【観音霊験記 西国巡礼】第拾四番近江三井寺/大津町杉女

『観音霊験記 西国巡礼拾四番近江三井寺 大津町杉女』

觀音靈驗記 西國順禮 拾四番近江三井寺
いでいるや なみまの月を 三井寺の
かねのひゞきに あくるみづうみ

大津町杉女
杉女は、當町富家の婢にてありけるが、いかなる宿縁にや、観音を幼より信ずることを深くして、三井寺にあるとあらゆる観音に、毎月御縁日には、風雨の夜といへども、かゝすことなく参詣するを、主人をはじめ傍輩どもゝさゝやき笑ひけるが、其頃、大津中に瘧流行て、一人もこの病ひに遁るゝものまれにて、既に家内三四十人みな煩ひけるに、この杉ばかり片時も伏さず。
※ 「當町」は、当町。
※ 「婢」の読み「みづしめ」は、水仕女。水仕事をする下女のこと。
※ 「瘧」の漢字「瘧」は、発熱を伴う病気の意。

こゝにおいて、皆、佛力の尊きことを感じて、皆々信心をおこしぬ。
又、あるとき、杉、天井の上にある薪をおろさんと、梯子を登りしところ、遥のうへより二三十束の大薪□落かゝりて、梯子はくじけ、上より眞倒に石臼の上へおち、其上へあまたの薪おちかさなりしかど、聊の怪我もなく、助かりたることの不測さに、身うちをあらため見しところ、入置たる覚もなき如意輪の尊像、ふところより出、いよ/\信心をぞなしける。
※ 「|□《くづれ」の漢字は[艹+朋]に見えるのですが、「崩」の誤りと思われます。
※ 「大薪」の読み「おほざい」は、大材でしょうか。

それ普門品の偈に
「隨落金剛山 念彼観音力 不能損一毛」
こんごうせんより おつるとも
かのくわんおんりきを ねんずれば
ひとすじのけも そんぜず
とあるは、誠にあり難き㕝なり。
※ 参考:『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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