世界一短い小説
皆さんは世界で一番短い小説が何かご存じでしょうか?それは、アーネストヘミングウェイ(1899-1961)が俗に書いたといわれる"For sale: child shoes, never worn"というものでございます。このたった6つの単語が全文です。
一般的にこの小説の解釈としては、貧しい家庭環境にありさらに生まれたばかりの子供を亡くした母親が、仕方なく子供のために用意していた靴を売りに出すというのがもっともだといわれています。ですが、それで終わりなのでしょうか?これだけ描写が少なくてはもっと別の考察もできるのではないか?そう思った私はあえて”母親が靴を売りに出したという設定”を否定してこの小説を脚色してみました。しばしお付き合いください。
舞台は町の小さな靴屋さんで、主人公はこの靴屋のオーナー、ベン。この靴屋ではそれまで紳士靴を専門に作っていたのだが、ある日この店をごひいきにさせてもらっていたトーマスという人に“最近息子が結婚したのだ。そこで、将来私の孫ができたらその子が履ける靴を作ってくれ”と頼まれる。靴屋の男は頼みを受け入れたが、なにぶんそれまで作ったことのあったのは大人用の靴ばかり。子供の靴を作ることに慣れていなかった男はなかなか靴を完成させることができなかった。3か月後、老人に待望の孫が誕生したことをベンは知ったが、靴はまだ完成しない。そしてオーダーを受けてから半年後、何とかベンはその道では有名な問屋から仕入れた最高級の牛革と、彼の熟年の技術を用いていまだかつてないほど素晴らしい子供用の靴を完成させてトーマスのもとへ向かった。
しかしそこで目にしたのはトーマスが病で苦しんでいる姿であった、彼はもう半年前からずっと闘病生活を送っており、医師の話によると大規模な手術を施さなければ治らないとのこと。ベンは考えた。完成した靴を約束通りトーマスに渡すか、あるいはこの靴を売って多額のお金を獲得し、トーマスさんの治療費に費やしてもらうか。その思いで彼は揺れ動く。結局、ベンはトーマスの枕元にその靴を置き、彼のもとを去った。その後、トーマスの息子がその靴を目にする。子供用の靴にしてはあまりにも手の込んだ代物であると気づいた彼は、その靴がベンとトーマスにとっての約束の品であるにもかかわらず、まだ履かれていない子供の靴をオークションにかけ、そこで得た利益でわが父に医療費を提供しようと試みる。
彼はオークション会場で最高級の牛革が用いられていること、この靴を作ったのは稀代の靴職人:ベン・クロフォードであることを熱弁し、最後にこう締めくくった"This is a special chance for everybody! I'll say, for sale:child shoes,never worn!"
(この物語はフィクションであり、過去および現在の実在人物・団体などにはいっさい関係ありません。 )
この世界一短い小説からじぶんなりの考察を立ててみることをお勧めしておきます。そうすれば、みなさんのおうち時間もわくわくしたものとなるに違いないでしょう。
(タイトル写真:https://stat.ameba.jp/user_images/20110610/01/ms-pro-m/7b/a8/j/o0640048011281195523.jpg)
