家の中に上がり込んできたんだ。だから、僕の第一印象は最強に最悪だった。

……でも。
サロン帰りの雑巾巨大猫は、僕と目が合うと、ボッサボサのしっぽをユッサユッサと振り上げた。
そして見た目とは裏腹に、子猫みたいにか細い声で鳴きながら、僕のほうへすり寄ってきたんだ。

一瞬、脳内に鳥肌が立った。
だって、猫が。
猫が。
僕をめがけて、歩いてくるなんて。
生まれて初めてだった。
だって、猫に限らず。僕はこれまで動物に好かれたことなんて一度もない。

半信半疑で、僕は雑巾模様の猫の喉仏をそっと撫でてみた。
ボサボサの毛は、想像を裏切るほどモッフモフで
――僕は一瞬で彼のとりこになった。

お父さんは彼に「ニャンゴ」という名前をつけた。

しばらくするとお母さんが、ニャンゴはアイドルみたいに可愛いから「ニャンゴスター」とか、彼に変なあだ名をつけた。
“星みたいに可愛い” って意味じゃない。“アイドルみたいな人気者“ って意味らしい。

ダサい。
いつの時代だよ。って喉まで込み上げた。

みんながそれぞれ好きなように彼に呼び名をつけていたから、僕も彼を「ニャンゴ君」と呼ぶことにした。

だってニャンゴ君は、ライオンみたいに立派なフカフカのえりあしを生やして、どんな猫よりも大きくて堂々としている。
そして何より、ニャンゴ君は僕より年上だった。人間に例えたら、お爺ちゃんだってパパが言っていた。
だから僕なりの敬意をこめて、彼に「君」をつけてみた。

ニャンゴ君は、僕の初めての友達になった。


お父さんとお母さんの部屋は二階にあって、僕の部屋は一階にある。
自慢じゃないけど、僕んちの中で一番広い部屋だ。

だからなのかは知らないけど、ニャンゴ君の運動のためのキャットタワーが、僕の部屋に設置されることになった。
キャットタワーには、ハンモックみたいな寝床までついている。

僕の部屋にニャンゴ君のねぐらと遊び場が押し付けられたことに対して、僕は特に何とも思わなかった。
嬉しいとか、嫌だとか、迷惑だとか――そういう「人間っぽい感情」をどちらも感じなかった。

けれど、キャットタワーが設置されてから、僕の気持ちは少しずつ変わっていった。

「キャットタワーが僕の部屋で良かった!」

そう思い始めたんだ。
それはとても不思議な気持ちだった。

ニャンゴ君は、鳥たちが鳴き始めると同時に目覚める。
そして僕の部屋の扉をうまいことこじ開けると、お母さんたちを起こしに二階へ行く。

朝ごはんを僕からはもらえないことを、彼は知っている。

キッチンで朝ごはんを終えると、ニャンゴ君は僕の部屋に戻ってくる。
僕が起きないようにと、お母さんが閉めてくれた扉を、「開けてくれ〜」とねだるように、モフモフの真っ黒な前足でせっせとこするのだ。

うるさく急かされる僕は仕方なくベッドから起き上がり、戸口を開ける。
するとニャンゴ君は「おはよう」とでも言うみたいに、喉をうまく使って、老猫とは思えない甲高い子猫のような声で鳴きながら足元にすり寄ってくる。

もう決まり事になった彼の日課。
いつまでもベッドから出てこない僕を叩き起こすという任務を遂行しながら、朝のご挨拶というわけだ。

その後ニャンゴ君はキャットタワーにのぼり、運動神経抜群の曲芸を披露してくれる。
これまた老猫とは思えない、とんでもない運動神経だ。

一瞬でタワーの上まで登って得意の「ニャンゴ・ポールダンス」を披露したかと思ったら、キャットタワーの一番高いところからジャンプして着地する。

人間に例えたら、三階建てのビルから飛び降りて着地するイメージだ。
ニャンゴ君にとっては、軽い食後の運動ってところなんだろう。

しばらくするとニャンゴ君は朝イチのうんこをする。僕がそのブツを片付けてキッチンのゴミ箱まで運ぶ。
だって放置すると、僕の部屋が臭くなるんだから仕方ない。

ニャンゴ君のうんこを片付けるのは最初すごく抵抗があったけれど、今は慣れたものだ。

僕が遅い朝食を終え部屋に戻ると、ニャンゴ君はキャットタワーの一番高い位置から、釣り上がった冷めた瞳を細め僕を見下ろしている。
僕が見上げると、ニャンゴ君は僕とは目が合わないようにプイッと顔をそむけて、あくびをする。

あの臭いうんこを片付けた僕を、知らんぷりというわけだ。

最初の頃は、なんでそんな態度を取るのか分からなかった。
でも「恥ずかしいんじゃない?」とお母さんに教えてもらってからは、合点がいった。

ニャンゴ君は、僕と同じ恥ずかしがり屋さんだった。

僕も知らんぷりをして再びベッドに入り、寝たふりをする。
しばらくするとニャンゴ君はキャットタワーから音もなく降りてきて、僕の足元でそっと丸くなり、眠り始める。

長毛種のニャンゴ君のしっぽは、タヌキのしっぽみたいに長くてフッサフサ。
でもよく見ると、先っぽだけ一箇所ポキッと折れ曲がっていて、お母さんが「鍵しっぽだよ」と教えてくれた。

面白いことに、ニャンゴ君が本当に眠っているとき、しっぽの先っぽは動かない。
でもタヌキ寝入りしているときは、折れ曲がった鍵の部分を不機嫌にウェイウェイと動かすのだ。

猫も僕たちと同じように、寝たふりをするらしい。

僕はそっと起き上がり、タヌキ寝入りするニャンゴ君をそっと撫でる。
ニャンゴ君の寝顔をよく見ると、鼻筋と目の下と鼻の下のフゴフゴのところが赤茶色で、赤ら顔の酔っ払いおじさんみたいだ。

僕がニャンゴ君のお顔の髭を毛並みに沿うように整えると、ニャンゴ君は決まって気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。

お母さんが「嬉しいとき、猫は喉を鳴らすのよ」と言っていた。
ふーん、なるほど。僕の布団で一緒に寝るのが、ニャンゴ君は嬉しいのか。

今日も僕の布団には
ニャンゴ君がいる。

僕の部屋には
ニャンゴ君がいる。

僕はずっと、無駄に広いこの部屋で毎日ひとりぼっちだった。
だから、お留守番仲間ができたことが――本当に、本当に嬉しかった。

まさかこの出会いが、僕の人生をひっくり返してしまうなんて
僕はまだ、この頃は知らなかった。

つづく🐾

↓↓↓第2話「腐った感情」



-モフモフ🐾余談-

⚠️雑巾色ではありません🐈‍⬛
真っ黒な手足とお腹が🐾タヌキ柄
モッフモフのシルクタッチ
上の写真をアニメ画像にしたら
生成心霊画像になりました🤣

あっ、足が、1本多い😱

……次回予告🐾

ニャンゴスターが満月🌙の夜に喋り出します🐈‍⬛

やさぐれた少年に放たれた一言は……

「お前、腐ってんニャ」でした🤣きゃー♡


アディオス🐾


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