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テレビの下から出てきた、父の秘密

一人きりの夜は、小学校低学年の私にとって、とても寂しく、孤独で、生きている意味のようなものを考えさせられる時間でもあった。
母は北新地のスナックに出ていて、父は不在、兄は引きこもり。
父親に怯えながら、寂しさを空想で紛らわせ、窓から見える名神高速道路を行き交う車のライトをぼんやり眺める。
そんな情景が、今も断片的に記憶にこびりついている。
一人でゲームをしたり、テレビを見たりしているうちに、家の中で自分が許されている行動範囲を物色していたある日のこと。
テレビの下に並んでいるVHSビデオテープの「爪」を、折れているものと折れていないものを確認しながら漁っていた。
特に目的があったわけではない。
ただ、家の中でできることがそれくらいしかなかったのだと思う。
すると、一本だけ何も書いていなくて、爪も折れていないテープを見つけた。
早速そのテープを再生すると、画像は荒いながらも、松田聖子ばりの髪型をしたお姉さんが映っていた。
なんかのホームビデオか、と思いながら早送りしていくと——。
その時、私は生まれて初めて、人が生まれてきた「出口」を無修正で目撃することになった。
幼い私はあまりの衝撃に涙し、嗚咽をお供に北新地にいる母に電話をした。
「お母さん、今なー、ビデオテープ色々見てたらなー、奥にあったテープがめっちゃ気持ち悪いのがあってんー!」
無修正の裏ビデオは、テレビの下にたくさん並べてあるビデオテープの、奥の方に隠してあった。
そんな場所に隠して置いてある父は、一見可愛くも見える。
でも実際、その頃の私にとって父は、とても怖く恐ろしい存在でしかなかった。
酒を飲んでは暴れる。
母や私に暴力を振るう。
私を押し入れに手足を縛って閉じ込める。
すぐ怒鳴って、竹刀で叩いてくる。
お風呂場で湯船に沈められる。
そのせいで、40代になるまでほとんど泳げなかった。
一緒に車に乗ると、必ず一度は窓を開けて誰かに「お前どんくさいんじゃ、早よ行けや!」と怒鳴っている、ただの輩。
ちょうどこのくらいの時期に、マンションながらも「シロ」という中型の雑種犬が、物心ついた頃からベランダで飼われていた。
きっとそのマンションでは飼えなくなったのだろう。
幼い私が可愛がっていたシロを、ある日いきなり「どこかに捨ててきた」と告げられ、号泣した気がする。
そのシロは数日後、自力でマンションの五階の家の扉の前まで帰ってきて、とても嬉しかった。
でも次の日、今度はさらに遠い場所へと捨てられてしまった。
その後、小学校高学年になる頃、私が道で拾った猫を連れて帰ったときのこと。
父は私の目の前で、そのマンションの五階から猫を投げ捨てた。
すぐさま下を見ると、猫は木に当たり、地面に叩きつけられたかに見えた。
でもその後、ヨロヨロと歩き去っていく姿が、五階から確認できた。

次回、あんな父親にも、ほんの少しだけ「人間」だった瞬間があった。
小学校高学年の頃の記憶。

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