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【観音霊験記 西国巡礼】第拾二番近江岩間寺/芭蕉翁桃青

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
観音霊験記 西国巡礼拾二番近江岩間寺 芭蕉翁桃青

觀音靈驗記くわんおんれいげんき 西國さいこく順禮じゆんれい 拾二番近江あふみ岩間寺いはまでら
  みなかみは いづくなるらん 岩間寺いはまでら
     きしうつなみか まつかぜおと

芭蕉はせをおう桃青とうせい
芭蕉はせをおうつね觀音經くわんおんぎやうしんじ、ことに、この岩間寺いわまでら薩埵さつたねんじて、閑素かんそ幽棲ゆうせい風流ふうりうこゝろざせしかば、つひにその霊驗れいげんかうむりて、末代まつだいに名を天下あめがしたにかゞやかせり。

紫式部むらさきしきぶは、このほとりの石山寺いしやまでら観音くわんおんにこもりて持念ぢねんし『源氏物語げんじものがたり』の秀著しうさくあり。

※ 「桃青とうせい」は、松尾芭蕉の別号。
※ 「薩埵さつた」は、菩提ぼだい薩埵さったの略。菩薩ぼさつのこと。

芭蕉ばせうをうは、このやまつゞきの國分こくぶ山に三年みとせあひだすみて『幻住菴げんぢうあん』をかゝれ、一夏いちげ九旬くずん法華ほつけ二十八ぼん一石いつせき一字いちじづゝかゝんとおもひて、さとわらべたちに小石こいしひろはせ、たづさきたるものには、そのちんにとて、菓子くわしなぞをあたへけるゆへ、わらべたちはおきなしたひあつまりて、すでにそのこうたつし、その文のおくによむ。

〽 まづたのむ しいもあり 夏木立なつこだち
           はせを

※ 「幻住菴げんぢうあん」は、松尾芭蕉が元禄三年(1690年)の四月から七月にかけて幻住菴での暮らしたときことを記したもの。
参考:『芭蕉翁一代集 : 纂註(幻住菴記)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「一夏いちげ」は、陰暦四月十五日から七月十五日までの九十日間のこと。参考:『大日本国語辞典 巻1(いちげ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「九旬くずん」の読みは、誤読しているかもしれません。九旬くじゅん。九十日のこと。旬は十日、九旬で九十日。参考:『俳諧歳時記新栞草 夏』(国立国会図書館デジタルコレクション)


※ 参考:『八十八ケ所御詠歌・三十三ケ所御詠歌』『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)



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