猫? を飼う

▼今週のお題
■セリフ 
「ほんとにいたんだって!」
■三題 
・長靴 ・ネモフィラ ・骨

▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年5月7日(木)23:59
・ハッシュタグ「#せりふ三題噺」「#長靴ネモフィラ骨」を
つけて投稿

( せりふ三題噺は、はらとけい さんのご企画です。)


ぐぐぐう。
2時間くらいうなってるのに、まったくなんにも思いつかないのですよ。(デジャヴ感満載)
ささっと思いついて、すすっとしたためて、
軽やかにご披露したいのです。
夕食後のお茶など楽しみながら、頬杖ついて、ふふふって笑えるようなやつを。

  ううーん 。

      ううううーん  。







遠縁の伯父?が、亡くなった。

子どもの頃に、法事かなにかで一度だけ見かけた事があったが、
その時すでに親戚の誰とも繋がりが無く、ほとんど挨拶もせずに
無遠慮なひそひそ話に背をすぼめ、そそくさと帰って行った。
そんな印象しかない。

それでも、うちが一番近い血縁だったらしい。
お悔やみの言葉と共に、やたら遠回りな後始末の催促が来た。
とっくに両親は他界しているので、その娘で総領であるところの我が
長姉が、うまいこと済ましてくれるといいなーと音信も不通気味に
息をひそめていたところが、ある日とうとう直接部屋までやってきて、
ドアホンを連打し始めたのだった。

なに居留守使ってんの?
あんたらも、や る の!


どうも真っ当な旅立ちではなかったらしいと聞いたので、
つい身構えていたが、考えてみればそんなわけはない。
人生最後の舞台となった郊外の一軒家は、むしろ小綺麗に整っていて、
血痕も変死体もなかった。
孤独ながらも慎ましやかなお人柄がうかがわれる。
私たちはそれぞれ手を合わせ、作業を開始した。


なーんだ、意外と簡単に片付いたじゃん。

まあね。でも実はまだ片付かないものが、一つあるのよね。

あー、遺産の分配とか?

次姉の声に、つい耳が反応してしまう。
まだ返し終わらない奨学金の残高が脳裏をかすめる。

それはご心配なく。ここも借家ですって。
それより、これよ。

テーブルの下から引きずられ登場した、
大きさの割に軽そうなダンボール。
開くと、タオルの中心に鎮座する、真っ黒な、ボール?

うわっ、ネコじゃんか。

ネコ?なの?これ?

よく見ると、微かに膨らんだり縮んだりしている。

飼ってたらしいのよ。
餌とか道具とか、一式揃ってる。

後ずさる次姉。

あたしパスだかんね?
ネコ嫌いなの知ってんでしょ?

そうよねえ。うち小さい子がいるから飼えないし。

二人の視線が鼻先で交差する。

あんたは、 無理ね。
ああ。ムリだな。

なんでよ!   とは、言い返せない私がいる。
私が寄り添って、その本分をまっとうした生命体はない。
花は枯れ魚は浮かび鳥は逃げ出して戻らず、皆、警戒するのか、
道を歩けば忠犬に吠えかかられたり借りてきた猫に引っ掻かれたり。
子どもの頃からなぜかそんな実績には事欠かない。
家族は私をナチュラルボーンキラーと呼ぶ。

じゃ、いいわね?
番号は調べておいたから⸻

突然の耳鳴りがボリュームを上げ、部屋全体に響き渡る。
足が、身体も、動かせ、ない。
視界の端から徐々に色が剥がれ落ち、次の一瞬でネガとポジが反転する。
目をやると今や全身真っ白な球体が、ダンボールいっぱいに膨らんで、
その双眸を開く。ゆっくりと。
やがてそれは、眩い二つの真円となって、閉じられない瞳を射抜く。

⸻いえ。

え?

⸻私が引き受けると、言え!

ええっ、だって私ナチュラルでキラーなんだよほんとだよ?

⸻だってもうキミしかいないんだからしょうがないでしょう!?
後生だからあたしが飼うって言ってってばあ!




その節は失礼仕った。ご主人。

今、私の部屋で、ヒト幼児サイズの巨大黒猫が、
差し向かいで腰掛けて、スーパーのパック入り柏餅を食べている。
それはもう、ムシャムシャと。
その葉っぱは食べられないのよ、と指摘する暇も与えず。

どうでもいいけど、その呼び方、なんとかならないの?

そう、私も一応、分類上はまだ、うら若き乙女に属するのだ。
結婚記念日のプレゼントを買いに来た旦那様とかではない。

使い魔としての伝統なので、そこは慣れていただきたいのだ。
のう、ご主人。

こないだはキミとか言ってた。

盛大に咳き込む。
お茶を差し出すと、今度は 熱っつ! とか叫んで吹き出した。

ああ。

でもこんなのは序の口で、こいつが来てからのこの一週間あまり、
ため息のネタにはまったく事欠かない。

種を明かせば、かの伯父さんは、あの見た目にも関わらず、
百代以上も連綿と続く魔導士とかの血統で、いろんな事情で跡継ぎを設けないまま、手違いから次のステージへ強制的に転生?させられた、ということらしい 。

気づいた時にはまだ発動まで数日の猶予があったため、タイミング悪く交代したばかりの使い魔に、伝えられるだけの事を慌ただしく伝えて出立してしまったようで、聞けばそこには同情しないでもないが、実に悪いことには、妙なこだわりたっぷりの、偏った魔導士観?も受け継いでしまっており、
こちらに来て初めての夜、ボクと契約してご主人になってよなどと口走り、口にするのもはばかられる卑猥な儀式を強要しようとしたので、
そこはご主人様特権で、やっぱり電話するから。と黙らせ、もうしませんと正座で宣誓させるというどうしようもない一幕もあったりなかったり。

