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エッセイ『うるさめエッセイ』

「元気ですかーー!!」

皆さん、このクソ暑い毎日をいかがお過ごしでしょうか?

外に出れば灼熱。
少し歩けば汗だく。
家に帰ればエアコンのリモコンを探す。

そんな毎日を送っていることと思います。

こんな時は、もっと暑苦しい記事が読みたくなっていると思います。

なってないですか?

なっていることにします。

いつもより「うるさめ」にエッセイを書いていこうと思います。

ではスターちん!(リンゴちゃん)


数年前、俺は初めて美容形成外科へ行くことになった。

なぜか。

胸の中央に吹き出物ができ、何か月経っても治らなかったからだ。

最初は、

「まあ、そのうち治るやろ」

ぐらいに思っていた。

しかし、その「そのうち」が一向にやってこない。

それどころか、そのできものは徐々(オラオラオラオラオラ!!)に大きくなり始めていた。

このままでは、胸にカラータイマーを付けて、隠しながら生活することになりそうだった。

友人からはカップラーメンを作る時だけ呼ばれる存在となるだろう。

「お湯入れたから、カラータイマー点けといて」

と言われ。

「あ、今日は赤いキツネだから5分だった。ほんとうに役に立たないね。帰っていいよ」

などという仕打ちを、このままでは受けてしまう。

そう思い、美容外科へ行った。

受付には綺麗な受付のお姉さんが2人座っていた。

俺は右のお姉さんを指名しようとしたが、そういうお店ではなかったので、保険証を渡し、待合室で待つことにした。

数分待つと、綺麗な看護師さんが現れ、俺は別室で、この綺麗な看護師さんの診察をとりあえず受けることになった。

胸のネームプレートには「大島」と書いてあった。

大島さんは少し舌足らずな喋り方で、不思議ちゃんっぽい印象がある。

俺は上着を脱ぎ、大島さんの対面に座った。

すると大島さんは、とりあえず患部の写真をガシガシ撮り始めた。

正面から。

少し斜めから。

また正面から。

(篠山紀信か。ツッコミは入れておいた)

俺の胸のできものに、そこまでのアングルが必要なのだろうか。

写真集でも出すつもりなのか。

『できもの 2020  SUMMER』

誰が買うねん。

そして大島さんは手袋を嵌めると、患部を触ってきた。

「痛いですか?」

「痛いですね」

そう言うと、もう一度患部に触ってきた。

「これは痛いですか」

(これはの意味は何? さっきと同じ触り方やん)

「痛いです」

「これはどうですか?」

と、もう一度同じ触り方をしてきた。

(痛いって言ってるやろ。こいつわざとやろ。超どSキャラやん
舌ッ足らず、どSワンダーランド大島やん)

俺は少し不機嫌そうに、

「痛いっす」

と答えた。

それでも大島は、不思議そうな顔で俺の患部を見つめている。

いや。

そんな顔をしたいのは、こっちである。

俺には、この診察がいつまで続くのか分からない。

ただ一つ分かったことがある。

次に「これは痛いですか?」と聞かれても、答えは同じである。

「痛いっす」

大島のドS攻撃が終わると、診察室に院長が入ってきた。

俺の患部をしばらく眺め、

「けっこう腫れてますね」

そしてまた患部を触られた。

「これは痛いですか?」

(またや。またこのやりとりや。読者もうんざりしとるで)

「痛いみたいですよ」

大島は俺から唯一得た情報を院長に伝えた。

お前、さっき何回確認したと思ってんねん。

院長のネームプレートを見ると、田島と書いてあった。

顔を見ると、整形のし過ぎで、人工的な顔で気持ち悪かった。

ゴージャス松野系の気持ち悪さだった。

「今日このまま手術することも可能ですが」

ゴージャス田島は俺にそう伝えてきた。

今日?

俺は吹き出物を見せに来ただけのつもりだったのに、話が一気に手術まで進んでいる。

俺はゴージャス田島と、舌っ足らずドSワンダーランド大島のコンビの手術を受けることに不満を覚えたが、渋々了承した。

この二人に俺の胸を任せて大丈夫なのだろうか。

不安しかない。

俺はゴージャス田島から一通り説明を受け、しばらく院内で待機し、大島から吸引麻酔を施術された。

よくわからないガスを大島から吸わされたが、俺の意識はだいぶはっきりしていた。

「効いてきましたかね」

と大島から聞かれたが、

「あんまり効いてないです。歯医者とかの麻酔も効きにくい体質なんで」

そしてもう一度ガスを吸引することになった。

スーーー。

……。

普通に大島が見える。

2回目もあまり効いてる気がしなかったので、もう一度ガスを吸引した。

スーーー。

……。

まだ大島が見える。

できればもう見えなくなってほしい。

「効いてきました?」

俺は少し意識が朦朧としてる程度だった。

「効いてます」

俺はなんかめんどくさくなって嘘をついた。

これがすべての間違いだった。

そのまま手術室へ着いた。

そしてゴージャス田島と、舌っ足らずドSワンダーランド大島の手術が始まった。

2人は俺が麻酔で寝ていると思っていたが、俺の意識はそれなりにはっきりしていた。

胸にメスが入る。

(痛てーー!!)

(死ぬほど痛い!!)

(麻酔効いてないやん!!)

俺は死ぬほど痛かったが、麻酔は効いたと嘘をついたので、必死に痛みに耐えることにした。

ここで、

「すみません。さっき効いてるって言いましたけど、あれ嘘です」

と言えば済む話なのだが、なぜか言えなかった。

変なところで意地を張ってしまった。

俺は痛みに苦しんでいたが、眠っているふりをしていたので、ゴージャス田島と大島が日常会話を始めだした。

「新婚生活はどう? 毎日可愛いとか言われてるんじゃない?」

「そんないいもんじゃないですよ~。ふつうです~」

胸を切られている俺の頭上で、新婚トークが始まった。

「夜とか毎日楽しみなんじゃないの?」

「もう~院長ったら~」

俺は痛みに耐えながら、こいつらをどうやったら抹殺できるかを考えた。

すでに痛みより怒りが俺の中の比率を上げていた。

俺はこいつらをカラスの餌にする姿を思い描きながら必死に痛みに耐えた。

ゴージャス田島。

舌っ足らずドSワンダーランド大島。

楽しそうに新婚生活の話をする二人。

そして、その真下で無言のまま殺意を育てる俺。

そんな異様な空間の中、無事手術は終わった。

1週間後。

抜糸を終え、形成外科を出て、

「2度とくるか」

と捨て台詞を吐き、医院を後にした。

もちろん小声である。

受付のお姉さんには聞こえない程度の声量だ。

そして案の定、その形成外科は2年後くらいにはなくなっていた。

(ざまあ~みろ)

(わ~はははっは~)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ!!)

(気合いだ~~!!)

(わ~はははっは~)


おしまい

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