あるいは裏切りという名のSHO〜2021.8.16後楽園ホール試合雑観〜

珍しく連続更新です。タイトル、毎回何かのパロディでつけているのですが、適当な性格のせいか捻りが足りない上に、肝心のネタもそろそろ切れそうで……。前説も実は面倒くさいタイプの人間です。なので早速本題に入りましょう。

◼️ 第5試合 30分1本勝負 
『SUPER Jr. TAG LEAGUE 2021』公式戦
SHO&YOH vs 金丸義信&エル・デスペラード

この二組は以前から何度も矛を交えたタッグでもあり 、直近だとIWGP Jr.タッグ王座戦での死闘の記憶も新しいですね。しかしながらタッグの好敵手というイメージからは少しズレており、3Kに対しての怨敵といった表現のほうが近いかもしれません。デスペラードの3Kに対する罵倒、もといアジテーションはかなり苛烈かつ辛辣で、語弊を恐れずに言えば3Kに対する根強い批判の急先鋒であるとも言えるでしょう。デスペラード当人は尻馬に乗る形を嫌がってはいるのですが、これに対する3K側のアクションがいまいちハッキリしないのもあって、どうにも言われっぱなしになっていたという側面もあります。また今回のタッグリーグでの戦績も、3連覇という脅威の実績がありながらも、全敗の空気すら漂っていた3Kと、タッグチームとして完全に定着していた金丸デスペでは、最初の立ち位置に雲泥の差があったと言わざるを得ません。

また今回の試合内容もそれを補強するもので、金丸デスペ組の「荒々しさ」は3Kの「綺麗さ」の対比でありながら、その弱々しさを浮き彫りにしてしまいます。徹底的に足を攻められて苦しむYOHは何度も見た光景で、最後は合体技による逆転勝ちをもぎとったことも何度かあるのですが、そうしたヒロイックな有様とは裏腹に、そうした「苦闘路線」にいまいち乗り切れなかった観客が多かったのも事実です。キャリア的に二人は先輩であり、その中でも金丸の巧みさはズバ抜けていて、当初は格の違いがわりと露骨に目立ったのもあり、そうした中で「成長」を中々見せることができなかったのは、ある意味では3Kの限界だったのかもしれません。

また金丸&デスペ組の「意地の悪さ」も今回は際立っており、徹底して二人の分断を図り、また合体技を仕掛けさせなかったことで3Kというタッグそのものの否定にかかりました。組んでいることに意味がない。タッグバトルにおいてこれほど強い否定はないのです。

ロープに振られても走り出せず崩れ落ちるYOH。痛めた足にヌメロ・ドスを仕掛けられ万事休すかと思いきや……事件はそのときに起きました。本来カットに入るはずのSHOが仁王立ちで、苦しむYOHを眼下に置き、そのまま自軍へと戻り、さらには場外へと……。裏切るのはSHOか!と思いましたが、まだ庇い続けたSHOが堪忍袋の尾を切らしての「叱咤激励」の可能性がほんのちょっとだけ残っていたんですよね。

しかしながら二人にやられ続けるYOHを救出せず、フォールを取られるその時まで冷徹に眺め続けていたことで、裏切りの予感は決定的なものとなりました。

いやあ……申し訳ない話なのですが、一番噂されていたYOHのヒールターンがここで潰えたことにまずは安堵しちゃったんですよね(笑)打点の高い美しいトラースキックに、正当継承であるドラゴンスープレックス、意外と使い手が空き家なファルコンアロー、スターゲイザー、YOHの所持した技を見て、これでヒールは嘘だろうと(笑)どう見ても正統派ベビーですよ!いや、あくまで個人的な解釈に過ぎないのですが、解釈違いにならなくてホッとしましたね。

そして気を取り直した瞬間に目に入ったSHOの表情。こんな「貌」ができるとは思わず、最高にゾクゾクしちゃいました。「顔」ではなく「貌」まさに悪相といった感じで、精神の平衡を喪失している(るろ剣北海道編で出てきた新表現)表情で、言葉は非常に悪いのですが、今までの熱血少年と違ったヤク中のような凄みがありました。私見ですが、ヒールになる条件で一番大事なのは言葉よりもその形相だと思っています。プロレスは非言語コミュニケーションの極みであり、言葉もまた刺激的なスパイスでありながら、あくまでもそれを彩る枝葉に過ぎません。一枚絵として成るか否かはヒーローでもヴィランでも大事な条件ではありますし、この「貌」ができただけでSHOのヒールターンの成功を確信してしまいました。

そして放たれる、3Kへの文字通りの「止め矢」となったショックアロー。そして悪の道へと突き進む決別の嚆矢。YOHは盟友を失い、3Kという青春を失い、そしてある意味ではヒールターンという「逃げ場」も完全に失ってしまいました。

