ラジオ体操
遠い昔の話です。
入社式から数週間後、私は工場に配属されました。その日から毎朝、自席の近くの空いたスペースで、ラジオ体操をやることになりました。
連綿と続いてきた、工場ならではの「しきたり」を、新入社員も引き継ぐということです。
10代の頃は、ラジオ体操は学校の校庭か体育館でやるものという強いイメージがありました。そのため、全館放送で工場全体にラジオ体操が流れ、おそろいの職服を着た人たちが、みんな揃って同じ動きをしている様子は、なんだかとても不思議に感じられました。
ラジオ体操と夏休みのイメージは紐付いています。
終業式に大量の宿題のプリントなどと一緒に、ラジオ体操の出席カードも配られていました。家に持ち帰ったカードの角に穴を開けて、リボンや毛糸を通して首から提げられるようにします。
毎年、近所の広い駐車場が会場でした。
駐車場を作ったものの、停める車が少なかったのでしょう。
体操が終わると、ハンコを持った大人たちの前に並んで、カードに印をもらいます。「◯日間出席」といった目標があったような気がしますが、それほど厳密ではなかった記憶があります。
最終日には、ノートや鉛筆がもらえました。
息子の時代になると、だいたい5回くらい出席すれば、合格だったかもしれません。
最終日に息子は、うまい棒を大量にもらってきました。もらわない子がいたのか、それとも想定したほどの人数が集まらなかったのか。
うまい棒に釣られたわけではないと思いますが、息子は6年間、比較的真面目に参加していました。
夏休み中でも、朝から友達に会いたかったのでしょう。
その昔、英語学習の雑誌の特集で、外国人数名にラジオ体操の音楽を聞かせて、それに合わせた動きをやってもらうという企画がありました。
当然みんな動きはバラバラでしたが、跳躍の場面だけは、全員が揃って飛び跳ねました。あの音楽は、飛びたくなる音楽なのだろうなと思いました。
ラジオ体操は、今でも夏になると、全国の会場を回っていて、その様子はラジオで生放送されています。今年の夏の開催予定も、ネットに公開されています。
インターネットが影も形もなかった子どもの頃、一度でいいから放送の現場に行って、マイクが拾ってくれるくらいの声量で、ラジオ体操の歌を歌ってみたかったことを思い出しました。
入社したばかりの頃は不思議に感じていた、大人だけの職服ラジオ体操も、いつの間にかすっかり慣れてしまいました。
全く同じ体操が、昭和・平成・令和の小学生の夏休みにもつながっているのは、とても面白いことだと思います。
