【観音霊験記 西国巡礼】第拾番山城三室戸寺/山州綺田村農女

『観音霊験記 西国巡礼第拾番山城三室戸寺 山州綺田村農女』

觀音靈驗記 西國順禮 第拾番山城三室戸寺
夜もすがら 月をみむろと わけゆけば
宇治の川瀬に たつは しら波

山州 ■田村 農女
昔、■田村(■は糸+竒)の農夫、常に佛道を信じ、一人の娘を持り。此娘、幼きより普門品を誦して、三室戸寺の観音を信じけるゆゑ、更に殺生をせず。
※ 「山州」は、山城国。
※ 「■田村(■は糸+竒)」は、綺田村。
※ 「普門品」は、法華経第八巻第二五品の観世音菩薩普門品のこと。

一日、村人、蟹を取て殺さんとするを見、家の乾魚ととり換て、其蟹を放つ。
其父、耕作に出て、蛇の蟇を呑を見つけ、是を放ちやらんとすれども免さず。戯れに、「その蟇を放たば、我娘を与ん」といへば、呑かけし蟇を免して、藪のうちへ去しが、其夜、人に化して、「約束の為、来りし」といふ。

父は、驚きて取あへず、「二三日經て来れ」と答へければ、その夜は去りしが、又、三日を經て来る。
其時、娘は一間を閉て、一信に觀音經を誦、日頃信ずる三室戸寺を念じけるに、かの蛇の変化、尾をもつて室の戸を破り入、既に危き時しも、忽然と數多の蟹現れて、その蛇をはさみ斬て去る。
是に因て、其地を寺とせり。即ち、蟹満寺これなり。

※ 参考:『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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