モーさんの知るウルトラマンの世界 vol.3~「超兵器R1号」
今回は私の大好きな「ウルトラセブン」の話をしようと思うんですが、私はオタクではないので、そんなにディープな内容は書けません。私がどのようにセブンを見ているか、ちょっとだけご紹介する体ですので。
先ずは有名なそのテーマ曲をお聴きください。
「ウルトラセブンの歌」
作詞:東京一(円谷一) 作曲・編曲:冬木透
歌:みすず児童合唱団&ジ・エコーズ
ホルンの響きが何とも印象的な主題歌ですね。冬木透の傑作ですね。冬木透の作るウルトラミュージックはどれもこれも素晴らしいと思います。冒頭に出てくる眼鏡は有名なウルトラアイですね。無くしたら大変です。私はとにかくこれが欲しかった。森次さんの「デゥワ?」という掛け声も印象的です。変身のプロセスが見えるというのも、当時の子供たちにとってはワクワクしたことでしょう。これぞ特撮の醍醐味だと思います。
恐ろしい最新兵器
地球防衛軍の秘密工場の中で、今まさに惑星攻撃兵器「R1号」が完成しようとしています。まあ、速い話がでかいミサイルです。水爆8000個分の破壊力を持つのだとか。そんな兵器は維持するだけで大変なんですが…。今回主人公であるモロボシダン=ウルトラセブン(現森次晃嗣)はのっけからダークモードです。セブンはいろんな脚本家がシナリオを手掛けていますので、ダンの性格はシナリオ毎に結構変わるんです。幸せモード全開の時もあれば、ちょっと間抜けな感じの時もあり、まあそれもセブンの魅力の一つなんですけどね。
「地球を守るためには何をしても良いのですか」
と同僚のフルハシ隊員(現毒蝮三太夫)に詰め寄るダン。最初は笑い顔だったフルハシも、ダンの一言に浮かぬ顔。二人の問答は続きます。
ダン「侵略者は超兵器に対抗して もっと強烈な破壊兵器を作りますよ」
フルハシ「我々はもっとそれよりも強力な兵器を また作ればいいじゃないか」
そしてダンは言います。
「それは、血を吐きながら続ける 悲しいマラソンですよ」
と。セブンの中でも突出した名セリフです。くー泣けますね。さすがは正義のヒーロー。このセリフは、ファンの間ではよく知られた名ゼリフです。
モロボシダンを演じた森次晃嗣さんは、「水戸黄門」や「鬼平犯科帳」なんかにも出演されています。森次さんをドラマの中で見かけると、
「そんなモタモタしなくていいから、さっさとウルトラアイ出してセブンになってくれ」と画面に向けて突っ込むことが私の中では恒例となっています。もしかしたらウルトラセブンあるあるの一つかもしれませんが。因みに彼は俳優業の傍ら、カフェレストラン「JOLI CHAPEAU」を経営されております。自ら厨房にも立っておられるとのこと。店の中にはセブングッズに溢れていてファンの聖地となっているのだとか。HPによると「モロボシダンのハヤシライス」は一番人気の限定メニューだそうです。シャンソンも名物なお店のようで、写真を拝見するにご本人も歌っておられる感じです。
結局、R1号はダンの文句の甲斐なく発射されてしまいます。標的になったのはギエロン星。星は木っ端みじんに砕け散りました。喜ぶ地球防衛軍の面々。しかしダンは相変わらず浮かぬ顔。まるで何かを予言するような…。
ギエロン星獣登場!
