「いつか見ることになる光のために」 第1回
※本書はフィクションではありません。
ここに書かれている出来事、感情、体験は、すべて筆者本人が実際に経験した事実です。
個人や関係者が特定されないよう、一部表現や名称は配慮していますが、
内容の本質を変えることは一切していません。
序章:
絶望の中で見つけた小さな光
私は数年前、障害者になった。
この言葉を書くまでに、長い時間がかかった。
かつての私は、「人生とは死ぬまで生きるだけのもの」だと思っていた。
希望という言葉は、遠くて現実味のないものだった。小学生の頃から、高校を中退するまで、私の毎日は暴力と恐怖、そして孤独に覆われていた。学校という場所は学ぶ場所ではなく、耐える場所だった。
授業で声を出せば笑われ、何もしていなくても疑われ、逃げ場はどこにもなかった。誰かに助けを求めても、教師も親も、私の味方ではなかった。中学では暴力が日常となり、高校では命の危険すら感じる出来事が起きた。それでも私は、「死にたい」とは思わなかった。ただ、生き延びることだけを考えていた。
高校を中退し、外の世界が怖くなったある日、父から渡された一本のビール。それは、私にとって初めての「安堵」だった。そして同時に、アルコール依存という長い闘いの始まりでもあった。
この本は、私の過去を美化するためのものではない。
誰かを断罪するための本でもない。
ただ、確かに存在した現実を、そのまま記録するために書いている。
もし今、いじめや孤独、人生の行き止まりに立っている人がいるなら、伝えたいことがある。
今は見えなくても、光は存在する。
それはすぐには掴めないし、簡単にも見えない。
それでも、人はいつか――光を見ることになる。
これは、かつて光を信じられなかった私が、
「それでも生きてきた証」の物語である。
小学生時代――「典型的ないじめられっ子」だった私へ

私は、典型的ないじめられっ子だった。
今思えば、どのクラスにも一人か二人、必ず「いじめられる側」がいる。男女一人ずつ、というのが私の実感だ。そして、そのうちの一人が、間違いなく私だった。
授業中の音読。
教科書を読み始めると、教室のあちこちからクスクスと笑い声が漏れる。何が面白いのか分からない。ただ、私が読むという事実そのものが、笑いの対象だった。
「この問題、わかる人」
担任がそう言うと、クラスのほとんどの生徒が一斉に手を挙げる。私は分からなかった。でも、分からないと正直に言う勇気もなかった。周囲に合わせて、条件反射のように手を挙げた。
すると、担任は私を指名し、答えられない私を見て、こう言った。
「なんで手を挙げたの?わからないのに」
その言葉に、教室は笑いに包まれた。
私は、教壇の前で立ち尽くし、何も言い返せなかった。恥ずかしさと屈辱で、顔が熱くなるのを感じながら、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
ある日、クラスの女の子が「消しゴムがなくなった」と騒ぎ出した。
なぜか、矛先は私に向けられた。
「あなたが取ったんでしょ。正直に言いなさい」
担任は、私を疑うことを前提に、皆の前で怒鳴った。
取っていない。触ってもいない。けれど、否定すればするほど、さらに責め立てられる。恐怖で頭が真っ白になり、涙が止まらなくなった。
そして私は、言わされた。
「……私がやりました」
その直後、女の子は何事もなかったかのように、自分の筆箱から消しゴムを取り出した。
要するに、私は嵌められたのだ。
誰も、何も言わなかった。
担任も、クラスメイトも、誰一人として私をかばわなかった。
学校のチャイムが鳴ると、私は一目散に校舎を飛び出した。
誰かと関わると、必ず何かが起こる。だから、逃げるように帰った。
だが、それも長くは続かなかった。
足の速い同級生に追いかけられ、捕まる。
羽交い締めにされ、その場で動けなくされる。
そこに、私より足の遅い集団がやってくる。
そして、殴られる。蹴られる。
集団リンチだった。
翌日も、翌々日も、同じことが起きると分かっていながら、学校へ行かなければならない。
逃げ場のない現実に、「情けない」という言葉では足りない感情が、胸に溜まり続けていた。
そんな私にも、好きな女の子ができた。
でも、「いじめられてつらい」という本音を知られるのが、恥ずかしかった。
だから彼女の前では、何事もないふりをして、ヘラヘラと笑うピエロを演じた。
ある日、彼女は私に言った。
「あんたって、おめでたい人間だね」
当時は、その意味が分からなかった。
でも今なら分かる。
現実から目を背け、必死に笑っている私が、そう見えたのだ。
殴られることは日常だった。
鼻血が出る。口の中が切れる。白いカッターシャツが、真っ赤に染まる。
それでも、両親は何も言わなかった。
気づいていなかったのか、見て見ぬふりをしていたのか。
心配の言葉も、行動も、なかった。
靴箱や机の中には、ゴミ。
画びょうを仕込まれることも、珍しくなかった。
小学五年生のある日。
毎日のように暴力を受け続け、ついに私もやり返した。
喧嘩慣れなどしていない。
拳を振り上げた瞬間、「パフッ」という、頼りない感触がした。
正直、相手はほとんど痛くなかったと思う。
だが、相手は泣き出した。
三者面談が開かれた。
そこで庇われたのは、毎日のように私に暴力を振るっていた相手だった。
たった一度、しかもほとんど力の入っていない反撃をした私が、悪者にされた。
この時、私は確信した。
――誰も、私を助けてはくれない。
ただ嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
痛くても、苦しくても、我慢するしかないのだと。
一度だけ、万引きをしたことがある。
近所に、ガラの悪い兄弟がいた。学校でも有名な、三つ上の人間だった。
その人は、日常的に私に暴力を振るっていた。
とにかく怖かった。
脅されて、スーパーで万引きをした。
今思えば、完全に使いっ走りだった。
「お前も、あいつ殴れ」
そう命令されることもあった。
でも、私は怖くてできなかった。
だから、殴られた。
それが、私の小学生時代の日常だった。

次回
だが、小学校時代の地獄は、まだ序章に過ぎなかった。
中学校に進むと、暴力はさらに陰惨さを増し、学校外の世界へも広がっていく。バイクに乗った集団に追われ、逃げ場のない日々――。そして、あの日の事件が、私の人生を大きく変えることになる。
