【大人の勉強法TOP7】第4回:【想起】下線引きは無駄じゃない。「アクティブリコール」とアウトプット先行学習
まえがき
前回までは、勉強を習慣化するためのマインドセットや、過去問を使った全体戦略、そして場所を選ばずに学ぶための物理的な環境づくりについてお話ししました。
今回からは、いよいよ具体的な頭の使い方、つまりインプットとアウトプットの技術に入っていきます。
勉強というと、テキストをじっくり読んで知識を頭に入れるインプットばかりを重視しがちです。
しかし、大人の限られた時間で効率よく知識を定着させるためには、インプットの段階からアウトプットを強烈に意識する必要があります。
教えることを前提にしたアウトプット先行学習
ただ漫然とテキストの文字を目で追うのと、後で誰かに説明しなければならないという状況で読むのとでは、脳の情報の吸収力が全く異なります。
この用語はどういう意味か、なぜこの公式が成り立つのかと、相手に分かりやすく伝えるためのポイントを無意識のうちに探しながら読むようになるからです。
理想を言えば、勉強した内容を家族や同僚などに実際に教えることができれば最高のアウトプットになります。
しかし、大人の資格勉強などにおいて、自分の専門的な話に都合よく耳を傾けてくれる相手を見つけるのは、現実的にはなかなか難しいでしょう。
そこで私が実践しているのは、教えるように紙に書き出すという方法です。
目の前に架空の生徒が座っていると仮定し、その生徒に向かって講義をするつもりで、テキストの重要な内容を自分の言葉で紙に書き出して説明するのです。
下線引きは「勉強している実感」のためにやってOK
テキストを読む際、重要な箇所にマーカーやペンで線を引く方は多いと思います。
近年の学習に関する研究などでは、ただ線を引くという行為は記憶の定着においてあまり効果がない、つまり無駄であると指摘されることが増えてきました。
しかし、私はあえて言います。
下線引きはやってOK。
なぜなら、線を引くことで得られる「私は今、間違いなく勉強している」という実感は、大人がモチベーションを維持する上で非常に重要だからです。
仕事で疲れた頭に鞭打って机に向かっている時、真っ白だったテキストが自分の手で少しずつ色づいていく過程は、確実に前に進んでいるという安心感を与えてくれます。
また、前回ご紹介したA4紙1枚のカンニングペーパーを作る際にも、テキストのどこに重要な情報があるかを後からパッと見つけるための目印として、下線は非常に役立ちます。
ただし、ここで絶対に忘れてはならない大前提があります。
それは、下線を引いただけでは内容はほぼ覚えられないという残酷な事実です。
これをしっかりと自覚しておくこと。
きれいに線を引いて満足してしまっては、本当にただの手作業で終わってしまいます。
本を閉じて必死に思い出す「アクティブリコール」
下線を引きながらテキストの一区切りを読み終えたら、ここからが本当の勉強のスタートです。
すぐにテキストをパタンと閉じます。そして、手元の紙に向かい、たった今読んだ内容を必死に思い出して書き出します。
この何もない状態から思い出すという作業こそが、最強の定着術と呼ばれるアクティブリコールです。
人間の脳は、情報をインプットした時ではなく、情報を引っ張り出そうと負荷をかけた時にこそ、記憶を強固に定着させる仕組みになっています。
最初は全く思い出せず、愕然とするかもしれません。
たった数分前に線を引いたばかりの単語すら出てこないことも多々あります。
しかし、そこで苦しみながら脳内を検索し、なんとかひねり出そうとするプロセス自体が、記憶の回路を太くしているのです。
どうしても思い出せない部分があれば、もう一度テキストを開いて確認し、またすぐに閉じて書き出します。
ノートではなく、ただのA4コピー紙に書き殴る
このアクティブリコールを行う際、私はきれいに製本されたノートは使いません。
使用するのは、ただのA4コピー用紙です。
ノートを使ってしまうと、どうしても後から見返すためのきれいなまとめを作ろうという心理が働いてしまいます。
文字の大きさを揃えたり、色ペンを使い分けたりと、見栄えのほうに意識が向いてしまうのです。
しかし、今やりたいのは記憶の定着を目的とした脳への負荷であり、美しいノート作りではありません。
A4コピー用紙なら、いくら無駄遣いしても気になりません。
思い出したことを、とにかく書き殴ります。
文字の綺麗さなど一切気にしません。
後から見て、かろうじて自分でも判別できるかどうかというレベルの殴り書きで十分です。
不思議なもので、きれいにまとめたノートの文字よりも、必死に思い出そうと感情を込めて書き殴った汚い文字のほうが、なぜか強烈に記憶に残ります。
あの時、思い出せなくてペンを握りしめながら殴り書きしたなという身体的な感覚が、エピソード記憶として定着するからです。
捨てない紙の山が自己肯定感を高める
書き殴った後のA4用紙は、一見するとただのゴミに見えるかもしれません。
しかし、私は試験が終わるまで、その書き殴った紙を絶対に捨てずに取っておきます。
クリアファイルなどに適当に放り込んでおくと、勉強の期間が長くなるにつれて、その紙の束はどんどん分厚く、重くなっていきます。
試験直前になり、自分の実力に対する不安に押しつぶされそうになった時、その分厚い紙の山を見てください。
それは、あなたがこれまでに必死に脳に汗をかき、もがきながらアクティブリコールを繰り返してきたという、何よりの物理的な努力の証です。
ずっしりとした重みを持ったその紙の束は、自分はこれだけの量を書き殴ってきたのだから大丈夫だという強烈な自己肯定感を生み出し、本番での自信へと確実につながるでしょう。

次回は、今回インプットした知識をさらに整理し、デジタルとアナログを使い分けて知識を腐らせないノート術について解説します。
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