なんと、ギエロン星からギエロン星獣(怪獣)が地球めがけて飛んできたんですね。もう激おこプンプン丸状態です。怒髪冠を衝くとはまさにこのことです。ダンの杞憂は当たってしまったのです。ほら見たことかと。ギエロン星は生物がいないと予め調査をしたうえで標的に選ばれたはず。にも拘らずその星の方向から飛来する怪獣。調査が不十分だったと言わざるをえません。そういうことは、この日本でも頻繁にありますね。後でごめんなさいと言われても困るパターンですね。R2号で迎撃しようにも、まだ完成していません。困る面々。調査を指揮した科学者も大わらわ。科学万能主義のツケを払わされた哀れなギエロン星獣よ。
この展開。子供時分の私なら、ああそうか、と納得して終わるんですが、最近天文学の教養書をチラホラ見ている私としては少々突っ込みたくなります。先ずどうしてギエロン星獣は、地球からR1号が発射されたと認識出来たのでしょうか?その辺は「量子もつれ」を使って説明出来るんでしょうか?次に、ギエロン星が仮に地球に一番近い惑星だったとしてです、光の速さで飛んできたとしても、果たして人類が存続している間に地球に到達出来るのだろうかと。なにせ私はセブンを大学時代から見始めたものですから、どうしてもこの辺の理屈が気になってしまうんです。しかし、この時代の特撮番組を見るというのは、茶道でいう「見立て」が大切だと思います。私は一時表千家を習っていたことがあるんですが、あの「空間」は基本的に見立てによって成り立っています。いちいちアレコレと突っ込むのではなく、そういうものなんだ、と見立てる必要があります。それでこそ楽しめる、そういう世界だと思います。
その後、すったもんだあったんですが、結局新型ミサイルを積載したウルトラホーク3号(飛行機)が発進してギエロン星獣を迎撃。あっけなく砕け散ります。あれ、そんなに簡単に…。ところが完全復活!粉砕されたはずの破片がくっついちゃう。(よくあるパターンです)まあ、恐らくR1号の爆撃を受けて進化したんでしょう。しかも周囲に放射能をまき散らすというオマケつきです。さあ大変。とここでようやくウルトラセブンの登場です。
ギエロン星獣はこんなヤツです。(↑)コミカルな動きに愛嬌があって、私は憎めないです。ヨチヨチ歩く感じですね。手がもがれ、クビをかき切られ絶命するギエロン星獣。無念にもセブンに倒され、静かに目を閉じる彼の想いやいかに…。(因みに、この映像の最初で出てくるのがR1号で、衝突して爆発するのがギエロン星です)
果たしてセブンはどういう想いでギエロン星獣と戦ったんでしょう。戦いに勝利したとは言え、決して満足感は得られなかったでしょう。地球を守るという彼の使命は、同時にギエロン星を葬った地球人のエゴに加担することです。何の罪もないギエロン星獣を殺さなければならないのは、ヒーローとしては正義の所在をどこに置くべきか、大いに迷ったことでしょう。
闘い終わって仲間に囲まれるモロボシダン。そんなダンに朗報です。R2号の開発中止が検討されるというのです。人間も学ぶ生き物なんです。喜び溢れるダン。
とまあ、これだけならこの話は傑作としてファンの心には残りません。次に描かれるシーンがこの話の真骨頂なんです。
なぜか隊員たちが居る部屋の中には、シマリスが1匹いるんですね。それがせわしく車を回し続けている。ハムスターがよく回してるアレですね。物憂げな表情でモロボシダンがそれを見つめるシーンで幕を閉じます。何たる衝撃的な結末!子供番組でこの演出とは恐るべし。
彼の頭にあったのは、「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」だったのかも知れません。このシーン一つが入ることで「超兵器R1号」はセブンの中でも、指折りの傑作シナリオとして長くファンに語り継がれることとなりました。
「ウルトラセブン」は、こうした社会派のシナリオが満載の重厚なドラマです。このような番組が昭和42年に子供向け番組として放送されていたことは驚きでしかありません。ゴジラを作った円谷英二を始めとする、当時の天才的クリエイターたちの子供に寄せる「熱い想い」を感じます。50年以上経った今でも、子供たちが新しく作られるウルトラセブンを目にすることが出来ます。それだけ時代を経てもなお、ウルトラセブンは形を変えて、多くのクリエイターたちに影響を与え続けていると言えそうです。当時の制作者たちの心意気を皆さんにも感じて頂きたく、今回執筆してみました。
つづく
【作品データ】
第26話 「超兵器R1号」
脚本:若槻文三 監督:鈴木俊継
放送日:1968年3月31日
【参考資料】
「ウルトラセブン SFヒーローのすばらしき世界」(朝日ソノラマ)
「僕たちの好きなウルトラセブン」(宝島社)
