見出し画像

読書の記録(106)『夏の迷子』 村上しいこ フレーベル館

手にしたきっかけ

俳句や短歌を扱った話が好きなのもあるけれど、村上しいこさんの『うたうとは小さないのちのひろいあげ』も好きだ。絵本から読みものへと読書の幅を広げている子どもたちに「おすすめは?」と聞かれたときに、藤井寺市出身の長谷川義史さんが絵を描いた『れいぞうこのなつやすみ』などのシリーズをすすめることも多い。物語を読み慣れてきた子どもには、田中六大さんとの『音楽室の日曜日』などのシリーズもすすめる。

楽しい話もあれば、ちょっと辛い境遇の子どもを描いた話もある。初めは楽しい話から入るんだけど、年齢が上がって高学年やYA向けの本を読むと、ずしんとくる話も多い。この幅の広さが村上しいこさんの懐の広さなんだと思う。

心に残ったところ

親の庇護のもとでしか生きていけない子どもたちはたとえ理不尽な親であっても、理不尽な環境であっても、それを受け入れて折り合いをつけていくしかない。しかし、SOSを出したときに親身になってくれる人もたくさんいるし、本当に心配し、寄り添い、一緒に行動してくれる同年代の友達もたくさんいる。そのことも実感できる本だ。

4章で市役所に行く場面が印象的だった。私自身のことを振り返っても、子どもの頃に市役所に行った記憶はない。友達と、子どもだけで行くことはなかった。今なら、生活全般のことや、福祉につながる部署があることも知っている。知りたいことがあるとき、困ったことがあるときに、市役所で聞いてみるという発想はなかった。

市役所の人は、純成たちを子ども扱いせず一人の人として対応してくれる。できることと、できないことがあることも丁寧に説明し、必要な情報を与えてくれた。

本を読むと、ピンポイントで何かの知識を得るだけでなく、こうした大きな社会の仕組みを知ることができる。本を読んでいる子は強いと思う。本当に困ったときに、どこにどう助けを求めればいいのかを知ることができる機会があるからだ。いきなり市役所には行けなくて、困ったときには本にヒントがあるかもと、本屋や図書館へ行けるからだ。

まとめ

純成とみことと同年代の子どもが読んだら、成長の物語としても読める。大人が読むと、子どもの成長をどう見守り、支えられるか、という視点でも読める。年代や立場によって感じるものが違う本だと思った。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集