どうやら当面の私の役割は、この重度の厨二病患者をして、
この世知辛い世の中をまっとうに渡っていける、一通りの常識と、
生き残りを図るなんらかのスキルを考案し、叩き込むことらしい、
と悟った次第。

存在自体がどう見ても非常識なのに。 ああ。



そこはご安心召されよ、ご主人。

えっへん、と胸を張る。

その心を読み人の目を欺く、高度な幻術の類は、
眷属と相成る覚悟を固めるだいぶ以前より、
すでに身につけて久しいものゆえ。

よく見ると、尻尾が二又に裂けている。
ここまででもうキャラクターが延々5キロは渋滞中だ。

首を振って目を閉じ、組んだ両手の上に、額を載せ、
静かに語りかける。

ところでこの間、そこの土手を歩いてたら、

ほんとにいたんだって! 長靴を履いた猫!

って声が聞こえたんだけど、あれはどういうことなのかしら?
何か心当たりがあれば、説明してもらえるかな?

ああ、それは、
ご主人の慎ましやかな生活力に配慮して、
己の食い扶持くらいは稼ごうと、そこの下駄箱にあったちょうど良いゴム長を拝借して、川で鮒など狩ってみたんだ。あれは実によく獲れた。

こないだ来た姪っ子が忘れていったアレか。
また不用意に勝手なまねを。
飽くまで満足気な態度が、癇に障る。

ちなみに、その時の鮒は焼き干しにしてとってあるのだ。
小骨を気にしなければなかなかイケるぞ? 食うか?

さらに得意気。
これはまたお灸をすえねばなるまい。

あのさ、二足歩行してるの、見られないようにしなさいって、

組んだ指に力をこめて、上目を遣い、じっと見つめる。
あっ、という表情。たちまち落ち着かなくなる視線。

あと、私の心は 絶対に 読むなって、……言ったよ、ね。

ヒュッと息を呑む猫。

ごごごご主人、目が、目が怖いぞ?
夜毎恍惚の内に時を忘れて没頭しておる、あのセンシティブなんとかについては内密にいたすゆえ、こここはひとつ穏便にっ! 

期せず噴き出る負のオーラ。
たまらず逃げ出す尻尾の先を、二つながらにむんずとつかむ。

これからお前が許される食餌は毎食全て烏賊料理だと心得よ!

にゃ、ニャアァァア!




今日は母の日。

ほとんど記憶に無いその面影に、あれこれ想いを馳せていると、
音を立てずにそっと入って来たくだんの猫が、
おずおずと近づき、薄青い花弁のブーケをテーブルの端に置いた。

なんの真似?

休戦の、いや、おわびの印なのだ。
ボクとしては、ほんとに助かったと思っているし、その、

目を合わせようとすると、もじもじする。

できれば、やっぱり、仲良しになりたいのだよ。ご主人。

さすがは猫の内と言うべきか。
媚びる事にかけては動物界随一の実力を見せつけてくる。
今にもするりとほどけて、脚の周りにぐるぐるすり寄って来そうな気配だ。

別に、ケンカしてるわけじゃ、  ないし?
で、どうしたのよ、それ?

これは、前のご主人の技を真似てみたのだ。
お足は、あの鮒を売って手に入れた。

慌てて付け加える。

花屋にこれを頼みに行く時も、
やや幼き姿とはいえ、委細抜かりなかったと誓おう。

まっすぐな視線。かなりの無理をおして。

小さな子が、精一杯背伸びして、小銭を示し、
これで花束を、と伝える場面が浮かぶ。
ささやかながら凝ったアレンジに、込めた想いが漂っていた。
時節柄、その目的を察してのことだろう。
これを手がけた人は、微笑んだろうか。
ちょっと、涙ぐんだかもしれない。

肉球のある前脚で、目の前に、ぐいと押してよこす。
それ、は、確かに、これ、になった。

この花は、ネモフィラ、と呼ぶそうだ。
その花言葉の内に、貴方を赦す、というのがあるらしい。
これはお願いなのだが、ボクがキミの役に立ったと認めた時、
一輪を、遣わしてほしい。

伏した瞳が艶やかに光る。
体毛に覆われて見えないが、その下の顔は、
紅潮しているのかもしれない。

全部なくなったら、その時、キミはボクのご主人だ。
どうだろうか?

かの伯父がこの手管を授けたのだとすると、
意図してのことではなかっただろう。
そこにどんないきさつがあって、結末はどうだったのか、
いずれにせよ、今はもうせんなき事に違いないけれど、
その心は、伝わったようだった。

べつに、    いいけど。

よかった。

目を細めて、見るからに嬉しそうな表情になる。
笑顔はたしか、ヒトの証ではなかったか。

さてそうと決まれば話は早い。
ではまずこの契約における主客を明らかにするために、
さっそくボクの名前をつけていただこう。
名付け親ともなれば、明文化しなくても簡単には解けない様々な誓約事項が成立
おっとしまった今のは聞かなかった事に
なななんでそんなに睨むのかにゃあ?
ぜんぜんわからないんだニャアァアァアァ!


私が飼うなら、このくらい図太い方が、相応しいということだろう。
名前は当面、おあずけということで。











すみません題名が三題噺な間はまだ途中だと思っていただければ
わかりました今やりますすぐ書きますすごめんなさいすみません


あわわわ、
思いついた順にぜんぶに届くまで書いたらなんか長くなりました
締め切りすぎてるのにおいそがしいのにすみませんすみません


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