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第十七章:暖簾の向こうに、奇跡の笑顔

電動アシストの力を借りて大豆畑を駆け抜けること約45分。ついにスマホの画面が、目的地への到着を告げた。

愛知県西尾市、一軒のお団子屋さん「盛華堂」。

ついに、ここまで来た。大阪からの長い線路と、西尾からの長いロードが、今ここで一本に繋がったのだ。

少し緊張しながら、お店の佇まいを眺める。そこには、長い歳月を地域とともに歩んできたお店だけが持つ、独特の優しくも凛とした空気が流れていた。


意を決して、店の引き戸を開ける。

「ごめんください」

奥から姿を現したのは、テレビで見かけた、あの小柄で優しそうな看板娘さんだった。

なんと97歳。

それでも今も、変わらず店に立ち続けている。

「遠いところから来てくれたの?」

穏やかな声だった。

「大阪から、会いに来ました」

そう伝えると、看板娘さんは少しだけ目を丸くして、それから、ふわっと優しく笑った。

大正、昭和、平成、令和。激動の時代をすべてその目で見て、この場所でお客さんを迎え続けてきた、まさにリビングレジェンド(生ける伝説)。

すべてを包み込むような、深く、温かく、そして少女のようにチャーミングな極上の笑顔で迎えてくれて、疲れなんて一瞬で吹き飛んでしまった。


注文したのは、もちろん名物の「お団子」だ。

注文を受けてから、店内で1本ずつ丁寧に焼き上げてくれる。香ばしいお醤油の匂いが、パチパチという音とともに店内に広がり、僕の鼻腔を容赦なく刺激する。

「はい、お待ち遠さま。」

お団子と一緒に緑茶を手渡された。湯気を立てる温かい西尾名産のお茶。

店内の小さなスペースに腰掛け、まずは出来立てを――。


……美味い。美味すぎる。

外側はパリッと香ばしく、中は驚くほどモチモチ。お醤油のシンプルな旨味が広がる。そして、西尾名産の温かいお茶をいただく。

これこそが、今回の「足枷旅」がたどり着いた、究極の理想郷(エデン)だった。

豪華なホテルじゃなくていい。有料の展望台じゃなくていい。

デジタル切符のバグに頭を悩ませ、チャリで冷たい風をハックした先にしか存在しない、世界で一番贅沢なティータイムが、今ここにある。


「美味しかったです。お元気で、また必ず来ますね」

お茶碗を返し、そう告げると、看板娘さんはまた、あの極上の笑顔を見せてくれた。

手に入れたお土産をバッグにしまい、僕は再び二輪の相棒に跨る。心も身体もポカポカに温まった。

外に出ると、風が少しだけやわらかくなっていた。


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