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――あの頃の僕へ


第1話 白紙の手紙

小学校の校庭に、タイムカプセルを埋めた日のことを、僕は今もぼんやりと覚えている。

クラスのみんなで校庭に集まって、土の匂いのする、少しひんやりとした穴をのぞき込んだ。

先生が前で何かを説明していた。
たぶん、「二十年後の自分に向けた手紙を書く」というような話だったと思う。

「二十年後の自分へ」
「将来、どんな大人になっていたいですか?」

そんなことを書いた気がする。
いや、正確に言えば、書かなければならなかったのだと思う。

そして二十年後。

僕たちは大人になり、もう一度あの校庭に集まった。

懐かしい顔があった。
名前を思い出すのに少し時間がかかる顔もあった。

けれど、笑い合うと、不思議と小学生の頃の面影が戻ってくる。

地面の中から掘り出されたタイムカプセルは、記憶の中のそれよりもずっと小さかった。

けれど、その中には確かに、僕たちの二十年分の時間が詰まっていた。

誰かが笑いながら、自分の手紙を読んでいる。

「先生になりたいって書いてある!」
「俺、プロ野球選手って書いてるよ!」
「有名人になるって、すごいこと書いてるなー」

あちこちから、照れくさそうな声が聞こえた。

僕も、自分の名前が書かれた封筒を見つけた。

少し黄ばんだ紙。
たどたどしい子どもの字で書かれた、自分の名前。

胸の奥が、少しだけざわついた。

二十年前の僕は、二十年後の僕に宛てて、いったい何を書いたのだろう。

そっと封筒を開けた。
中に入っていた紙を広げた。

そこには、何も書かれていなかった。

白紙だった。

一瞬、笑ってしまいそうになった。
でも、すぐに笑えなくなった。

どうして僕は、何も書かなかったのだろう。

先生に出し忘れたわけではない。
封筒には、ちゃんと自分の名前が書いてある。

でも、中身だけが真っ白だった。

二十年前の僕は、何を書きたかったのだろう。
あるいは、何を書けなかったのだろう。

その白紙を見つめていると、校庭のざわめきが少しずつ遠のいていくような気がした。

僕だけが、二十年前の教室に取り残されている。

鉛筆を持ったまま、何も書けずにうつむいている小学生の僕。

その小さな背中が、なぜか、ありありと目に浮かんだ。

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