ウン億年ぶりにショートパンツを履いたよ
※全体的に思い込みの激しい、極めて主観的な手記となりました。ご理解ください。
齢34。
「痩せたら履きたい」とクローゼットの奥にしまいこみ、かれこれ10年は経つであろうショートパンツを発掘してしまった。
速攻ZOZOの買い取り袋にぶち込もうとほとんど反射で手が動いたが、
「売ってしまう前に一度だけ履いてみるのはどうか?」
と謎の好奇心が頭をもたげた。
私は、自らの心や身体を使って人体実験し観察し考察するのが好きな部類の人間であるので、今回の件もその一環だと思う。
この歳で、この体型でショートパンツなんか履いて脚を布で覆わなかったら間違いなくソワソワするだろうし、羞恥心に苛まれるのは目に見えている。いつも以上に他者の目を気にしてしまうだろうし、しかし堂々としていなくてはならない。(注:現在ほぼ人生最高体重。体脂肪率は30%を超えてしまったので軽度肥満体型)
でもちょっとおもろそう、と思ってしまった。
しかしどこに着ていくべきだろう。
誰に会う日なら許されるだろう。
いろんな顔が浮かんでは消える。
仕事関係の人はまずない。身体の下3分の1が剥き出しの三十路を誰が信頼してくれるだろうか。仕事関係にノイズは不要である。
男友達もない。「何のために?」と思うだろう。ごもっともである。不要な「女出し」は、大事に育んできた彼らとの友情にメタノールを垂らすようなものだ。
女友達もまた難しい。ファッションというのは自己主張・自己表現の一部だと思うので、やはり「なぜこの会合でショートパンツをチョイスしたのか?」という問いに答えられなければいけない。となるとショートパンツを履くに値する会合なんか存在しないのである。
もっと言うと
「若作りしてイタい」
「その太い脚をなぜ出していいと思った?公害では?」
などと思われたくなかった。
この世の全ては捉え方次第で、勘違いや思い込みだらけだと頭ではわかっているのに、こと自分については「勘違い野郎」と思われることを極端に避けたいのはやはり不思議である。
自分は、脚を出す他者の年齢なんかいちいち判別しないし、太さだって至極どうでもいいのに。好きなもん着たらいい、と思う。他者に対しては。でも自分のことになるとこのザマ。
そもそもデートの場以外で「女」を出すことになんとなく昔から抵抗がある。誰が相手であっても。これは私の心の性がなかなか複雑なところもありそう。
そんな時に、20年以上の付き合いである友人から飲みの誘いが入った。類友ゆえ相手も酒カスであり、昔から中身のない話で延々酒を煽れて下品にも手を叩いてゲラゲラ爆笑できる相手である。
大学生の頃、京都で着物体験をして街を練り歩き、「ウチらが一番かわいい」「てか姫じゃね?」とやかましいことをほざき散らかし、脱いだ後もその気持ちよさを引きずって朝まで魚民で飲んだくれた仲。
彼女は二児の母で、やっと卒乳したのでパーっと飲みたいとのこと。
「ブチ上がるしかないよ」
「じゃあ野毛でハシゴしよう」
とセットアップも完璧。
ウン億年ぶりにショートパンツを履くなんて「くだらないひととき前提」でなければ無理だろうと思っていたので、人選も場所も、飲みベ(飲みへのモチベーションの略)も100点満点である。
「久しぶりに化粧すっぞ〜」と相手も気合い十分だったので、もうここしかないと思い、「私もギャルみたいな風貌で行くわ〜」と予め伝えた。
履くまでの逡巡が長くなってしまった。履いてからは一瞬なのであと少しだけお付き合いください。
意を決してデカい面積を露出していることの落ち着きのなさとは裏腹に、世間は呆気ないほど無風だった。視線を集めることもなく、痛々しい目を向けられることもない。頭では分かっていた。でもそれ以上だった。
そしていくつか気づいたこと。
脚を組めない。ぶちゅっと潰れた太ももは、それ一本だけで座布団のような面積感だ。視界に入ると辛くなる。股を開いて座れない。見たくもないものを見せてしまうことになりかねないから。てか脚が寒い。肉が冷えてる。当たり前か…脚に関しては全裸だからな。それにしてもショートパンツの人って結構いるんだな。若い人も、そうでもなさそうな人も、体型も問わず。あと、脚が出てるかどうかで言ったらハーフパンツも含め男性の方が脚出てるな。胸の露出は目線が集まるものだと思うけど、脚なんかみんな興味ないのか。じゃあ脚フェチって絶滅危惧種?
この程度である。
総じて、履くまでが大変、履いてしまえばなんのことはなかった。
ところで、どうして私がこれだけショートパンツに抵抗感があったかを思い出した。
大学生の頃、いつ見てもショーパンを履いているめちゃくちゃスタイルの良い先輩がいたのだ。とにかく脚がすうっと細くて長い。
ある飲みの場で「みんな大学1年の頃はショーパン履いてたのにどんどん履かなくなっていくよね」みたいな話の時に、「でも**(先輩の名前)はいつもショーパンだよね」と言われ、先輩は「私が履かなくて誰が履くんだよ」と吐き捨てており、それがなんか超かっこよかったのだ。
自分の強みを理解し誇りに思い全面に押し出す、そのアイデンディティへの自信というのか。ぐっときてしまった。
がしかしそれを受けて「私はショーパンを履く資格がない」と変換され、今に至る。細くて長い脚なら履いても許される、それ以外は否。だから痩せたら履こう、と思ったのだろう。そんなことを思っていたら10年以上経って今度は年齢というハードルも追加されていた。
久しぶりに会った卒乳後の友人は、やたら濃いメイクで脚モロ出しの私を見るなり「あらかわい〜」とコメントを添えてくれ、あとは酒とおしゃべりに全集中した。そのどうでもよさげな受け入れがありがたい。やはり100点満点だった。
「何を読まされてるんだ」と思いましたよね。私も「何を読ませてるんだ」と思います。すみません。ここまで読んでくださりありがとうございました!
以上、10年以上ぶりにショートパンツを履いたミドサーの心中一部始終でした。
