ニュータイプになれるか
イチ:ワイルドに食べる。9歳男子。
ニコ:誰かに食べさせてほしい。4歳女子。
ミコ:自ら箸で食べてみたい。1歳女子。
女は察して欲しい生き物である。
それはよく言われることかもしれない。
かく言う私も、実は…。
夫婦が向かい合って座るのは、夕食時くらい。
しかし、子供達がワチャワチャ。
ゆったり夫婦が会話するなんて、無理難題。
ミコが箸に手を伸ばすのをガードしながら、「食べさせて〜」の甘えん坊ニコの相手をする。
当然の如く、私は、なかなか、食せぬ…。
一方の夫、黙々と食べる。
一息ついたところで、イチのテーブルマナーに口を出す。
私は、目力強めに夫を見つめた。
夫よ…察しろ…!!
無言で、見つめ合う二人。
何を思ったか、夫は渾身の変顔をした。
額に皺を寄せてギョロ目を上に向け、鼻の穴を広げてアッカンベー。
負けじと私は眉根に力を入れる。
「…今…テレパシー…送ってみた。届いた?」
と、聞いた。
「ニュータイプじゃないから、無理。」
「ニュータイプ?」
なんの話かと思えば、ガンダムの話。
ニュータイプは、テレパシーが使えるそうだ。
『赤は通常の3倍』
『足なんて飾りです!』
『あの壺は、良いものだ…』
ふいに使われるガンダム言葉。
その度、長い物語のほんの一部を拾い知る。
もしかして?やはり…?
ガンダムは、一般教養なのか、も?
ガンダム、やはり今からでも履修すべきか…?
確か、夫が小説を持っていたはず。
なお、夫によると、ニュータイプは生まれつきではなく、宇宙空間で覚醒するらしい。
宇宙に行く予定は今のところない。
しかし夕食時、不意に訪れるテレパシーと変顔の応酬は日課となりつつある。
いつの間にか、イチとニコも割り込んでくるので混線甚だしく、難易度は高くなってきた。
(土日どうする?)
(そのお酒分けて)
(買いたい物があるんだけど…)
様々なテレパシーを送っているが、成功率は、未だ低い。
ニュータイプが我が家に降臨するその日は、来るのか?
乞うご期待!
なお、夫が黙々と食べる事について私に不満はない。食べたらミコと遊んでくれるし、ニコは「お母さんが良いのー!」と言いがちだから。
あの日、私が送ろうとしたテレパシーは、
(鼻毛出とるで。抜いたろか?)
だった。