◼️SHOのヒールターンとYOHの今後について

新日がファンの民意を反映する形で3Kの是非という文脈をJr.タッグリーグに取り込んだことで、3Kの解散とヒールターンは半ば決定事項のようにファンの間で扱われていましたね。オッズとしてはYOHに対してヒールターンを「期待」する声が多く、それは変化を期待してのことでしょう。しかしながら個人的にはそれにはノレなかったです。そもそも「嫌われているからヒールターンすればいい」というのはあまりにも安易過ぎますし、ヒールターンというものは、単なるキャラ変なんかじゃありません。ヒールターンでファンの見方が変わって人気が出るのだとすれば、それは見る側の感性の問題ですし、それならヒールターンせずとも「ギミックチェンジ」をすればいいだけの話です。そもそもヒールターンを「期待」されるっておかしな話じゃないですか?本来の意味のヒールはまごうことなき「悪役」であり、それならヒールターンを「やらない」ほうが結果的にファンを裏切るため、そちらのほうが正しくなるという矛盾が生じてしまうのです。

そういう意味ではSHOのヒールターンはある程度予測されていたとはいえ、成功と言っていいでしょう。GLEATのメインイベント勝利という文脈の逆輸入がされてないことへの不満の解消になりつつ、ヒールとして幅を広げて飛躍する。観客の期待に応える形での転向ではなく、あくまで野心と野望を持って悪の道へと突き進む。やはりファンの後押しではなく、自らの意思でヒールターンするのが正しいと僕は思います。

打撃と関節技というシューター寄りのJr.のヒールというのは、テクニカルに傾きがちな現状、確かに空き家でありますし、SHOの打撃の鋭さが増したり、関節技での非常なフィニッシュが増えるかもと思うと期待しかありません。あの酷薄そうな顔で元タッグパートナーを蹴りまくるSHOを思うだけでワクワクしてきませんか?

リング上とバクステで放ったSHOの決別の台詞は、凄みのあった表情とは裏腹にヒールの教科書通りの台詞で、ここは改善の余地があるかもしれません。メタなことを言うなら、3Kへの悪評と、タッグリーグの戦績が前年度覇者に相応しくない結果である以上、敗因であるYOHの「不甲斐なさ」を突いてしまえば、裏切りに「正当性」が生まれてしまうため、敢えてああした物言いにせざるを得なかったという見方もできますね。「引退しろ」「利用価値がない」「(YOH)用済みだ」という発言も、刺激的なワードでありながら、今までの3Kの絆と と乖離した発言で、それが逆にSHOは真意を意図的に隠しているとも言えます。また、SHOには迷いがいまだあり、そんな自分を突き放すように敢えて強い言葉を選んだ……。その辺りの解釈はファンに委ねていいと思うのです。言葉を額面通りに受け取るばかりがプロレスではなく、解釈するのはファン次第なのですから。

そして全てを失ったYOH。いやいや、ここからが本当の戦いの始まりですよ。3Kに対する批判は敗因になっているとはいえ、全部が全部YOHが悪いと言うわけではなく、タッグチームである以上、その責任は五分だと僕は思います。そんな中で3Kというニコイチの評価から解き放たれた現状、完全にYOH個人の評価と責任になったわけですし、底についたらあとは浮上するしかないですものね。

これは以前にも書いたことですが、SHOとYOHなら最終的に上になるのはYOHだと僕は思います。まんま2004年〜2006年あたりの低評価だったころの棚橋弘至の再演で、壊れた世界の罪を半分背負わされた上に、救世主だと「認められなかった」のが棚橋ではあるのですが、あの時とちがっ違って今の土壌は豊かかつ、YOHには新日Jr.や、ましてや新日本を背負うほどの責任はまだありません。その「責任のなさ」が逆に「役割のなさ」に直結しているとも言えますし、刹那的な印象の目立つヒロムやSHOと違って、より「焦り」があるのはYOHのほうなのですよ。YOHの間やテンポを重視するスタイルは天性のセンスだけではなく、どうしても経験がモノをいうもので、それはひたすらに戦い続けることでしか花開かないものなのです。これだけ批判の渦巻く中、長期的に先を見据えて雌伏の時を過ごすことを選んだYOHの選択をまずは評価したいですし、安易なヒールターンによる「逃げ」より、茨の道のベビーフェイスを選ぶほうが応援できるわけなのですよ。


最後に。まだ決まったわけではないといえ、3Kの存続がほぼ絶望的になったことでショックを受けているファンも多いとは思います。少なくとも以前のSHOは二度と帰ってこないわけですし、いくら二人にとってプラスになろうと、それぞれの未来のために道が違えようとも、それら全てを肯定的に受け取るのはファンであればあるほど苦しいことだと思います。

しかしながら、3Kというタッグチームへの喪失感。その気持ちは悲しいながらも、思い出とともに大切にしてください。いくら批判が多かろうとも、そうした気持ちのファンがついて応援していたこと自体が、3Kというタッグチームが無価値ではないことの証明そのものであり、またSHOのヒールターンという「裏切り」が完璧に機能したことの証左でもあります。3Kとしての「第一章」の終わりは苦いものではあったのですが、互いにプロレスラーである以上、どこかで戦わなければいけない時はやってきます。「組む」物語が終わったのなら、次は「闘う」物語の始まりです。その先にはまた再結成が……何年先になるかは分かりませんが、いずれ訪れることだと思いますし、その時は二人の合体技の数々が、今度は歓声アリで大爆発することでしょう。その時を願って、今はしばしのお別れです。二人の飛躍を願いつつ、この辺りで筆を置きます。今後も二人の物語から目が離せませんね。今日はここまで。

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