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受け継がれたのは、アウターだけじゃなかった


父と彼氏が、似ている気がする。
それは見た目とかではなく、咄嗟の出来事に対する行動が。


父は、自ら「昭和の男だ」と宣言するくらいの頑固親父とも言えるが、その中身は妻と子供を大切にしてきた現代的な価値観のある人だ。
若い頃、急に仕事を辞めた妻に対して、「俺が何とかするぞ」と覚悟を決めたこともあったのだろう。

そんな二人の間に生まれた娘は、スクスクと一人っ子を謳歌して、今はこんなエッセイばっかり書いているのだから、父のことを思うといたたまれない気持ちにもなる。
すまんな。


でも、父は一人娘の私に甘いところもありつつ、ちゃんと厳しいところもあった。

進研ゼミを全くやらずにいる娘に対して、正座をしながら懇々と「月額料金」の計算をさせたりもした。
そして、私が少しでも文句を言った瞬間、きちんとぶん殴られてきた。


頑固で、面倒な部分もある我が父だが、それでも尊敬していることは色々ある。

駐車場が混んでいてすぐに入れそうにない時は、母と私を降ろして自分一人で停めに行くこと。
母と私がSnow Manのライブを楽しんだ後、混み合っていることも気にせずに車で迎えに来てくれること。

ちょっと面倒だなと思うことも何も気にせず自ら動く姿を見てきたが、それって当たり前ではないんだよなと大人になって気づいた。


何より、私の脳裏に一番焼きついている姿がある。

小学生の頃、親友と一緒にスキーへ連れて行ってもらった時、後ろから突撃しそうになったスキーヤーから親友に覆い被さって咄嗟に庇った父の姿だ。

私は、あの瞬間を忘れられない。

大人は子供を守るべきであり、我が父は自分が怪我をすることも恐れず、そうやって行動できる人なんだ。

そんな父を、尊敬している。



5年半以上を一緒に過ごしている彼氏も、なんとなく似ている気配がある。

一緒にデートをしている時、両手に荷物を持ったお爺さんがよろよろと階段を登ろうとしていたのを見た瞬間、彼は「荷物持ちますよ!」とあっという間に動いていた。


別の日にデートの待ち合わせをしていた時は、「ちょっと遅れる!」と連絡が来た。

合流した後に話を聞くと「途中、道に迷ってる外国人がいて道案内して、その後に電車乗っていたらおばあさんが来たから席譲って、その勢いで違う駅で降りてしまった」とのことだった。

どうせ、いつも通り寝坊でもしたんだろうと思っていた私がアホみたいだなと思うくらいの聖人だった。

彼も、自分の損得なんて関係なく、ただ行動で示せる人なんだなと思った。


そんな二人が顔を合わせた日、父は彼の靴を見て「良い靴だし、手入れすると長持ちするぞ」とアドバイスをしたらしい。

その2日後、彼氏も含めた家族旅行のときに、彼氏の靴がキレイになっていることに気づいた父は「こいつはちゃんとしてるな」と思ったという。


ある日、両親が10年以上着ていたノースフェイスのアウター2着を私たちに譲ってもらえることになった。
父が着ていたものはブランドロゴが赤くて、古着でもほとんど見かけない珍しいタイプらしい。

最初は申し訳なさそうにしていた彼も、着てみると暖かいし、どんな服装にも合うので気に入った様子だった。
たまに、彼氏と二人でノースフェイスを着て、両親もしていただろうペアルックを楽しんでいる。


出社する彼氏の後ろ姿を見送るとき、その背中はなんだか昔の父親のようで、不思議な気持ちになる。

「行ってらっしゃい、気をつけてね!」
そう言いながら、彼の背中をポンと叩く。

こうやって、世代を超えて引き継がれるものも愛なのかもしれない。


ちなみに、父はいまだに「あれは俺のアウターだぞ」とネチネチ言い続けていると、母は呆れている。



#モノカキングダム2025

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