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体からの、控えめで愛おしい抗議

私は昔から、よく物を忘れる。
冷蔵庫のドアを開けたまま、
「……あれ、私、何を取りに来たんだっけ?」と立ち尽くす。

散歩のついでに出そうと思って引き出しへ入れた郵便物は、そのまま忘れられ、季節が変わった頃に「こんなところにいたの!」と発掘される。
そんなことは日常茶飯事だ。

それでも、「まあ、いっか」と笑って受け流し、毎日を気ままに過ごしている。

だから、八月に入って間もない頃、左手の甲に小さな水疱(水ぶくれ)が一つできても、まったく気にしていなかった。

痛くも痒くもない。いつものように忘れているうちに、気づけばきれいに消えていたからだ。

ところが数日後、同じ場所にまた小さな水疱が現れた。
「……あれ? これは、さすがにおかしい。」

普段は気にしない私も、同じことが続くとさすがに気になった。
「何か心当たりはないだろうか。」そう思って、ここ数日の過ごし方を振り返ってみた。

そこで思い当たったのは、この猛暑の過ごし方だった。暑さに負けて、冷たい水を勢いよく飲み続けてはいなかっただろうか。

東洋医学では、体に余分な水分がたまる状態を「湿(しつ)」と呼び、胃腸が冷えて働きが弱ると、その影響が皮膚に現れることもあるという。

もちろん、水疱の原因は一つではない。それでも、その考え方を知ったとき、「もしかしたら」と妙に腑に落ちた。

忘れっぽい私の代わりに、体はちゃんと覚えていてくれたのかもしれない。

「ちょっと胃腸を冷やしすぎだよ。」
「少し休ませて。」そんな控えめな声で、一生懸命サインを送ってくれていたような気がした。

思わず、
「私、自分の体から抗議されていたのかも(笑)」と苦笑いしてしまった。

日常の出来事はすぐ忘れてしまう私だけれど、自分の体が届けてくれる小さな声だけは、忘れずに受け止めたい。

今日からは、冷えた水を一気に飲むのではなく、常温のお茶をゆっくり飲むことにしよう。

気ままな私と、健気にサインを送り続けてくれる体。
これからも、その控えめで愛おしい抗議に耳を傾けながら、仲良く付き合っていきたいと思う。

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