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【大人の勉強】 何を勉強すればいいの? 資格とスキルの現実論 2/3

はい、ということで前回からの続きです。




3. どんな勉強も、長期的には必ず「伏線」として回収される


もう少し長期的な視点での「学びの効用」について触れておきましょう。

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチに「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」という話があります。
彼が大学を中退した後、単なる趣味として夢中で学んだ「カリグラフィー(西洋書道)」の知識。当時は何の役にも立たないと思われていましたが、10年後、彼がマッキントッシュを開発する際に、その美しい文字のデザイン感覚が活かされ、世界初の美しいフォントを持つコンピュータが生まれました。

これは天才だけの話ではありません。
私たち凡人の人生においても、勉強は必ずどこかで「伏線」として回収されます。
点と点が繋がる瞬間が来るのです。

「趣味で取った簿記の知識が、管理職になったときに予算管理で役立った」
「英会話を習っていたおかげで、海外からの旅行客を案内でき、そこから意外な人脈が生まれた」
「心理学の本を読んでいたら、反抗期の子供との対話がスムーズになった」

こうした事例は枚挙にいとまがありません。

一見すると無駄に見える勉強も、あなたの脳内に新しい回路を作り、思考の幅を広げています。
そして、人生の予期せぬタイミングで、「ああ、これはあの時の知識だ!」と役立つ瞬間が必ずやってきます。

「資格を取ってもすぐには食えない」というのは事実です。
しかし、「勉強して損をした」ということは絶対にあり得ません。

どんなジャンルであれ、学んだという事実は、あなたの血肉となり、自信となり、将来のあなたを助ける伏線となります。

まずは食わず嫌いをせず、「少しでも興味がある」「仕事で使いそう」という実用スキルに手を出してみてください。
失敗しても、それは経験という財産になります。

しかし、人生を真に豊かにし、深みのある人間になるためには、「実利」を追うだけの勉強では足りません。
多くの人が「重要だと分かっているけれど、どうしても後回しにしてしまう」あの分野――そう、「教養」の学び方について、その解決策を考えてみましょう。


4.なぜ「教養」は三日坊主で終わるのか


ここまでは資格や実用スキルといった「実利」の選び方についてお話ししました。
これらは、仕事で必要に迫られていたり、給料アップという明確な報酬が見えていたりと、比較的モチベーションを維持しやすい分野です。
いわば、戦うための「武器」を磨く作業と言えるでしょう。

しかし、私たち大人の学びには、もう一つ重要な領域があります。
それが歴史、哲学、芸術、心理学といった「教養」です。
武器の使い方を定め、それを振るう人間の器を大きくするための学びです。

多くの人が「教養が大事なのは分かっている」と言います。
しかし同時に、「どうしても後回しにしてしまい、結局続かない」という切実な悩みを抱えています。

私自身もそうですし、周囲からも「いつかやろうと思っているうちに数年が経ってしまった」という声がよく聴こえてきます。

なぜ私たちは、これほどまでに教養の勉強を習慣化できないのでしょうか。
この難問の正体を解き明かし、無理なく教養を血肉にするための技術について考えていきます。

「教養」というタスクの性質


教養の勉強が続かないのは、決してあなたの意志が弱いからでも、怠惰だからでもありません。
それは、私たちが直面しているタスクの性質によるものです。

アイゼンハワー・マトリクスという考え方をご存知でしょうか。
これは物事を「重要度」と「緊急度」の2軸で4つの象限に分けるものです。

第1象限は「重要かつ緊急」なこと。
クレーム対応や締め切りのある仕事などがこれに当たります。これらは放っておくと大変なことになるので、私たちは必死で片付けます。

一つ飛ばして第3象限は「重要ではないが緊急」なこと。
突然の電話や、意味のない会議などです。これも強制力があるため、対応せざるを得ません。

第4象限は「重要でも緊急でもないこと」ですので、基本的にはしなくてもいいことです。

問題なのが、教養の勉強が属する「第2象限」です。
ここは「重要だけれど、緊急ではない」領域です。
歴史を知らなくても明日の仕事は回りますし、哲学書を読まなくても誰にも怒られません。

私たちの脳は、原始時代から「目の前の危機」や「即座の報酬」に反応するように進化してきました。
そのため、締め切りも罰則もない「第2象限」の活動は、どれほど重要だと頭で分かっていても、無意識のうちに優先順位を下げてしまうのです。

つまり、教養が続かないのは、生物としての防衛本能に近い仕組みなのです。
これを意志の力だけで乗り越えようとするのは、あまりに分が悪い戦いといえるでしょう。


以下次号、最終回!



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