漆器を使うメリット 機能性 全8回まとめ
漆器は、使わないともったいない。8つの機能の振り返り。
8回にわたって、漆器の機能的なメリットを一つずつ話してきた。最後に、全体を振り返りたい。一つ一つは小さな話に見えても、並べたときに浮かび上がる漆器というものの全体像がある。
誤解から始まった話
「繊細で手入れが大変」、「扱いが難しい」。
漆器を使ったことがない人に理由を聞くと、こういう言葉が返ってくることが多い。でもこの“漆器の機能的メリットシリーズ”を通じて、ちょっとでもその印象が変わったり、少しでも興味を持ってくれたら嬉しい。
知らないことはなんでも不安。漆器の誤解も、漆器との距離感が生んだもの。一度使ってみると、最初の一週間でほぼ消えるはずだ。
8つの機能、振り返り
1. 見た目の美しさ 何百年という時間をかけて洗練された形と、漆独特の柔らかな光沢。漆器の存在が食卓を静かに整える。豪華な料理がなくても、いつもの食卓をそれだけで豊かに演出する力が漆器にはある。
2. 独特の触感 手に吸い付く感覚、唇に触れる滑らかな口当たり、洗うときのキュッキュッという感触、拭きながら磨く充実感。触れる全ての瞬間が心地よい器は、他にほとんどない。
3. 軽くて丈夫 陶器より大幅に軽く、甲冑にも使われた素材の丈夫さ。毎日使う上で余計な気を使わなくていい。
4. 断熱性 木という素材が持つ熱伝導率の低さが、熱いものは熱く、冷たいものは冷たいまま、中身の温度を保つ。そして、外側に熱を伝えにくいから持てないほど熱くなることもなく、ゆっくり食べても温度が保たれる。エベレスト登頂にも持参された断熱性だ。
5. 抗菌効果 ウルシオールが硬化した塗膜は、大腸菌・サルモネラ・O-157・黄色ぶどう球菌に対して24時間後にほぼゼロにする抗菌力を持つ。化学薬品なしで、天然素材だけでこの効果を発揮する食器は他にない。
6. 防腐・防虫効果 約9000年前の漆工品が今も形を保ち、神社仏閣の木造建築が数百年単位で保存されてきた。漆の塗膜が持つ防腐の力は、日常の時間スケールを超えて証明されている。
7. 経年変化 使うほどに艶が増し、色が深まり、自分だけ漆器だけが持つ表情になっていく。5年後、10年後に買ったときより美しくなっている器。育てる楽しみを持つ食器は、漆器だけだ。
8. 修理可能 欠けても、割れても、塗膜が薄くなっても、職人に依頼すれば直してくれる。修理した跡すら個性になる。20年、30年と使い続けられる道具が手元にある、ということの安心と喜びを使い続けた人だけが知っている。
並べると見えてくること
8つを並べて気づくことがある。
これらのメリットは、どれか一つが突出しているのではなく、すべてが日常使いという文脈の中で機能するという点で一致している。
「毎日使う」という前提があってこそ、8つのメリットが全部生きる。しまっておくと、何一つ機能しない。
漆器は、使わないともったいない
漆器は、何世紀もかけて洗練されてきた道具。
極限まで無駄を削ぎ落とした形と色。天然素材だけで実現した機能性。使うほどに育つという特性。食器として必要なものがすべて揃っている。
「繊細で扱いが難しい」という印象とは正反対に、漆器は毎日使ってこそ本領を発揮する道具だ。使わないことが、むしろもったいない。
次回予告
機能面だけ見ても、漆器を使う価値は十分にある。
しかし、漆器のメリットはそれだけではない。次は、こうした機能面が精神面に何をもたらすか、精神的なメリットについて話していく。
漆器や食器に興味がある方は、ぜひ次の投稿も読んでほしい。
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mono|日常の工芸
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