そのホクロ、去年と同じ形ですか?|内科医が教える、皮膚のセルフチェック
「皮膚の健康診断」があったら、と思うことがあります
健診では、血液や画像で、体の中をたくさん調べます。
でも、実はいちばん目に見える臓器である皮膚は、健診の項目に入っていないことがほとんどです。
私は内科の医師として、いつも思うことがあります。
「気になるホクロやできものを、専門家がしっかり視診して、必要ならダーモスコピー(拡大鏡)で観察したり、場合によっては生検(皮膚の組織を少しだけ取って顕微鏡で詳しく観察)をする。そんな"皮膚の健康診断"が、もっと当たり前になったらいいのに」と。
今はまだ、そうした仕組みは十分ではありません。
だからこそ今日は、ご自身で気づける、皮膚のセルフチェックの視点を、お伝えしたいと思います。
多くのホクロは、心配いりません
まず、いちばんお伝えしたいこと。
私たちの体には、平均して数十個のホクロがあると言われています。そのほとんどは、生まれつき、あるいは成長の過程でできる、ごく普通のものです。
けれど、ごくまれに、ホクロのように見えて、実は悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんであることがあります。
「見た目だけでは、専門家でも判断が難しいことがある」——だからこそ、変化に気づく視点を持っておくことが、いちばんの備えになります。
世界共通の目印「ABCDEルール」
皮膚科の世界で、長く使われてきた自己チェックの指標があります。
5つの英単語の頭文字をとって、ABCDEルールと呼ばれています。
A:Asymmetry(非対称性) — 半分に折ったとき、左右の形がずれている
B:Border(境界) — 輪郭がギザギザ、にじんだように不明瞭
C:Color(色) — 一つのホクロの中に、黒・茶・赤など複数の色が混ざっている
D:Diameter(大きさ) — 直径が6mm以上(消しゴムの角くらい)
E:Evolving(変化) — 大きさ・形・色が、以前と比べて変わってきている
普通のホクロは、丸くて、色が均一で、左右対称で、大きさも変わりません。
一方、この5つのうち複数に当てはまる、あるいは急に変化してきた場合は、皮膚科で診てもらう理由になります。
とはいえ、これはあくまで"目印"です。
このルールで「大丈夫」と自己判断するためのものではなく、「気になったら受診する」きっかけにしていただくためのものだと思ってください。
ホクロ以外の「できもの」たち
皮膚にできるものは、ホクロだけではありません。
比較的よく見られ、多くの場合は経過をみてよいとされているものも、ご紹介します。
脂漏性角化症:加齢とともに増える、茶色〜黒っぽい、少し盛り上がったできもの。「年齢のイボ」とも呼ばれ、多くは良性です
粉瘤(ふんりゅう):皮膚の下にできる袋状のしこり。中央に小さな黒い点(毛穴の痕)があるのが特徴で、押すと独特のにおいのある白い内容物が出ることがあります。悪性化はまれですが、大きくなる・くり返し炎症を起こす場合は、根治的な手術が検討されます
これらも、「見た目が変わってきた」「痛みや腫れが出てきた」ときは、自己判断せず受診のサインです。
特に粉瘤は、自分でつぶすと感染が悪化することがあるため、絶対に避けてください。
「早めに皮膚科へ」の目安
迷ったときのために、行動の目安をまとめます。
(※これは一般的な目安であり、個々の状態を判断するものではありません。少しでも気になれば、迷わず受診してください。)
早めの受診を考えたいサイン
ABCDEのうち複数に当てはまる
短期間で急に大きくなった、色が変わった
出血する、かさぶたができてはがれを繰り返す
かゆみや痛みを伴うようになった
粉瘤が赤く腫れて痛む(感染のサイン)
比較的、様子をみることが多いもの(それでも気になれば受診を)
昔からある、形も色も変わらない小さなホクロ
加齢性の脂漏性角化症で、変化がないもの
小さく無症状の粉瘤
おわりに
皮膚は、私たちが唯一、自分の目で毎日見られる臓器です。
だからこそ、健診の数字と同じように、変化に気づく習慣を持つことができます。
「これって大丈夫かな」と思ったホクロやできものがあれば、
どうか、ひとりで判断せず、皮膚科の専門家に見てもらってください。
ダーモスコピーという拡大鏡を使えば、肉眼よりずっと多くのことがわかります。
これからの健康肌のための、小さなひと習慣。
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